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論文

 ここ1年ほど、企業の広告などで「オンデマンド」という言葉がよく使われるようになりましたが、これについて考えてみたいと思います。
 意味は「注文に応じて」ということですが、この言葉が最初に使われたのは10年ほど前の「ビデオ・オンデマンド」ではないかと思います。この番組もそうですが、生放送ですと、この時間に聞いていただかないと聞き逃したということになります。特にテレビジョン放送の映画番組などでは、その時間に受像機の前に座って待っているというのが、これまでは常識でした。
 それは当然不便ですから、自分が見たいときに見たい番組を見たり聴いたりすることができればいいなあという希望がだれにもありました。ひとつの方法は録音や録画をしておいて、後から時間のあるときに見たり聞いたりする事です。最近、テープではなくてハードディスクに録画するレコーダーが売れていますが、見たいときに見る、聞きたいときに聞くという要望が強いということだと思います。

 しかし、これは録音や録画をするという手間がかかりますから面倒だと言うことで、さらに技術が進歩してきました。
 例えば、この「森本毅郎スタンバイ」もTBSラジオのホームページにアクセスして、ウェブラジオというマークをクリックすると、その日の放送を後からでも聞くことができるようになっていますが、テレビジョンでも同じことが始まっています。
 これはどのような仕組みかというと、音声や画像をデジタル情報に変換してコンピュータに入れておき、一般の人々がインターネット経由で、その情報を引っ張り出して聞いたり見たりするという仕組みです。最近はインターネットもブロードバンド・ネットワークと言われる通信速度の大きなものが普及し始めましたから、最初からインターネットだけで放送する放送局も登場しています。

 ここまでがオンデマンドの第一歩ですが、さらに広い範囲にオンデマンドが広がりつつあります。例えば、本の分野では、様々な本の内容をコンピュータに入れておき、専用の端末装置で読むというものが話題になっています。今年になって松下電器産業の「シグマブック」とソニーの「リブリエ」が発売され、予想以上に売れているようです。
 また、和歌山県の島精機製作所が開発した自動編機では、コンピュータの画面に自分の写真を取り込んで、色々なセーターやカーディガンを画面上でデザインし、その情報を編機に送ると、ただちに編み上げてくれます。
 さらにコンピュータの分野でも、デル・コンピュータが代表ですが、ホームページで演算装置の速度とか、ハードディスクの容量とか、ディスプレイ装置の大きさなど、自分の希望する仕様で注文すると、数日で作ってくれるというサービスが人気を集めています。
 これは便利なサービスということには間違いありませんが、実は100年単位の大革命だと思います。

 例えば、ラジオ放送であれば、これまでの放送は、この時間に聞かないと聞けませんという具合に、送り手側が主導権を握っていました。コンピュータも、この種類しか作っていませんという具合に、やはり作り手側が力を持っていました。
 しかし、オンデマンドになると、あなたの聞きたいときに聞いてくださいとか、あなたのご希望の製品をお作りしますということに変わって、視聴者側や消費者側が中心になるわけです。
 「消費者は王様です」という消費者にゴマをすった言葉がありますが、いよいよ本当に消費者が王様になってきたのだと思います。
 格好をつけて言えば、サプライサイド・エコノミーからデマンドサイド・エコノミー、すなわち、供給者主導の経済から消費者主導の経済へと転換することになります。

 もう一つの革命は、電子書籍でもコンピュータでも注文された場合にだけ商品を送信したり製造したりしますから無駄もないということです。現在、週刊誌では15%、月刊誌では25%、単行本では35%以上が返本になっているといわれ、大変な無駄が発生していますが、そのような無駄もなくなり、環境問題に貢献することにもなります。





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