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論文

 先々週の8月5日には働くということに関連する様々な価値観が20世紀から21世紀に移行するときに逆転しているという話をさせていただきましたが、今日は技術の分野でも世紀の大逆転が進行しているという話をさせていただきます。
 シンクロニシティという言葉があります。これはカール・グスタフ・ユングというスイスの精神病理学者が提唱した概念で、日本では「共時性原理」と翻訳されていますが、様々な物事が偶然の一致のように発生するのですが、背後には深い意味があるということです。
 例えば、ある人から贈り物としていただき大事にしていた花瓶をネコが倒して割ってしまった。そうしたら、しばらくして、その人が亡くなったという報せが届いたという、ちあきなおみさんの「喝采」のようなことを経験された方は、この番組をお聞きの皆様の中にもおられるのではないかと思います。
 そのようなことはたまたま発生した偶然だと説明することもできますが、現在の科学では解明できない深い因果関係があるというのがシンクロニシティという考え方です。

 「喝采」のような情緒のある話ではないのですが、2000年という年に、日本で以下のような逆転が次々と発生したのです。
 まず、カセットテープレコーダーの生産台数よりもミニディスクの生産台数のほうが多くなりました。
 続いて、フィルムで撮影するカメラよりもデジタルカメラの生産台数のほうが多くなりました。
 さらに、ビデオテープレコーダの生産台数をDVDのプレイヤーの生産台数が追い抜いたのも2000年です。
 そして、カラーテレビジョンよりもパーソナル・コンピュータの生産台数のほうが多くなったのもこの年です。

 このシンクロニシティに共通する深い意味とは何かというと、アナログ技術の製品がデジタル技術の製品に逆転されたということです。もとろん、2000年より前に、LPレコードの発売枚数がCDに抜かれたとか、アナログ方式の携帯電話がデジタル方式のものに抜かれたとか、複写機器の分野でデジタル方式の製品が半分以上になったという逆転は、何年も前から発生していましたが、丁度、世紀の転換点で一斉に逆転が起こったということには、なにか因縁を感じます。
 ちなみに、森総理がIT社会を実現する国家戦略を提唱したのは2001年1月ですから、意外にシンクロニシティを感じる繊細さがあったのかも知れません。

 電話も携帯電話も完全にデジタル方式になっていますし、放送も衛星放送はすべてデジタル放送です。またCATVもデジタル方式への転換が急速に進み、唯一残っていた地上放送も昨年12月からデジタル放送への転換が始まり、現在、通信と放送の世界はほとんどデジタル技術が席巻しているのですが、なぜデジタル技術が利用されるかについて説明する前に、アナログとデジタルの意味を説明したいと思います。

 アナログというのは相似という意味で、情報を物理量に変換すること、デジタルは数字という意味で、情報を数字に変換することです。時計が分かりやすいのですが、単針と長針の位置で時間を表示するのがアナログ時計、数字で直接表示するのがデジタル時計です。

 デジタル方式の第一の特徴は、情報が劣化しないことです。LPレコードは盤面に傷を付けてしまうとプツ、プツという雑音が入りますが、CDでは多少の傷が付いても雑音は出ません。また通信回線で伝送しても途中での雑音に影響されにくいのです。

 第二の特徴は、現在のデジタル技術は、すべての情報を「0」か「1」という2種類の数字に転換してしまいますので、音声でも写真でも文字でも動画でも、すべて一緒に扱うことができます。その典型が最新の携帯電話で、もちろん音声の伝達には使うことができますが、文字も写真も動画も送ることができるし、最近では鉄道駅の改札を通ったり、コンビニエンスストアで決済に使うことができます。
 第三の特徴は転換が容易だということです。普通の写真のプリントをコンピュータで扱おうとすると、スキャナーでデジタル情報に転換する必要がありますが、デジタルカメラで撮影した写真はそのままコンピュータで扱うことが可能です。
 これ以外にも優れた特性は数多くあるのですが、世界は完全にデジタル世界に移行していますので、この分野の発展を注目していただければと思います。





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