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論文

 先週は世界全体で水が消えていくという話題でしたが、日本は大丈夫かという話をしたいと思います。
 最近の世界の渇水状況をみると、量の問題もありますが、質の問題も考えないといけない状態です。

       年間降水量(mm)    人口あたり(m3)
 日  本   1714         5160
 イギリス   1064         4624
 アメリカ    760        29485
 フランス    750         7474
 豪  州    460       221416
 サウジ     100        17902
 世界平均    973        26875

      ダム貯水量(百万m3)   人口あたり(m3)
 日  本   3970           32
 イギリス   2568           45
 アメリカ 135242          536
 カナダ   17500          647
 韓  国  21619          500

 ミネラルウォーターの需要が増えていることも問題です。
 日本ミネラルウォーター協会が発表した数字によると、この10年間で、日本人が一人当たり飲むミネラルウォーターの量が4倍に増え、年間8・5リットルになったそうです。普通のペットボトルが0・5リットルですから、17本程度飲んでいる計算です。
 しかし、西欧諸国ははるかに大量のミネラルウォーターを消費しています。

 清涼飲料産業(日本) 3兆5000億円 ミネラルウェーター 1000億円
                    (世界      2兆7000億円)
 日  本   8・5リットル/人・年
 アメリカ  44   (日本の 5倍)
 フランス 120   (   14 )
 イタリア 150   (   18 )

 ミネラルウォーターが増える原因を推定できる調査結果があります。
 サントリーが首都圏で500人を対象にした調査では
  ミネラルウォーターを飲み水にしている人  90%
  浄水器の水を飲んでいる人         42%
  水道水を飲んでいる人           41%

 また東京都が水道水について3000世帯を調査した数字では
  飲み水として水道に満足           8%
  やや不満+不満              43%

 このような調査結果から推定すると、日本全体の水道水がまずくなってきたことではないかと思います。
 日本には約400社が約500の銘柄のミネラルウォーターを発売しているそうですが、どこも水源確保に苦労しています。南アルプスの山麓に水源地が集中していますが、水質の汚染の心配が長期的にない場所を探すと、次第に標高が高くなっていくのですが、それでも工場ができたりして問題が発生しています。

 国内売上1位 南アルプスの天然水(サントリー)  21% 山梨県白州町
     2位 六甲のおいしい水(ハウス食品)   14  神戸市灘区
     3位 森の水だより(日本コカコーラ)   10  山梨県白州町
    *4位 ボルヴィック(仏)          9
    *5位 エビアン(仏)            4
     6位 アルカリイオンの水(キリンビバレッジ)4  静岡県御殿場町
    *7位 クリスタルガイザー(米)       2
     8位 こんこん湧水(ネスレグループ)    2  山梨県西桂町

 世界的に有名なミネラルウォーターの「ヴィッテル」(ペリエ・ヴィッテル社)は、フランスのヴィッテル村に水源があるのですが、農家には農薬や化学肥料を使わないように依頼し、道路から有害物質が浸透しないようにシートを埋め込んでいるほどです。
 それ以外にも、日本の水道水には問題があります。
 水源が汚染してくるので、細菌を除去するために塩素を投入して殺菌しているのですが、この過程でアトピーの原因にもなるといわれているトリハロメタンが発生したり、塩素でも死滅しないクリプトスポリジウムという原虫がいたりという問題があります。
 これは1993年に、アメリカのミルウォーキーで40万人が感染し、約400人が死亡して一躍注目されるようになりました。
 畜産施設の糞尿が原因であったり、野生のシカやサルの糞便が原因であったりします。この原虫は1ミリメートルの200分の1くらいの大きさなのでセラミックスや化学繊維でできた微細な穴があいた膜を通す「膜濾過」で除去できるのですが、そのために水道水が高価になります。今年の5月には栃木県今市市に膜濾過装置を導入した浄水施設が完成しましたが、36億円かかっています。

 これ以外にも、現在の浄水の主流は100年前にアメリカで開発された「急速濾過」ですが、これをやめて200年前にイギリスで開発された「緩速濾過」を採用すべきだという学者もいます。これは天然の湧き水と同様に、砂層をゆっくりと通過させると微生物の作用で殺菌もしてくれるということです。

 このような対症療法も必要ですが、やはり水源を守ることが大事で、朝日新聞の調査によると、水源の汚染に影響するような産業廃棄物施設を制限する条例を181市町村が制定しています。
 例えば、宮城県白石市は今年の3月に「水道水源保護条例」を制定しましたが、「きれいな水を住民が享受する権利」を明文化し、産業廃棄物処分場を阻止する構えです。

 地下水というのは一度汚してしまうと数百年は修復できないともいわれますので、対症療法ではなく、根本からの対策をする必要があります。
 渇水のための水量確保も重要ですが、いくら大量にあっても飲めないのでは困りますので、水質を守ることを努力しなければいけないと思います。





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