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論文

 板橋区に蓮根第二という小学校があるのですが、その一角に変わった風景が出現しています。校庭の北側と西側は10階建の高層アパートという都会によくある学校ですが、その北西の角にちょっとした林があり、池があるのです。もともとは地面だけの校庭だったのですが、4年前に生徒と保護者が一緒に池を作り、木を植え、一部には水田を作って稲を育てたりして自然環境を作り出したのです。その結果、そこにはトンボやバッタも飛んでくるし、カルガモの来るようになりました。
 このように学校の校庭だけではなく、工場の敷地や建物の屋上など人工環境のなかに自然環境を作るということを「ビオトープ」といって世界各地で流行しています。
 ビオトープの「ビオ」は生物という意味で、「トープ」は場所という意味で、合わせると野生生物が生息する場所という意味になるのですが、都市などの人工環境のなかに小規模ながら自然環境を作り出して生物が生息できるようにしようという活動です。

 このビオトープという言葉はドイツで発明されたことからも分かるように、ドイツが本場ですが、ここ10年ほどで、日本にも急速に増えてきました。
 例えば、最初に紹介した校庭や屋上をビオトープにしている学校はお互いに情報交換をするために「全国学校ビオトープ・ネットワーク」を作っており、公式のホームページ(www.ds-j.com/nature/jsbn/)までありますが、そこに登録している学校だけで45校ほどあります。
 また、工場の敷地の一部をビオトープにする例も多く、例えば、横浜市の臨海部にある東京電力の横浜火力発電所では、敷地の5分の1に相当する10ヘクタール程度を緑地にし、160種類の樹木を18000本も植えて、一部には池も作っています。その結果、様々な野鳥やトンボも生息するようになっています。
 それ以外にも、最近では国土交通省が河川を改修するときに、これまでのようにコンクリートで護岸を作るのではなく、わざわざ淀みを作ってビオトープにするような工事も増えています。

 しばらく前までの経済至上主義の時代には、敷地をお金儲けにならないようなことに利用するとか、わざわざお金をかけて自然に戻すというようなことは無駄だと考えられてきましたが、時代の流れが大きく変わって来たのだと思います。
 そこで今日は、このビオトープに関心があるという方のために、ビオトープ管理士という資格を取ることをお奨めし、その受験方法などを紹介したいと思います。
 これは国家資格ではありませんので、これを取得しなければビオトープを作ってはいけないということはありませんが、自然環境についての知識を得るためにも役に立つのではないかと思います。
 これは財団法人・日本生態系協会という団体が実施している試験を受験することになるのですが、計画部門と施工部門があり、だれでも受験可能な二級管理士と実務経験を必要とする一級管理士があります。現在、一級の合格者は206名、二級が2470名しかいませんので、まだまだ貴重な資格だと思います。
 どちらも共通の科目として「生態学」「生態系保護論」「ビオトープ論」「環境関連法」について5つの答えから選択する5択問題や記述問題があります。詳細は日本生態系協会のホームページを参考にしていただければと思いますが、例えば、このような問題です。
 「本州に分布するツキノワグマが北海道には分布せず、北海道に分布しているヒグマが本州には分布していないなど、日本列島およびその周囲には、いくつかの生物分布境界線がある。それでは本州と北海道の間に引かれている生物分布線を何というか?
 1.八田線 2.渡瀬線 3.三宅線 4.ウォーレス線 5.ブラキストン線」
  (正解は5のブラキストン線)
 合格率は一級で10%。二級で20%程度で難しそうですが、腕試しか頭の体操として受験されてもいいのではないかと思います。
 ちなみに、環境省など中央省庁や、長野県、三重県などの地方自治体では、ビオトープの公共工事の入札資格にビオトープ管理士が会社に居ることを条件にしているそうですので、就職に有利になるかも知れません。





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