TOPページへ論文ページへ
論文

 日本の食料自給率は40%を切っており、60%以上を輸入しています。ところが、その一方で食料を食べないで捨てている割合は24%もあると推計されています。ざっと4分の1を手付かずのまま捨てているということです。この日本で捨てられている食料はカナダが年間消費している食料に匹敵する量ですから、馬鹿にならないどころか、とんでもない量です。
 さらにアメリカになると食料全体の27%が捨てられているようですので、フィリッピンやメキシコの食糧消費に匹敵します。
 しかも食べ物を残す理由(複数回答)が、日本でのアンケートによると
   食事を作りすぎた       50%
   嫌いな食べ物が含まれている  35%
   少量しか食べないから     21%
   ダイエットをしているから   15%
   一人で食べるから       10%
という怒りたくなるような内容です。

 しかし、食料に限ったことではなくて、無駄に捨てられているモノはいくらでもあります。例えば本です。書店まで配達されて店頭に並べられたけれど売れなかったために返本される割合は、週刊誌で約15%、月刊誌で約25%、単行本は40%以上になっています。印刷して製本して配送して、やっと書店の店頭まで届いたと思ったら、1ヶ月もしないうちに、返本を工場まで輸送して製紙工場でリサイクルするわけですから、膨大な無駄です。

 この背景にあるのが大量生産→大量流通→大量消費、そして消費されなかった商品の大量廃棄という現代社会の構造です。
 何とかしないといけないのですが、少しずつ解決する技術が出てきました。例えば、電子新聞です。インターネット経由でコンピュータの画面で読む新聞です。国内だけでも200程度の電子新聞がありますし、世界では5000近くの電子新聞が発行されています。
 これは便利な新聞で日本に居ながら世界の最新の記事を24時間いつでも自由に読めますし、今のところほとんどの電子新聞は無料です。
 しかも、紙の新聞と比較すると20分の1のエネルギーで記事を届けることができます。また、紙全体の消費の10%以上が新聞紙ですから、森林の保護にも役立つという一石三鳥くらいの優れものです。
 電子本も同様で40分の1のエネルギーで同じ内容を読むことができます。

 情報はこのような節約が可能ですが、モノでは難しいと思われると思います。ところが、モノでも情報技術を駆使して大量生産から脱出する方法が出現しています。
 先週、鳥取市にあるグッドヒルという会社を見学させていただいたのですが、ここはオーダーメードの洋服を大量生産している最新工場です。日本では年間150万着程度のオーダーメードの背広が作られていますが、その3分の1の50万着がグッドヒルの工場で作られています。
 全国の洋服屋さんでお客様の体型の寸法を測ると、その情報がこの工場に送られてきます。その情報をコンピュータに入力すると、あらかじめ記憶されている700万種類の型紙のなかからピッタリの寸法のものをコンピュータが選び出します。その型紙を生地からどのように切り出すかというマーキングという作業をコンピュータでおこないます。専門の職人でも3時間はかかるという仕事を、少し訓練しただけの人が3分間程度で終えてしまいます。
 次に自動裁断機で布地を裁断し、それらをまとめて縫製部門に送ります。さすがに縫製が自動でできる割合は15%くらいで、人間が縫っていますが、このようにして1日に2000着近くが生産されています。

 和歌山市にある島精機製作所は自動編物機械の世界有数の会社ですが、ここではコンピュータの画面で自分の好みのセーターやカーディガンを設計すると、その情報が自動編機に送信されて、直ちに編んでくれるという機械を開発して販売しています。
 福井市にあるセーレンという会社では、1人1人の注文に応じたスカーフなどの染物をするという技術を開発して実用にしています。

 一品生産だと高価になりそうな印象ですが、実は逆なのです。大量生産、大量流通の商品は流通部門の経費が半分以上を占めていますが、このような一品生産は流通部分がありませんから、逆に安くなってしまうのです。
 この200年ほどの大量生産時代は確かに豊富な商品を提供して生活を豊かにしてくれましたが、それは膨大な無駄の上で成立していた豊かさだったのです。ところが、ITの登場によって、世界に一つしかないという贅沢な製品を作ってもらって、しかも値段が安くなり、さらに無駄を発生させない社会が出現してきたといえます。





designed by BIT RANCH / DEGITAL HOLLYWOOD
produced by Y's STAFF
Copyright(c) Tsukio Yoshio All Rights Reserved.