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論文

 今週の日曜日の13日に統一地方選挙の前半戦がおこなわれ、11の都道県で新しい知事が誕生しましたので、この今回の選挙の意味と知事の役割について考えてみたいと思います。
 これまでにないいくつかの特徴があります。
 まず当選した知事の経歴に特徴があります。今回当選した11人の知事のうち、7人が中央の官僚出身、2人が国会議員出身です。これは現在の知事全員についても同様で、46人(徳島は欠員)の知事のうち半分強の24人が中央の官僚、8人が国会議員であった方々です。
 もうひとつは年齢で、今回、佐賀県で44歳という最年少の知事が誕生したこともあり、平均年齢が2歳ほど若返りました。
 現在、70歳以上の知事は7名(15%)、60歳代が17名(37%)、50歳代が17名(37%)で40歳代が5名(11%)です。
 14年前に高知県の橋本知事が40台前半で当選したときに話題になりましたが、それ以後、岩手県の増田知事、長野県の田中知事、広島県の藤田知事など40台は普通になり、今回も佐賀県の古川知事が44歳で当選しました。
 多選の問題も次第に選挙のときに論点になってきました。三重県の北川知事が二期で辞退して、大学教授に転身しますし、長野県の田中知事は三選までと表明していますし、今回も神奈川県の松沢知事、福井県の西川知事、三重県の野呂知事、佐賀県の古川知事も選挙前から三期までと表明しています。
 現在、四期以上の知事は、福島県の佐藤知事(四期)、富山県の中沖知事(六期)、岐阜県の梶原知事(四期)、島根県の澄田知事(五期)、宮崎権の松形知事(六期)の五人しかいません。
 女性の進出も進展しています。大阪府の太田知事が初代で話題になりましたが、その後、熊本県の潮谷知事、千葉県の堂本知事と続き、今回は北海道の高橋知事が当選し、4名になりました。

 しかし、今回の知事選挙で政治的に興味がある現象は、無党派知事とか脱政党知事といわれる知事が多数誕生してきたことだと思います。
 これまでも東京都の青島知事や大阪府の横山知事の前例はありましたし、県民党という立場を表明した知事もおられましたが、県民党というのは実質的に複数の政党の推薦であることをカモフラージュする名前のことが多かったのです。
 しかし、今回は岩手県の増田知事、東京都の石原知事、神奈川県の松沢知事、鳥取県の片山知事が特定の政党の支持なしで当選していますし、現職では、それ以外に秋田、宮城、栃木、千葉、長野、高知が政党の推薦なしで当選しており、10人になっています。
 また、結果的には政党支援の候補が当選しましたが、北海道と福井県と大分県は無党派で立候補した候補が最後まで肉薄し、当選が決まるのに時間がかかりました。

 知事にとってみれば、業界団体や労働組合などの支援を受ければ行政が影響され、財政再建の抵抗になるということもあるし、現在のように公共事業が削減されていけば与党を通じて政府の予算を引っ張って来るという意義も薄れてきたのだと思います。
 さらに重要な理由は、東京都の石原知事が「東京から日本を変える」と表明しておられる言葉に集約されていると思います。政党、とりわけ与党の政党の支持を受けるということは、当選してから国との関係を密接にしていくのに有利だったわけですが、むしろ逆に地方から国に提言をしていくという時代になってきたのだと思います。
 1998年に私も関係していた「地域から変わる日本」という知事のグループが結成され、独自の政策で地域を運営していこうという運動を展開されてきましたが、その8人のメンバーのうち、岩手、秋田、宮城、高知、鳥取の5人が脱政党知事でした。

 二○○○年四月に地方分権一括法という法律が施行され、これまで中央の下請けとして実施されてきた機関委任事務が地方に移管されました。これは地方分権の巨大な一歩でしたが、さらに現在、「三位一体改革」といわれ、税源を地方に移譲していこうという議論が活発になっています。
 国民が納入している税金が85兆円ほどありますが、国税が60%の50兆円で地方税が40%の35兆円です。ところが、歳出では国が57兆円で37%、地方が96兆円で63%と逆転しています。この差額を地方交付税と補助金で調整しているのですが、その権限が中央にあるために、地方が自立できないということで、そもそも徴税の権限を国から地方に移そうというのが三位一体改革といわれるものです。
 簡単に言えば、使う金額に応じて自分で財源を確保できるようにしようということです。

 これは推進しようとする総務省と阻止しようとしている財務省と事業官庁が対立していますが、時代の流れとしては改革の方向に行くと思います。そうなれば現在以上に地方は自立意識が高まり、政党や中央官庁の紐付きの必要はなくなるということです。

 そのような背景もあり、知事選挙の結果が発表された14日月曜日の翌日の15日に「地域自立戦略会議」という組織の結成が記者発表されました。これは8人の知事と私も含めた何人かの学識経験者が、地方が自立するための戦略を研究するという会議で、8人の知事のうち、岩手、宮城、千葉、鳥取、高知の5人が脱政党知事です。
 この結成を兼ねた「地域自立シンポジウム」が、来週の火曜日の4月22日の13:30から都道府県会館4階の402号室で開催され、8人の知事全員が出席しますので、地方の新しい動きに感心のある方に出席していただいたらと思います。入場は自由で無料です。





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