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論文

 アテネ・オリンピック大会も終盤になってきましたが、日本選手は大活躍で、金メダルの数もメダルの合計の数も東京大会を抜いて史上最多になっています。
 そこで今日は、選手だけではなく国民も一喜一憂しているメダルの色を決めている金・銀・銅に関係する話をさせていただきたいと思います。
 言うまでもありませんが、一位が金メダル、二位が銀メダル、三位が銅メダルとなっていますが、なぜ一位が金かというと値段が高いからです。
 最近の相場では金は1グラム1400円から1500円ですが、銀は1グラム20円程度で、70分の1に過ぎませんし、銅になると1グラム20銭程度で、金の7000分の1です。
 実は、明治4年に新貨条例、すなわち新しい通貨の価値を決定する法律が制定されていますが、それによると、1円金貨は金1・5グラム、1円銀貨は銀24・26726グラム、1銭銅貨は銅7・13グラムと決めています。換算してみると、金1に対して銀の価値は16分の1、銅の価値は4750分の1ですから、現在とあまり変わっていないといえます。

 何故、金が高価かというと、第一は金が様々な優れた性質を持っているからです。金は重い金属で、比重が19・3ですが、銀は10・5、銅は8・9ですから重みがあるということになります。酸などの影響によって腐食しないということでも優れています。
 また、展延性といいますが、柔らかくて伸ばしたり拡げたりすることが容易で、金をどんどん引っ張っていくと、0・005ミリメートル、髪の毛の20分の1くらいの細い線にすることができますが、1グラムの金で3000メートルくらいになります。平面に延ばすと厚さが1ミリメートルの10万分の1の薄い紙のような金箔にすることもできますが、1グラムの金では70センチメートル角の金箔になります。
 金の結婚指輪が3・5グラム程度ですから、線にすれば1万メートル、金箔にすれば1・3メートル角の風呂敷くらいにもなるわけです。

 金の値段が高いもう一つの理由は、貴金属という言葉があるように地球に存在している量が少ないからです。人間は6000−7000年前に金の採掘をはじめたのですが、これまで採掘した総量は14万2600トンと推定されています。
 これはどの程度かというと、今回、北島選手が泳いで金メダルを獲得した水泳プールで2〜3杯分にしかなりません。
 それでは今後、どの程度採掘可能かというと、世界全体では金鉱は5万トンほどしか存在していないし、銀は42万トン程度と推測されています。
 現在、金は毎年2500トンほど採掘され、銀は1万7000トンほど採掘されていますから、割算をしてみると恐ろしい結果になりますが、金はあと20年、銀はあと25年で無くなってしまうということです。
 夫婦喧嘩をして腹を立てて、金の結婚指輪を投げ捨てようと思われたときは、この数字を思い出して我慢してほしいと思います。

 ところで金メダルには何グラム程度の金が使われているかというとわずか6グラムです。
 夏のオリンピックのメダルについては「オリンピック憲章」で決められており、直径6センチメートル、厚さ3ミリメートル以上、純度92・5%以上の銀メダルを基準にし、その銀メダルに6グラム以上の金メッキをしたのが金メダルで、シドニー大会の金メダルは210グラムでした。計算を簡単にするために、銀の地金が200グラム、金のメッキが10グラムとすると、銀の値段が4000円、金の値段が1万5000円ですから、金属の価値としてはせいぜい2万円程度というわけです。
 そして、銀メダルは210グラムの銀の地金で4200円、銅メダルはシドニー大会の場合170グラムだったそうですから、なんと35円ということになってしまいます。

 しかし、近代オリンピックを創設したクーベルタン男爵の「オリンピックは参加することに意義がある」という言葉を借りれば、メダルの価値は同じです。その証拠に「銀」という字は「金」より「良」と書くし、「銅」という字は「金」と「同じ」と書くというオヤジギャグで終わらせていただきます。





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