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論文

 アメリカ大統領選挙の一般投票が、あと一ヶ月近くになりましたので、世界を動かすアメリカの大統領には過去どのような人物が就任してきたかをご紹介したいと思います。
 普通の紹介は多数ありますので、最近出版されたコルマック・オブライエン『大統領たちの通信簿』(集英社)という本を参考に、「トリビアの泉」風に、大統領の意外な側面を中心にご紹介させていただきます。

 ブッシュ共和党候補とケリー民主党候補は、大統領になりたいということで、必死に選挙活動をしていますが、驚くべきことに、これまでには成りたくないけれども成ってしまったという大統領が多数いるのです。
 初代大統領のジョージ・ワシントン(1789−97)からしてそうですが、「新しい政府の頂点に立つに当たっての気持ちはどうか?」と質問されて「罪人が刑場に護送されるときの気持ちと似たようなものだね」と答えたという記録が残っています。
 第2代大統領のジョン・アダムズ(1798−1801)も「大統領になったことがある者は、友人が大統領に当選したとしても、とても祝福する気にはならんだろう」と言っていますし、その息子で第6代大統領のジョン・クインシー・アダムズ(1825−29)は「大統領だった4年間ほど私の人生で惨めだったときはない」と言っています。
 これらの大統領は、アメリカの建国時代の困難な時期であったからと解釈できますが、第15代大統領のジェームズ・ブキャナン(1857−61)は第16代大統領のエイブラハム・リンカーンに交代するときに「貴君がホワイトハウスに入るのが嬉しいとすれば、貴君は実に嬉しい人間だと言える」という言葉を送っているほどです。

 このように楽しくない仕事をしなければならないとなると、酒と女性に逃避するという気持ちも分からないわけではありませんが、酒豪の大統領は多数いました。
 第14代大統領のフランクリン・ピアース(1853−57)は上院議員時代からアルコール中毒で有名だったのですが、一時、禁酒連盟に加入して禁酒をしていました。ところが不幸なことに、大統領就任直前に一人息子が列車事故で死亡したために、再びアルコールに依存するようになり、大統領を務めた4年間の殆ど毎日、酒を飲んでいたそうです。
 これは同情の余地がありますが、第29代大統領のウォーレン・ハーディング(1921−23)は、自分が禁酒法に賛成したにもかかわらず、ホワイトハウスの中では友人とポーカーをしながらウィスキーを飲んでいたということですから、とんでもない大統領だったというわけです。
 それでも第37代大統領のリチャード・ニクソン(1969−74)に比べれば罪は軽いほうでした。1969年にニクソンが大統領になった直後、情報収集をしていたアメリカの偵察機が北朝鮮の戦闘機に撃墜されたとき、泥酔していたニクソンは報復に核兵器の使用を言い出し、また、TWAの飛行機がハイジャックされダマスカス空港に強制着陸させられたとき、やはり泥酔していたニクソンは「ダマスカス空港を爆撃しろ!」と命じたそうです。しかし、周囲がアルコールで意識が明晰ではない大統領の命令に従うべきではないと判断したため、戦争勃発は何とか防がれたのです。

 そしてもうひとつの女性ですが、第35代大統領のジョン・F・ケネディ(1961−63)とマリリン・モンローの関係や、第42代大統領のウィリアム・クリントン(1993−2001)とモニカ・ルインスキーの関係は有名ですが、それ以外にも女性スキャンダルはありすぎるので、省略したいと思います。

 変わった癖のある大統領も数多く、第3代大統領のトーマス・ジェファーソン(1801−09)は儀礼的な慣習が多すぎると考え、儀礼を簡素にするため、ホワイトハウスでは外国の高官に会うときにもパジャマ姿であったそうですし、第7代大統領のアンドルー・ジャクソン(1829−37)は趣味が決闘という物騒な大統領で、生涯に何度かピストルを使った決闘をしています。
 最後に、ゴルフが趣味という大統領を紹介して終わりたいと思います。第27代大統領のウィリアム・タフト(1909−13)は、イギリスとの一般調停条約に署名する記念式典に姿を見せず、ゴルフをしていましたし、第34代大統領のドワイト・アイゼンハワー(1953−61)もゴルフに熱中し、ホワイトハウスの中庭にパッティンググリーンを作らせて練習していたそうですが、1955年にはゴルフの最中に4度も電話に呼び出され、激怒した途端に心臓発作になったという逸話があるほどです。決して擁護するわけではありませんが、それに比べると森総理のゴルフ事件は罪が軽いと錯覚するほどです。

 このようなトリビアを並べてみると、このような人物がトップを勤めてきたアメリカが世界の大国になっているのは不思議に思われますし、日本の総理大臣もそれほど酷いというわけではないという気持ちにもなってきてしまいます。





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