TOPページへ論文ページへ
論文

 来週は12月25日でクリスマスの日になりますで、クリスマスについての薀蓄を傾けたいと思います。
 第一は、クリスマスという言葉ですが、英語では「Christmas」と書くように、これは「キリストのミサ」すなわち、イエス・キリストを讃える儀式という意味です。
 略して「Xmas」とも書きますが、これはギリシャ語でキリストは「Xristos(ハリストス)」と書くので、その頭文字を採っているわけで、意味は同じです。したがって、ときどき「X'mas」とXとmasの間にアポストロフィを入れて書くことがありますが、これは間違いです。
 フランス語では「noel」といいますが、これは誕生という意味です。

 第二に、12月25日という日の意味は何かということですが、キリストの誕生日ということになっています。しかし、誕生日は1月2日説、1月6日説、4月18日説などがあり、ハッキリしていません。
 そこで紀元366年に、コンスタンチヌス帝のローマ帝国で、12月25日と決めたのです。これは当時の暦で、一年で日がもっとも短い冬至に当たる日です。つまり冬至の翌日からは日が長くなるので、キリストの復活にふさわしいというわけです。
 当時のローマには様々なキリスト教以外の宗教が存在し、この冬至のときにそれぞれ儀式をしていたので、それに合わせたとも言われています。

 第三は、サンタクロースの秘密です。サンタクロースは4世紀のトルコ地方にいた聖人の一人であるセント・ニコラスであるということは御存知の方が多いと思います。しかし、なぜトルコの聖人がトナカイに乗ってくるのかということですが、これは従来、アメリカのクレメンス・クラーク・ムーアという神学者が1823年に「クリスマスの前夜」という詩を発表し、そこに書かれているからだと信じられていました。しかし最近の研究で、その詩の作者はオランダ系のアメリカ人ヘンリー・リビングストン・ジュニアだとされています。ちなみに、サンタクロースはセント・ニコラスのオランダ語のシント・クラエスに由来します。

 第四は、なぜクリスマスの日にプレゼントが交換されるのかですが、セント・ニコラスは金持ちであったので、困っている人々に自分の富を分け与えていました。ある家で3人娘の持参金が用意できないので、親が娘を売ろうとしているという話を聞いたセント・ニコラスが、金貨を煙突に放り込んだら、その金貨が室内に乾してあった靴下の中に入ったというので、それ以来、サンタクロースは煙突から入ってきて、靴下にプレゼントを入れるということになったのです。

 後半は、日本のクリスマスの不思議に移りたいと思います。
 第五に、日本で最初のクリスマスはいつ行われたかということですが、これは1552年12月24日に山口県の周防で行われたのが最初だと山口県が主張しています。フランシスコ・ザビエルとともに来日していた宣教師コメス・デ・トルレスが司祭館に日本人を招いて、ミサを行ったということです。現在では、1998年4月に復元された「新ザビエル記念聖堂」で盛大な観光行事が行われています。
 織田信長がキリスト教の信仰を禁令にしてからは、もちろん行われず、復活したのは、1886年に横浜で開催されたときです。このときのクリスマスツリーには千羽鶴が吊り下げられていたそうです。

 第六は、知られざる不思議ですが、かつて日本はモール、ガラス玉、ベルなどクリスマス用品の世界最大の製造国だったということです。日本以前にはドイツが最大の製造国でしたが、第一次世界大戦で製造が困難になったので、日本が生産の中心になりました。第二次世界大戦中は、もちろん生産中止でしたが、戦後になってGHQが命令し、再び製造を開始しました。最近では、中国に王座を譲っていますが、現在でも日本クリスマス工業会という組織があり、3000種類以上のクリスマス用品を生産しています。

 最後の不思議は、日本は世界で唯一、宣教師が布教に失敗した国だと言われ、現在、日本のキリスト教徒は約100万人で、人口の1%にもならない国です。しかし、世界のキリスト教国では24日のクリスマス・イブは静かにお祈りするのに、日本だけはかくも盛大に国民がこぞってクリスマスを祝うかということです。





designed by BIT RANCH / DEGITAL HOLLYWOOD
produced by Y's STAFF
Copyright(c) Tsukio Yoshio All Rights Reserved.