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論文

 今日は「ダム」について考えてみたいと思います。
 長野県の田中康夫知事の「脱ダム宣言」が記憶に新しいと思いますが、田中知事の脱ダム発言は唐突なものではありません。
 ダムを巡る動きを振り返ってみると
  1994 アメリカ開墾局ビアード総裁が「ダムの時代は終了」と発言し、1993年か2000年にアメリカでは450のダムの取壊しました
  1997 日本の河川法大改正が実施され、ダムの目的に従来の治水・利水に親水・環境保全を追加し、住民参加の河川行政へ変更されました
  2000 世界ダム委員会で世界銀行が「ダムが世界各地で広範な環境破壊と人的被害の原因」と発言しました
  2000 日本の河川審議会が「洪水と共生する治水」を提案しました
  2001年2月20日 田中知事の脱ダム宣言が話題になりました
  2001年3月6日 東北6県191市町村が参加する東北直轄ダム事業促進連絡協議会がダム必要発言をしました
  2001年3月19日 長野県議会が下諏訪ダム予算を復活させた予算案を可決しました

 このようなダム反対派の活動に対して推進派は、アメリカでは開墾局以外に陸軍工兵隊とTVAと州政府でダムを建設している
 日本には国土の特殊事情(10%の平野に人口の50%、資産の75%が集中)があるし、2000・9の名古屋市新川の氾濫では8500億円の被害が発生している
 国際比較すると日本のダムは不足している
  日本の全貯水量はフーバーダム一基の貯水量の2倍しかない
  1人あたり貯水量:アメリカ 536 立方メートル
           カナダ  647 立方メートル
           韓国   500 立方メートル
           台湾    68 立方メートル
           日本    32 立方メートル

 一方、ダム「反対派」の言い分には
  ダムにより水のない川が実現する
  河床の上昇により洪水が多発する
  土砂の流出阻止により海岸が浸食される(日本では毎年160ha減少)
  ミネラルが海に運搬されないので漁業が不振になる
などがあります。

 ダム建設の主要な目的の一つは水需要に対応することですが、日本では需要が停滞しています。1975年の水需要は300億トン(実績)で1990には500億トンになると予測されていたため600のダムを計画しましたが、水需要は増えず300億トンのままでした。
 洪水の阻止も重要な目的でしたが、石狩川では150年に一度の大雨で1万8000立方メートル/秒が流出と予測されていましたが、実際は200年に一度の大雨で1万2000立方メートル/秒しか流出しませんでした。
 吉野川でも330mmの降雨で2万4000立方メートル/秒の砂が流出すると予測されましたが、実際には578mmの降雨で1万1000立方メートル/秒しか流出しませんでした。

 このまま推進派と反対派の意見が平行線のままでは困りますので、解決策としてダム以外の方法(緑のダム構想(民主党)/遊水地の構築)も含めた治水方法の検討する案や管理者ではなく住民が決定する方法を導入するなどの提案があります。
 いずれにしても100年単位の構想が必要だと思います。





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