TOPページへ論文ページへ
論文

 1週間前の9月30日に、ロシアが京都議定書を批准したということで、いよいよ京都議定書が発効、すなわち効力を発揮するということが話題になりました。
 そこで今日は、この京都議定書が発効するとどのようなことになるかを考えてみたいと思います。
 京都議定書とは1997年12月に京都で京都会議、正式には「気候変動枠組み条約第3回締約国会議」、もう少し簡単には「地球温暖化京都会議」、さらに簡単には「COP3」といわれる国際会議が開かれましたが、その会議で「京都議定書(京都プロトコル)」という国際条約が採択されました。
 これは地球温暖化が現実のものになってきたが、その原因は人間が石炭や石油や木材などを燃やして排出する二酸化炭素(CO2)が主要な原因だから、それを世界が協力して減らしていこうという趣旨の条約です。
 内容は、1990年の二酸化炭素の排出量を基準にして、先進工業国全体が共同で2008年から2012年までの5年間で5・2%減らそうということです。同時に、EUが8%、アメリカが7%、日本が6%、それぞれ減らすという数字も決められました。ところが、この条約が成立してから7年も経過してもなかなか発効しなかったのです。

 その理由は、条約の25条に、条約が有効になるためには、55カ国以上が批准することという条件と、この議定書を批准した先進国の二酸化炭素の排出量が先進国全体の排出量の55%を超えなければならないと決められているからです。
 前のほうの55カ国は早々とクリアしたのですが、後のほうがクリアできませんでした。
 その理由は二酸化炭素を最大に排出しているアメリカが条約を批准しなかったからです。この条約で削減を義務付けられている先進国の二酸化炭素の排出割合を調べてみると、アメリカが一位で36・1%、EUが二位で29・8%、ロシアが三位で17・4%、日本が8・5%で四位なのですが、アメリカとロシアが両方とも批准していなかったので、他のすべての国が批准しても55%を超えることが不可能だったのです。そしてやっと今回、ロシアが批准しそうな状態になったということです。

 ところがアメリカは条約には署名したのですが、批准しませんでした。
 なかなか複雑なのですが、国際条約は各国が署名しても、自国に持ち帰って議会で承認を受けないと有効にならないのですが、アメリカは早々と京都会議が開かれた1997年に、上院で「途上国の参加がないような議定書は批准しない」という決定をしてしまっているので、議会では承認できない仕組みになっていたのです。そして2001年3月に対外的に京都議定書を批准しないと明言したのです。
 そのときブッシュ大統領は京都議定書を批准することはアメリカの国益に反するというようなことを言いましたが、石油資本と密接な関係にあるブッシュ一族の個人益に反するのだろうという意見もありました。

 現在、世界各国の二酸化炭素の排出量の比率を調べると、アメリカが一位で23%、中国が二位で13%、EUが三位で13%、ロシアが四位で6%、日本が五位で5%、インドが六位で5%ですが、中国とインドは先進工業国ではないということで、減らす義務がありませんし、アメリカは拒否しているので、合計すると世界の排出量の40%以上が野放しというザル法といってもいいような状態ですが、とにかく来年春に条約が有効になると、日本も本格的に努力することが要求されます。
 ところが日本はなかなか困難な状況なのです。削減の基準となる1990年には、日本の排出量は12億3000万トンだったのですが、2002年には13億3100万トンと8%以上も増えています。これは産業分野も景気が回復しはじめて増えてきたのですが、家庭の冷房消費などが急増していることも影響しています。
 しかし、1990年より8%以上も増えているということは、2008年から2012年までには約束の6%と併せて、現在より14%以上も減らさなければいけないということです。体重65キログラムの人が9キログラム減らして56キログラムにしなさいと言われたのと同じですから、容易なことではないのです。

 その対策としては節約も必要ですが、それではとても減量できないので、京都議定書で認められた、排出権取引やクリーン開発メカニズムを利用することが検討されています。
 排出権取引というのは、決められた削減量以上に削減している国や企業から、その目標以上に減らした量をお金で買い取ることで、2003年には世界で7000万トン以上が取引されていますが、その41%を日本企業が買い取っているといわれています。逆に言えば努力した国や企業は経済的な利益を得られるということです。
 クリーン開発メカニズムというのは、例えば日本の企業が外国で植林をしたり、発電所から出てくる二酸化炭素を吸収するプラントを作ったりすれば、その減らした分を日本の削減量としていいという仕組みです。
 減量は苦しいことですが、結果は自分の健康にいいと信じて努力する必要があるということだと思います。





designed by BIT RANCH / DEGITAL HOLLYWOOD
produced by Y's STAFF
Copyright(c) Tsukio Yoshio All Rights Reserved.