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論文

 昨年8月のヨーロッパは豪雨で大変な被害が発生したのですが、今年の8月は大変な暑さになっています。
 スペインのセビリアでは45・5度、マドリードも41・5度を記録していますし、パリも39・5度になり、戦後2番目の気温になっています。ロンドンは8月の平均気温が22・6度ですが、今年の最高気温は35・4度になっているという具合です。
 その影響で山火事が各地で発生し、ポルトガルでは森林面積の3%に相当する16万ヘクタールが焼失しています。ゴルフ場の面積が80ヘクタール程度ですから、2000コース分というと大変な面積だと実感できるのではないかと思います。

 日本は現在のところ、それほど異常な状態ではありませんが、構造的な問題を抱えています。
 過去100年間で世界全体の気温は0・5度上昇したと推定されていますが、日本は1・0度も上昇し、とりわけ大都市では異常に上昇しており、東京が2・9度、大阪が2・3度、名古屋が2・4度も上昇しています。
 その結果、最高気温が30度を超えた日を「真夏日」といいますが、東京では1980年に28日でしたが、2000年には45日に増え、大阪でも65日から72日に増えました。
 最低気温が25度以下にならなかった日を「熱帯夜」といいますが、同様に過去20年で、東京では14日から30日に増え、大阪では27日から38日に増加しています。

 このように大都市の気温が異常に上昇する現象を「ヒートアイランド」といいます。ヒートは「熱」で、アイランドは「島」ですが、地図の上に気温の等高線を描いてみると、都心が島のようになるところから名付けられた名前です。
 例えば、大阪の都心の温度は郊外の吹田市よりは平均して1・0度高くなっていますし、最大では1・5度も高くなることがあります。さらに郊外の箕面市と比べると、平均でも1・4度、最大では2・1度も高くなっており、都心ほど温度が高くなっていることが明瞭です。
 色々な原因が重なっているのですが、第一に都市は建物が高密度で建っていますから、面積あたりの熱の発生量が多いということです。実際、過去30年間で東京都の熱発生量は1・9倍に増加しています。
 第二は都市の道路や駐車場などがコンクリートやアスファルトで舗装されていますが、それらは土のように水分を含まないために、太陽の熱で高温になることです。真夏には道路の表面は70〜80度以上になりますから、ホットコーヒー並みの温度ですが、そのような舗装された面積は東京23区の80%にもなります。
 第三は森林や草原が少ないために、温度を和らげてくれないことです。東京23区では1991年から96年の5年間だけで272ヘクタールの森林や農地などが減少しています。これは日比谷公園の17倍の面積です。
 これは悪循環で、暑いからルームクーラーを使用する、暑いから近いところへも自動車で移動する、ということになり、結果として、ますます人為的な熱が発生することになります。

 すでに様々な対策が実施されはじめています。東京都や大阪府では道路の表面が水分を含むことのできる保水性の舗装をするように転換しています。そうすると暑いときには、その水分が蒸発して気化熱によって涼しくなるという仕組です。
 また、屋上緑化といわれますが、建物の屋上を芝生にしたり植栽をしたりすることも進めています。東京都は2001年4月から東京都自然保護条例によって、1000平方メートル以上の敷地に建物を建てる場合には、建物を建てる部分を除いた敷地面積の30%以上、建物の屋上面積の30%以上を緑地にすることを義務づけていますし、東京都が実施する再開発事業では、延べ床面積が1万平方メートル以上の建物について、敷地面積の45%以上、屋上面積の60%以上を緑化する基準を設定しています。手始めに、昨年10月、新宿にある東京都の議事堂の屋上770平方メートルを緑地にして一般公開しました。
 国土交通省も全国規模で検討しており、敷地面積の20%以上を緑地にする代わりに、建物の容積率を割り増ししたり、固定資産税を軽減する法律を平成17年度から施行する予定です。
 それ以外にも、建物の断熱性能を向上させて冷房や暖房の効率を高まるとか、エアコンから排出する排熱を10%以上削減するなどの規則を制定していますが、ついに今年、究極のヒートアイランド対策が登場しました。
 「大江戸打ち水大作戦」です。私たちの子供時代には家の前の道路などに、住人が水を撒いていました。これは江戸時代には日常的な光景でしたが、今年は「江戸開府400年」なので、その先人の知恵を見習おうというものです。
 8月25日(月)正午に、風呂の残り水や溜めておいた雨水などを、自宅周辺に一人2リットル以上撒いてもらおうという運動です。
 計算によると、東京都23区の面積の半分に相当する280平方キロメートルに、雨量1ミリメートルに相当する水を撒けば、気温が2度下がると推計されています。
 ヒートアイランドは都会の現象のようですが、地球全体から見れば、人間が生活している場所のすべてがヒートアイランドですから、全国各地の皆さんも打ち水を行われたらいいと思います。





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