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論文

 先週、文部科学省が「技術予測調査」を発表しました。これは1970年から5年ごとに政府が実施している調査で様々な科学技術がいつごろ実現しそうかを予測しているものですが、今年は第7回目です。
 厚さ5センチメートル、950ページの大部の報告書ですが、お急ぎの方のためにはイラスト入りの75ページの概要版もあります。

 予測は「デルファイ法」という手法を利用しています。日本の4000人以上の科学者や技術者に「ある技術が何年後に実現するかという質問を送付すると、専門の学者も専門外の学者も回答を返送してきます。
 当然、バラバラなので、早い時期の予測から遅い時期の予測までを順番に並べ、ちょうど真ん中の時期の回答と4分の1の順番になる回答の時期と、4分の3の順番になる回答を計算し、それを一覧にして回答者に、再度、送付します。
 例えば、早い時期を予測する人はもう実現していると回答し、遅い時期の予測する人は永遠に実現しないと回答してきますので、前の4分の1と後の4分の1を切り捨てると、4分の1番目が2013年、中央が2020年、4分の3番目が2028年という数字になります。
 そうすると「他人の振り見て我が振り直せ」で、回答者はその数字をみて意見を終始えい、再度、返送します。その結果、2回目はそれぞれ2015年、2020年、2026年という結果になるという次第です。

 デルファイ法という名前の由来は、古代ギリシャにデルファイという都市があり、そこにある神殿の巫女(ミコ)が、大地の割れ目のうえに青銅の鼎(カナエ)を渡して座り、大地の霊気を吸って神託を聞いたという故事から名付けられたものです。
 いくつかの技術について、実現すると予測された中央値を紹介しますと、
   1)M7以上の地震が数日前に予測できる(2024年)
   2)ハッカーから機密が守られるネットワークが普及(2010年)
   3)がんの転移を防ぐ手段が実用化(2017年)
   4)一月2000円以下で150mbpsのネットワークを利用できる(2009年)
   5)炭酸ガス排出の国際規則が世界全体で合意される(2013年)

 次に早い時期に実現する技術と、なかなか実現しない技術を見てみたいと思います。
  早く実現すると予測される技術は
   1)世界のどこからでも通話可能な携帯電話の普及(2007年)
   2)DNA情報から新規のたんぱく質の機能を推定する技術が開発(2009年)
   3)太陽電池や燃料電池を使用する携帯コンピュータが実用になる(2010年)
   4)ディーゼル車の微量粒子状物質排出が10分の1になる(2011年)
  なかなか実現しない技術は
   1)高速増殖炉システムが実用化(2031年)
   2)超伝導ケーブルによる電力ネットワークの実用化(2029年)
   3)炭酸ガスの排出が1990年の20%減(2027年)
   4)M7以上の地震の予測(2024年)

 このデルファイ法はアメリカで開発された技術ですが、それを利用した大規模な科学技術予測を継続しているのは日本だけです。そのような意味ではもちろん価値がありますが、日本の科学技術政策を立案するのにも有益です。





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