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論文

 日本には今年の3月末で8110万台の携帯電話が普及していますが、この台数はどこまで増加するかと予測すると、日本の人口が約1億2700万人ですから、そこが限界ではないかと考えられます。
 現状で人口の64%程度に普及していますし、10歳未満の子供を除いた人口1億1500万人に対しては70%の普及率ですから、そろそろ飽和状態という意見もあります。
 実際、1990年代後半は毎年1000万台以上増加していたのですが、最近では、年間500万台程度の増加と鈍化しております。
 ところが、まだまだいくらでも伸びるという意見があります。ガールフレンドごとやボーイフレンドごとに携帯電話を使い分けているという人もいますが、それは例外で、一人何台も持つということにはならないと思います。

 可能性があるのはイヌやネコが使うということです。日本の飼い犬の頭数は987万匹、飼い猫は752万匹だそうですから、1500万の潜在需要はあるわけです。「バウリンガル」というイヌ語の翻訳機が売れていますから、あながち夢物語でもなく、イヌに携帯電話をして腹が空いてないかと聞いて、エサを与えるという時代も実現しそうですね。
 しかし、これでは50%に普及しても700〜800万台ですから、すぐ頭打ちになってしまいます。
 そこで、あらゆるモノに携帯電話を付けようという発想が登場してきました。それを象徴するのが「ユビキタス(ubiquitous)」という言葉です。
 これは普通の英語の会話でもほとんど使うことのない単語ですが、最近のコンピュータや通信の分野では流行語になっています。もともとはラテン語で「どこにでもある」という意味ですが、どのような場所でもコンピュータが存在している社会を実現しようという意図をもつ言葉です。
 そのひとつが、これも発音しにくい言葉ですが「ウェアラブル・コンピュータ」です。ウェアラブルとは「着ることができる」という意味ですが、これはコンピュータを身につけて人間と一緒に移動するようにするという技術です。
 もうひとつが「ICタグ」といわれる技術です。ICとは集積回路、タグとは名札のことですから、電子名札と言っていいかと思います。最近の集積回路の技術は急速に進歩しており、現在では1ミリメートル四方の大きさのコンピュータさえ実現していますし、大量生産で非常に安価になっています。
 そこで、このICタグを荷物に付けておくと、その荷物がどこにあるかがすぐに分かるというわけです。

 クジラやヒグマに発信機をつけて追跡する技術が実用になっていますが、あれはかなり離れた場所からも追跡できるように電波を発射しますから、文庫本ほどの大きさになりますが、ICタグは自体に電池などを装備していませんから1ミリメートル四方ほどの小型にできるのです。その代わり、探す側から電波を発信して、それをエネルギー源とするわけです。
 一例を紹介しますと、必要な本を探そうとすると、どこに紛れ込んで見つけるのに苦労しますが、すべての本にICタグを付けておけば、携帯電話から本の名前か番号を発信すると、本箱の奥から、ピーピーと音がして、「ここです!」と教えてくれるわけです。
 これはアイデア次第で様々に応用できますが、現在、書店が万引き対策に導入しようと検討しています。書店での万引被害は大変な額で、経済産業省が昨年実施したアンケート調査では、書店あたりの年間被害額の平均は210万円であり、東京都内では1億円以上の被害という大型書店もあります。日本の書店の総数が2万6000店ほどですから、被害総額は550億円にもなります。
 そこで、すべての本にICタグを付けておけば、本を探したり、在庫管理をするのにも便利ですが、代金が支払われていない本は出口でチェックすることもできますし、もし万引されて古書店に転売されても追跡することもできます。
 現在、出版業界で協議会を設立して検討されていますが、1冊5円程度であれば十分に実施可能とされています。
 そのようなわけで、あらゆるモノに携帯端末を付ければ、無限といっていいほど需要はあるということになります。





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