TOPページへ論文ページへ
論文

 新聞などに紹介されましたが、北海道の旭川市にある旭山動物園の8月1ヶ月間の入場者数が32万人を突破し、東京の上野動物園の23万4725人を8万6775人も上回り、日本一になりました。実は7月にも18万5461人で上野動物園を3万6264人上回って日本一になり、2ヶ月連続で日本一です。
 どちらも面積は約14ヘクタールで同じですが、動物は上野動物園の400種類以上に比べて150種類と半分以下、背後に控える人口は東京都の1221万人に対して、旭川市は36万人と30分の1以下、しかも、この日本最北にある動物園は冬の間は面積を縮小して開園しなければならないというハンディキャップもありますから、上野動物園を抜いたということが、いかに快挙かが分かると思います。
 しかも、旭山動物園は8年前の1996年には、年間の入場者数が26万人と、この8月1ヶ月の入場者数にも及ばない史上最低となり、閉鎖も検討されたほどでしたが、今年は楽々100万人突破になりそうですから、まさに甦ったのです。

 復活の理由を一言で言えば、小菅正夫園長の陣頭指揮で職員が様々な工夫をしたということですが、いくつかの工夫を紹介してみたいと思います。
 第一に従来なかったような施設を用意したことです。「ペンギン館」が人気ですが、これは人間が水中トンネルを通って水槽の底から眺められるようになっていますので、自分の頭の上や両横をペンギンがスイスイと泳いでいきます。
 「ホッキョクグマ館」も水族館の大型水槽のように水の中を泳ぐシロクマを眺めるように工夫されていますし、今年6月に開館した「アザラシ館」も同様の仕組みになっています。
 「オランウータン」は地上数十メートルに張られたロープを空中散歩する様子を見物できるようになっています。
 このような施設は不振にあえぐ他の動物園からも関心をもたれ、石川県辰口町にある石川動物園やライバルの上野動物園、そして台湾の動物園などが設計図を借りていったそうです。

 第二は運営の努力です。夏休み中は夜10時まで開園していますし、飼育している檻の裏側を見学できるツアーも人気で、9月4日のツアーは40名の定員が受け付け開始10分間で満員になるほどでした。

 第三に情報発信を熱心にしていることです。もちろんホームページは用意されていますが、毎日、情報更新をしていますので、アクセスする人数も多く、2000年4月に開設して以来、10万アクセスになるのは2年半かかりましたが、20万になるのは8ヶ月、30万になるのは3ヶ月、最近では毎月10万アクセスずつと爆発的に増加し、8月末には80万アクセスを突破しました。
 また「ペンギン館」「ホッキョクグマ館」など人気の動物の水槽にはライブカメラが設置されており、インターネットで見ることもできます。
 日本に100以上ある動物園は全体に不振ですが、その原因は少子化だといわれています。しかし、旭山動物園は入場者の60%以上が大人になっており、ここに復活の秘密があると思います。

 旭山動物園ほど有名ではありませんが、同様に閉館寸前から復活した水族館も紹介させていただこうと思います。
 先週末は出羽三山に山伏修行に出かけていたのですが、その帰りに山形県の日本海に面した湯野浜温泉の近くにある「加茂水族館」を調査してきました。
 ここは昭和39年に建設された水族館ですが、日本最小の規模で、失礼ながら外観はペンキもはげたみすぼらしい建物です。ところが駐車場は一杯で、館内も子供連れの家族で賑わっていました。
 開館当時は年間22万人ほどの入場者があったのですが、次第に減っていき、1997年には9万人程度までに落ち込み、閉館の検討までされるようになりました。
 ところが、それを救った水生生物がいたのです。「クラゲ」です。
 館長の村上龍夫さんが、規模は全国最小だが、なんらかの分野で世界一を目指そうと考え、クラゲに目をつけたのです。水族館でクラゲを最初に展示したのは鎌倉にある「江ノ島水族館」のようですが、最近ではカリフォルニア州にある世界最大規模の「モントレー水族館」が17種類のクラゲを飼育展示しており、最高だったのです。
 そこで7年前から海外や国内各地からクラゲを送ってもらい、最近になって18種類になり、世界最多の種類のクラゲを展示する水族館にしたところ、次第に入場者数が増え、昨年は13万人を突破し、今年は14万人台に到達しそうです。
 予算の少ない貧乏水族館で、付近の海でクラゲを採って他の水族館と交換したり、クラゲの切り身を入れたクラゲ・アイスクリームや、クラゲ・ナタデココを作って販売したりというように、村上館長を先頭に職員が努力した成果だと思います。舞台裏も見学させていただきましたが、手作りの水槽でクラゲを飼育したり苦労しておられますが、「鶏頭となるとも牛後となるなかれ」の言葉のように、小さくとも極めれば報いられる典型だと思いました。





designed by BIT RANCH / DEGITAL HOLLYWOOD
produced by Y's STAFF
Copyright(c) Tsukio Yoshio All Rights Reserved.