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論文

 アメリカのフロリダ半島の南半分はエヴァグレーズと言われる湿原地帯で、面積は九州と同じくらいあり、野生生物の楽園となっています。
 どのくらい楽園かというと、友人がエヴァグレーズの端に作られた「ドラール・ゴルフコース」(通称ブルー・モンスター)でゴルフをしていたところ、カートが斜面を下っていって池の中に入ってしまいました。そこで自分で取りに行こうとしたら、ワニがいるから駄目といわれ、フロッグマンを雇って取ってもらい、大変な費用がかかったという話があります。
 ゴルフ場の池に野生のワニがいるという環境なのです。

 このエヴァグレーズは、20世紀になって少しずつ開発されていきましたが、1947年にハリケーンによって大洪水が発生し、その再発を防ぐために3200kmの水路、90のダムが建設され、半分程度が干拓されて農地になってしまいました。
 ところが1990年代になり、かつて干拓のために掘削した水路を埋め戻し、もう一度、湿原に戻そうという工事が始まっているのです。

 日本国内でも、最近、そのような事例が出現してきました。
 北海道の根室海峡に注ぐ標津川は、湿原の中を蛇行していた川ですが、戦後、一帯を牧場にするために、河川を直線にして排水を容易にしてきました。その結果、蛇行していた部分が三日月湖になり、川の両側に多くの三日月湖が残されたままになっていました。
 そこで、昨年11月に、標津川流域懇談会が設置され、今後10年ほどかけて、三日月湖を本川に接続し、以前の状態に戻す計画の検討がはじまりました。
 釧路湿原の中を流れる釧路川についても、かつては水はけを良くするために蛇行していた部分を直線にしていましたが、以前の蛇行した川に戻す計画が始まっています。

 人間は発展するという期待で自然を人工の環境に変えてきましたが、社会の方向が転換して、再度、以前の自然を復元するという活動が世界各地で始まっているのです。





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