TOPページへ論文ページへ
論文

 007シリーズ第14作『美しき獲物たち』(1985)はシリコンバレーを舞台にして、サンフランシスコ市庁舎での戦闘シーンや火災シーンがあるのですが、この市役所は1915年に完成した有名な歴史的建造物です。
 日本で例えれば、法隆寺でチャンバラ映画を撮影したというところです。
 これは当時のサンフランシスコ市長が、映画会社が市に多額の寄付をすることを引き換えに許可した結果、実現したもので、サンフランシスコの大変な宣伝にもなりました。

 一方、リドリー・スコット監督は『ブレードランナー』(1982)で新宿を舞台に撮影したかったのですが駄目で、『ブラックレイン』(1989)では大阪を舞台にして撮影したのですが、面倒な許可に腹を立てて、二度と日本では撮影しないと言ったといわれています。

 ところが外国では各都市にフィルム・コミッションという組織があり、映画の脚本を渡すと、それに使えそうな建物の使用を斡旋してくれたり、エキストラの手配をしてくれたりして、撮影に協力する体制ができています。

 そこで日本でも昨年12月に(旧)運輸省の観光政策審議会が「21世紀初頭における観光振興政策について」という報告書でフィルム・コミッションの設立を提案し、関心がもたれはじめました。
 神戸や大阪でも動きはじめていますが、東京でも今年4月20日に東京都に「東京ロケーションボックス」が設置されました。
 銀座でカーチェイス実現かという話題になりましたが、石原知事が乗り気でリュック・ベンソン監督、ジャン・レノと広末涼子主演の『WASABI』が第一号となり、それ以外にも数百の問い合わせがあるようです。

 なぜ映画の舞台にすることに多くの都市が熱心かというと、第一は経済効果です。ニューヨークでは毎年100本以上、カナダのブリティッュコロンビア州でも50〜60本の映画が撮影されていますが、ニューヨークでは常時7万人以上の雇用があり、年間5000億円程度のお金が落ちるし、ブリティッシュ・コロンビア州でも3万5000人、2200億円の経済効果があるようです。

 それ以外にも宣伝になるという効果があります。ハリウッド映画となれば世界で上映されますから、宣伝費用として換算すれば、膨大な金額です。
 日本でも、神戸、大阪、東京以外に、北九州市、横浜市、上田市、北海道でもフィルム・コミッションの設立が進行しており、昨年秋に開催された「フィルム・コミッション設立研究会シンポジウム」には37の自治体が参加しました。
 経済の余剰が文化を育てる時代から、文化が経済を牽引する時代が始まっていると思います。





designed by BIT RANCH / DEGITAL HOLLYWOOD
produced by Y's STAFF
Copyright(c) Tsukio Yoshio All Rights Reserved.