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論文

 今日は趣味が日本を浮上させるという話をさせていただきたいと思います。
「社会生活基本調査報告」という政府の統計によって、日本人の趣味の割合を調べてみると、音楽鑑賞、映画鑑賞、絵画鑑賞など、文化系の鑑賞の趣味が圧倒的に多くて全体の66%になっており、次いでドライブやキャンプなど旅行系の趣味が16%、それから読書が10%、スポーツ鑑賞が6%、囲碁・将棋・麻雀というゲーム系の趣味が4%という順番です。
 比較のために「政官要覧」によって衆議院議員の趣味を調べてみると、国民の代表であるにもかかわらず、国民とはかけ離れています。与党も野党も1位はスポーツで、これは鑑賞も実行も含めて与党が49%、野党が46%となっています。そのスポーツのなかで1位は与党がゴルフで16%、野党はテニスで10%となっています。これは興味あることで、正確な数字はありませんが、アメリカの共和党議員はゴルフ、民主党議員はテニスといわれていますから、日米共通の傾向です。
 さらに国民とかけ離れているのは、一般国民では10%程度の読書が衆議院議員では与党が22%、野党が16%となっており、さすがに国会議員は勉強家が多いのではないかというわけです。確かに国会議員のなかには、自分の読書日誌をホームページで紹介しておられる方も何人かおられますから、格好をつけて読書と言っておられるだけではないと思います。

 趣味の組合わせでは、「読書」と「ゴルフ」、もしくは「読書」と「音楽鑑賞」が圧倒的多数で面白みがないのですが、興味深い趣味もあり、数例をあげてみますと、「家族サービス」と書いておられる方がおられます。「趣味は妻」と公言しておられる知事もおられますから、異常ではないと思いますが、ユニークだと思います。
 さらに唸るような趣味は「献血」、また堂々と「酒」と書いておられる衆議院議員もおられます。極めつけは「国会質疑」で、国会議員の本業は何であったか一瞬思い出せないほどの衝撃でした。
 ちなみに、小泉総理大臣は「読書」と「音楽鑑賞」、民主党の菅党首は「囲碁」「将棋」「水泳」「テニス」と、国会議員の標準コースでした。

 本題に入りたいと思いますが、趣味は英語で「ホビー」といいますが、この条件の第一は、それで収入を得てはいけないということです。例えば、釣りでも大量に釣って、それを売って収入があるようになれば、本業になってしまい趣味ではなくなってしまいます。別の言い方をすれば税務署にとがめられないことが趣味の第一条件ということです。
 第二は、しかし、相当の力量でなければいけないということで、ヨーロッパあたりでは解説書が書けるくらいの力量がなければ趣味と公言してはいけないと言われています。
 したがって、趣味が読書というためには、新聞の書評欄に定期的に書評を書いているとか、雑誌に書評を連載して、それが1冊の本になる程度でなければいけないということです。

 そのような力量がない趣味は英語では「ホビー」ではなく「パスタイム」と言い、日本語に翻訳すると「ひまつぶし」ということになります。ですから国会議員にも剣道五段とか囲碁四段という方や、パソコンを組み立てて、他の国会議員にプレゼントしておられる本当の趣味をお持ちの先生もおられますが、どうも読書とかゴルフとか、読書と音楽鑑賞というのは、日本語で言いにくいので英語で言うと「パスタイム」ではないかというわけです。

 さらに、本日の本題に入ると、本格的な趣味を持っている日本人が少ないことが、現在の日本の閉塞感の背景にあるのではないかということです
 仕事が趣味だとか生涯現役だと言うと、日本では立派な人だと尊敬する傾向にありますが、その精神が昨今問題になっている天下りの背景にあるのではないかということです。もし、本格的な趣味があって、仕事を早く辞めて、その趣味に生きるということになれば、天下りなどに興味を示さず、後輩は自由に組織を運営できることになり、新しい時代に合わせた社会構造を作ることが可能になります。
 それは明治維新以後の日本の飛躍や戦後の日本の発展を考えれば明確で、いずれの時期にも、社会の上層部が仕事に参加できなくなってしまったために維新が達成できたり、復興できたりしたのだと思いますし、ソニーやホンダなどが誕生できたのも財閥解体によって見通しがよくなったからだと思います。
 リスナーの皆様も、早目に趣味を見つけて、新しい人生に向かわれることを期待しています。





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