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論文

　毎日のように「○○記念日」とか「○○の日」がありますが、今日は世界観光の日で、それを記念して９月２３日から今日まで韓国のソウルで、明日から１０月１日までは大阪ではＷＴＯ（世界観光機関）の総会が開催され、世界から１００カ国以上の人々が集まって議論します。

　残念ながら日本の国際観光は不振で、１９７０年には外国へ行く日本人の観光客が６６万人であったのに、外国からの観光客は８５万人と入国超過だったのですが、最近では外国へ出かける日本人は１７８０万人と３０倍近くまで増えたのに、海外からの外国人は４７０万人で大幅な出国超過です。
　世界の観光の統計を調べてみると、海外からの観光客数の多い順番は
　　　フランス　　７０００万人
　　　スペイン　　４７７０万人
　　　アメリカ　　４６４０万人
　　　イタリア　　３４８０万人
　　　イギリス　　２５７０万人
と先進諸国が上位ですが、日本は４７０万人で７５カ国中３５位です。
　これを人口１０００人あたりの観光客数に換算してみると、
　　　オーストリア　２１４９人
　　　アイルランド　１６５６人
　　　チェコ　　　　１５８４人
　　　スイス　　　　１５３８人
　　　シンガポール　１５０７人
と軒並み観光大国が並びますが、ここでも日本は３３人と７５カ国中６１位で、観光小国です。
　それでは観光による外貨収入はどうかと調べてみると、
　　　アメリカ　　７１２億ドル
　　　フランス　　２９９億ドル
　　　イタリア　　２９８億ドル
　　　スペイン　　２９７億ドル
　　　イギリス　　２１０億ドル
で、やはり欧米先進国といわれる国々が上位で、日本は７５カ国中２８位です。
　これを各国の国内総生産（ＧＤＰ）に占める割合で並べてみると、
　　　ウクライナ　１０・９％
　　　チュニジア　　７・８％
　　　タンザニア　　６・８％
　　　チェコ　　　　６・６％
　　　シンガポール　６・１％
と観光立国を目指している国々が上位ですが、ここでも日本は０・１％で、５６カ国中５６位という最下位です。

　これは日本が工業大国で観光などに経済を頼らないと考えることもできますが、工業大国のアメリカでも０・８％で日本の８倍ですから、やはり問題だと思います。
　原因は極東という日本の地球上での位置もありますが、最大の原因は日本が観光というものを国家の重要な戦略にしてこなかったことだと思います。
　例えば、イギリスは日本と同様に島国ですが、人口１０００人当たりの観光客数は４４２人で世界の２６位とがんばっているし、国内総生産に占める比率でも１・８％と日本の２０倍近くあります。
　実はブレア政権になってから、イギリスは国家のイメージチェンジを図る戦略として「トレードマーク・ブリテン」という構想を立案し、従来、世界の人々がイギリスにもっているイメージ「薄暗い天候、くすんだ都市、まずい料理の老大国」を一新するという作戦を開始しています。
　例えば、イギリスについて知りたいと思えば、だれでも最初にインターネットでアクセスするポータルサイトを作るとか、海外にあるブリティッシュ・カウンシルの建物を統一した外観にするとかの提案がなされ、国旗も一新したらどうかという提案さえされています。

　日本はまず縦割り行政を改めて、窓口を整理する必要があると思います。
　観光は国土交通省が担当ですが、世界遺産は文化庁、宿泊施設は厚生労働省ですし、エコツアーは環境省、グリーンツーリズムは農林水産省、国際交流は外務省とバラバラというのが実態で、どこも本気で日本のイメージ戦略を考えていません。
　それから、政府も企業も国民も観光というものを本気で国家の重要戦略だという意識で理解していないことも問題です。
　経済の視点からみれば、現在は外貨収入４０００億円程度の産業規模ですが、アメリカ程度に国民総生産の２％程度を目指せば、１０兆円産業になり、農林水産業に匹敵する規模になりますし、雇用についても、量的な雇用増加だけではなく、高齢者の就業機会も増えると思います。

　それ以上に重要なことは、最近、ブランディング・ビジネスという言葉が使われるようになりましたが、ブランドを確立することが経済に有利だという考えです。
　日本の女性が喜んで購入しているエルメス、ルイ・ヴィトン、グッチ、ロエベなどのハンドバッグは、私のように関心のない人間からすると、１０００円で売っている商品と同じではないかと思いますが、最近では、それらの何割かは日本女性が購入しているそうです。理由を一言で言えばブランド物だからということです。
　日本の工業製品は、かつては安物という印象でしたが、努力の甲斐あって優秀な製品と評価されるようになりましたが、観光はまだまだブランドが確立されていません。これをイギリスのような戦略で推進することも重要だと思います。
　最後に、５月にも放送しましたが、世界から多数の人々が観光に来て、日本は素晴らしい国だという印象を持って帰ってくれれば、長い眼で見て、日本の安全保障にもなるという発想が必要だと思います。





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