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論文

 いよいよアメリカがアフガニスタンへの空爆を開始しましたが、これは完全なハイテク戦争です。そのハイテクについて紹介したいと思います。
 1991年の湾岸戦争もハイテク戦争でしたが、さらに進んできました。10月初頭の日本の新聞に、アフガニスタン東部のジャララバード付近にあるタリバンの軍事基地と推定される施設の衛星写真や、首都カブールの郊外にタリバンが建設したと推定されるトンネル基地のカラーの衛星写真が紹介されました。
 これは一見すると軍事偵察衛星が撮影した写真のようですが、記事を読むと「イコノス」という商業衛星が撮影した写真と説明してあります。
 アメリカはソビエトが崩壊すると確信した1980年代の終わり頃から、ディフェンス・コンバージョン、日本語で軍民転換といわれる政策を推進してきました。ソビエトが脅威であった時代には極秘にしてきた軍事技術を民間企業に開放して産業を強化するという政策です。
 例えば、日本のレジャーランドに行くと、人気のライド施設があります。ゴーグルをかけて椅子に座ると、目の前のスクリーンに立体映像が上映され、それに合わせて椅子が揺れて、本物のジェットコースターに乗った気分になるという施設です。
 あれは専門用語でバーチャル・リアリティ、日本語では仮想現実といいますが、発祥は軍事技術です。コンピュータ・グラフィックで画像を作成し、それに合わせて椅子をガタガタさせる仕掛けです。

 ワールドトレードセンタービルを襲撃したテロリストたちが航空機の操縦訓練をしたのも同じような技術です。航空母艦に戦闘機を着艦させたり、ホーカーシドレー・ハリヤーのような垂直離着陸機の操縦訓練のために開発されてきた技術です。
 私もボーイング747のシミュレータで15分ほど訓練したことがありますが、本当に東京湾の上空を飛んでいるような気分で、横に座っていた技術音痴の女性は、最後まで実際に空を飛んだのだと錯覚していたほどでした。

 そのような軍事技術を秘密にしておく必要はないということで80年代中頃から民間に技術が開放され、遊園地で役に立っているというわけです。
 偵察衛星も軍事技術だったのですが、90年代末期に軍民転換され、スペース・イメージング社というアメリカの企業が、イコノスという名前の偵察衛星を99年9月に打ち上げて注文があれば世界中どこでも撮影するという商売をしています。
 新聞の写真を見ても精細な写真ですが、解像度は1メートルと言われており、地表にある1メートル以上の物体であれば撮影できるという能力をもっています。例えば、自動車が2メートル×3メートルとすると、大きさも色も分かることになり、バスかトラックか乗用車かの区別もできます。

 地球を1時間28分で1周し、1日に16周するのですが、3日ごとに同一の場所の上空を通過することになります。
 これが、どの程度進んでいるかを示すと、日本もやっと偵察衛星を打ち上げることを決定しましたが、2002年度の予定が2003年度に延期され、その解像度が1メートルですから、いかにアメリカが進んでいるかが分かると思います。
 しかも、日本が打ち上げる2004年には、スペース・イメージング社は解像度50センチメートルの衛星を打ち上げる許可も取得していますから、はるかに先を行くことになります。アメリカの軍部も現在では自前の衛星で撮影せず、スペース・イメージング社から写真を購入しているそうです。
 この衛星写真は日本では三菱商事が経営している日本スペース・イメージング社に注文すれば、1キロメートル平方あたり3万円程度で撮影してくれます。

 先週もアメリカが軍事偵察衛星を打ち上げました。軍事偵察衛星の能力は秘密で分かりませんが、冷戦時代には、モスクワの赤の広場でロシア人が読んでいる新聞『プラウダ』の見出しが判別できたというまことしやかな話もあります。ですから特定の人間を探索するとか、解像度が10数センチメートルの画像が必要ということかも知れません。
 『エネミー・オブ・アメリカ』には特定の人間を偵察衛星で追跡する場面が登場しますが、あのような能力があるのかどうかも軍事機密ですが、オサマ・ビンラディンを追跡するために新しい軍事偵察衛星を打ち上げたのかもしれません。





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