TOPページへ論文ページへ
論文

 最近、石原東京都知事が観光税を発表したところ、片山鳥取県知事が反論したりというように知事の威勢がいいのですが、その威勢のいい知事の話をさせていただきたいと思います。
 今年4月に『THE21』という雑誌に私が知事のランキングを発表し、その内容を番組で紹介させていただいたのですが、その続きとして、最近『変革するは我にあり』という本を出版しました。
 その本では、石原東京都知事、北川三重県知事、梶原岐阜県知事、橋本耕地県知事、片山鳥取県知事、増田岩手県知事、浅野宮城県知事、田中長野県知事の8人について、僭越ながら評価をさせていただいているのですが、その紹介をさせていただきたいと思います。

 8人の知事について8項目の評価をしてありますが、最初が「生命財産」です。
 国民が政府に期待しているのは、地震や洪水のときに個人の生命や財産を守ってくれることだと思いますが、今回の狂牛病騒動のときも、以前の非加熱製剤のときもそうですが、政府は国民よりも産業界を守るほうを優先しているように思える場合が少なくありません。そこで、知事が自分の都道府県の住民を守るという気概がどの程度かを評価してみたものです。
 石原知事、北川知事、梶原知事が高得点ですが、石原知事はディーゼルエンジンの排気ガス規制について、国がしないのなら東京都からすると規制を発表しましたし、昨年の9月1日の防災の日には自衛隊を銀座通りでパレードさせて話題になりましたが、それは都民の健康や安全は守るという意気込みを示したものです。
 三重県の北川知事は昨年2月に、37年間決定されなかった芦浜原子力発電所の建設を白紙撤回しましたが、理由は南島町と紀勢町という二つの町が賛成と反対に分かれて住民が反目し、地域社会が崩壊してしまっているので、知事としては住民が安寧に生活できる環境を回復することが第一だということでした。
 岐阜県の梶原知事は今年になって、アルゼンチンに農場を確保すると発表しました。殿!ご乱心かと思ったらそうではなく、これから食糧事情が逼迫してくるのは確実なので、何としても岐阜県民だけは飢えさせないために食糧確保するのだということです。現実的かどうかは別にして、その心意気がいいと思います。

 次は「国政対決」ですが、昨年4月から地方分権一括法が施行されて、地方が独自の行政の出来る範囲が拡大されました。当然、国政と衝突する場合がありますが、それでも実行するかどうかという意気込みです。
 国のダム行政に対決している長野県の田中知事もそうですが、外形標準課税を真っ先に発表した石原知事や、兄が総理大臣にもかかわらず、減反政策に反対したり、地方公務員採用のときの国籍条項を撤廃したりしている橋本知事も立派だと思います。

 重要なことは、このような改革派の知事が大胆な政策を発表すると、国も追いかけはじめたということです。例えば、昨年1月に石原知事が外形標準課税を発表すると、政府の税制調査会も検討をはじめ、北川知事が原子力発電所の建設を白紙撤回すると発表すると、国の総合エネルギー調査会が原子力発電所の見直しをはじめるなど、国政が地方行政を追いかけるようになってきたのです。

 最後に「文明史観」ですが、しばらく前までのように、右肩上がりで一方向に社会が動いていた時代であれば、前例に倣って行政をしていても十分でしたから、(旧)自治省の高官が知事になると都合がよかったのですが、社会全体の方向が転換して見通しが悪くなると、歴史観や文明史観といわれるような哲学が必要になると思います。
 そのような点で感銘を受けたのは、今年の元旦に石原知事が「作家の感性から判断すると、人類はあと50〜60年くらいしかもたないのではないか」と発言されていますが、その是非はともかく、そのような感性も必要となると思います。

 知事ではありませんが、素晴らしい話を紹介させていただきたいと思います。私が時々カヌーに出かける古座川という清流が和歌山県にあります。カヌーが空中に浮かんでいると錯覚するくらい透明な水の川です。この清流がなぜ維持されたかというエピソードがあります。
 バブル経済の最盛期に、多数の開発業者がゴルフ場を建設したいので土地を売って欲しいと言ってきたときに、当時の町長が「ゴルフ場は全国各地にあるが、この環境はここにしかないものだから、それをゴルフ場にするわけにはいかない」と、すべて断ったのが、現在に清流が残された理由です。時流に流されない歴史観が重要だという一例です。
 このようなエピソードを満載した『変革するは我にあり』を出版しましたので、20名の方々にプレゼントさせていただきたいと思います。





designed by BIT RANCH / DEGITAL HOLLYWOOD
produced by Y's STAFF
Copyright(c) Tsukio Yoshio All Rights Reserved.