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論文

 インターネットが急速に普及してきましたが、この新しい技術をコミュニケーションという視点から見てみると4パターンに分けることが出来ます。

  ・1対1 例えば、情報の発信・受信が1対1の組み合わせでできるインターネット電話がこれにあたります
  ・1対n 例えば、1ヶ所から多くの人に情報発信するインターネット放送がこれにあたります。
  ・n対1 例えば、インターネットオークションのように、1ヶ所に多くの人から情報や意思を集中するサービスです。
  ・n対n 例えば、n人が相互に情報を受・発信するナップスターなどの音楽の検索・交換サービスが、これに相当します。

 このn対nの「ナップスター」についてご紹介したいと思いますが、インターネットがなぜ、このようなサービスを可能にしたのかが重要です。
 そもそも、音楽の検索・交換サービスとは、他人のコンピューターの保存されているデジタルデータにした音楽を自由に検索し、自分のパソコンに複写できるようにしたサービスです。
 ナップスターの場合、利用者は、同社の大型コンピューターにインターネットを通じて自分のパソコンを接続して好きな曲や演奏家を検索すれば、自動的にその曲を他人のコンピューターから自分のコンピューターに取り込めるサービスです。
 このナップスターは1999年、当時、大学1年生だったショーン・ファニングが音楽ファイル検索・交換ソフトを開発し、同年5月に、叔父のジョン・ファニングと共に設立したサービスです。

 ところが、そのナップスターに先日、停止命令が出されました。アメリカの北カリフォルニア連邦地裁が6日にレコード会社などの原告側が、著作権侵害の被害を明示した曲について、サービスを停止するよう命じる仮処分を出しました。
 問題の根底にあるのは、先ほども紹介したようにネット上で「データ交換」が簡単に出来るということです。
 データが著作権のある音楽データであれば、データ交換を希望する大衆同士の大規模な著作権侵害行為が簡単に行われる可能性がありましたが、ナップスターはこれをさらに容易にするシステムを作り上げたのです。したがって、ナップスターが直接著作権侵害しているというよりも、大衆の著作権侵害行為を助けるシステムを作ったということになります。

 ナップスターは今回の停止命令を受け入れることを表明しましたので、アメリカのレコード業界が99年12月に提訴して始まったネット時代の著作権の在り方を問う裁判は終息に向かうことになりました。
 停止命令とは、
  1)レコード会社などは、著作権侵害の被害が出ている曲名とその音楽家名、その曲が入っているデータファイル名などを特定し、ナップスターに提示する。
  2)ナップスターは提示後、3営業日以内にそのファイルを検索・交換できなくする。
  3)レコード会社は、発売前に新曲を検索サービス対象から除外するよう、ナップスターに要求できる。

 したがって、サービスの全面停止ではないため、ナップスター側は「存在自体の合法性は認められた」と主張しています。
 しかし、最大の「無料で曲を交換できる」という特徴を失うことになり、これからは有料に切り替える見通しです(今年夏から、月額5ドル)。
 ナップスターの利用者は、世界でおよそ6000万人いますが、有料化後は会員数は現在の1割にとどまると言われています。

 今回は音楽のデータについての問題でしたが、音楽以外にもネット上では、色々なデータが交換されていますから、他の分野でも、問題が発生しますし、ナップスターの場合も「抜け道」は存在しています。
  1)まず停止命令では、検索の際にレコード会社が指定した曲名や演奏家名を検出できないようにしましたが、実際に利用者が交換しているデータファイルの名前には、必ずしも元の曲名や演奏家名が含まれているとは限らないことです。
  2)また、元の曲名などを意図的に他の単語や違うつづりから成る「暗号」でデータファイルに名前を付けることで、著作権が有効な曲をこれまで通り自由に無料交換しよう、という提案もネット上には出ています。
 新しい技術が登場すると、新しい問題が出てくるという歴史の法則を証明する一例です。

(参考)ナップスターの概要

歴史:1999・1 ショーン・ファニング(大学1年 19歳)発明
        5 ジョン・ファニング(叔父)と企業(ナップスター)創設
12 加入者 1000万人
2001・2 加入者 6000万人(日本 数10万人)
       利用  1億曲/日=30億曲/月

影響:全米のレコード売上 350億ドル(=4兆2000億円)
          損失  30億ドル(=  3600億円)10%
シングルCDの売上 38・8%減少

裁判:サンフランシスコ地方裁判所
1999・12 全米レコード業界(RIAA)が著作権侵害でナップスター提訴
2000・ 6 RIAAがサービス停止仮処分申請
      7 サービス停止仮処分決定
サンフランシスコ高等裁判所
        ナップスターが高等裁判所に控訴
        仮処分の延期
2001・2・11 著作権侵害と認定/全面停止は範囲が広範すぎると差戻し
     2・13 ナップスターが和解提示
           10億ドル/5年(=2億ドル/年)
            大手5社 1億5000万ドル/年
            インディース 5000万ドル/年
2001・3・6  1)RIAAが著作権侵害曲を指定
          2)ナップスターは72時間以内に削除
          3)新曲は最初から削除

今後:有料化 3〜5ドル/月(曲数制限あり)
6〜10ドル/月(プレミアム会員:曲数制限なし)
地下化 グヌーテラ/スプルージュ/コンスパイヤ/ウィンMX/トードノード
    ミュージックシティ・コム/ライムワイヤ
見直し 著作権法の見直し

上記裁判はアメリカのレコード会社制作のレコードのみ対象であり、日本では最初から違法。





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