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論文

 今日はアメリカで話題になっている「Z世代(ジェネレーションZ)」についてご紹介したいと思います。
 アメリカでは以前から特徴のある世代に名前をつける習慣があります。
 第一次世界大戦を経験して従来の社会体制に懐疑的になった世代は「ロストジェネレーション(失われた世代)」、その時期に生まれた子供たちは「ビートジェネレーション」と名付けられるなど有名な世代があります。
 戦後だけに限ってみると、第二次世界大戦から復員した兵士が1945年から1960年くらいまでに作った子供の世代は「ベビーブーマー」と言われ、それ以後の1960年から1975年くらいに生まれた世代は「X世代」、さらにベビーブーマーが成人になって1975年から1995年くらいまでに生んだ子供たちの世代は「Y世代」もしくは「ミレニアル世代」と言われてきました。
 そして最近話題になりはじめたのが1995年から2010年くらいまでに生まれ、現在、10歳から25歳くらいになっている世代で、これが「Z世代」とか「ポスト・ミレニアル」と名付けられているのです。

 ミレニアル世代(Y世代)が物心つきはじめた時期はパーソナルコンピュータが登場し、しばらくするとインターネットも利用可能になり、それらを子供の頃から使う最初の世代だったので、別名「デジタル・パイオニア」と名付けられています。
 次のZ世代になると、生まれた時からパーソナルコンピュータもインターネットも利用可能でしたから「デジタル・ネイティブ」と名付けられています。
 しかもインターネットの料金が急速に低下してきたため、常時接続(コネクテッド)で利用できるようになり、さらに2005年に「ユーチューブ」、2007年に電子書籍の「キンドル」が登場したため、テレビジョンよりは「ユーチューブ」、書籍よりは「電子書籍」、CDよりは「アップルミュージック」などの音楽サービス、「フェイスブック」よりは「インスタグラム」や「スナップチャット」を利用する傾向にあります。
 使用する端末装置も2007年に「アイフォン」が発明されたため、パーソナルコンピュータから携帯端末が主流になりました。
 このZ世代に大きな精神的影響を与えたのが、2001年9月11日の同時多発テロ事件や2008年5月から始まったリーマンショックで、それらの事件によって親の世代が苦労した姿を見てきたため、社会への関心が非常に強い世代になっています。

 Z世代は世界の人口の4分の1の20億人、アメリカでも4分の1の8600万人が存在するので、大きな影響力を発揮しています。
 どのような影響力があるかを何人かのZ世代の若者を通して眺めて見たいと思います。
 昨年(2018)2月にフロリダ州パークランドの高等学校での銃乱射事件により17名が犠牲になる事件がありました。
 その事件のときの生存者の生徒の一人デビッド・ホッグは当時18歳のZ世代でしたが、事件翌日から毎日のようにテレビジョン番組に出演し、全米ライフル協会(NRA)や、そこから政治献金を受け取っている政治家を批判するとともに、銃規制の強化を訴え「アメリカで最も影響力のある10代」と言われてきました。
 昨年、ハーバード大学に合格して政治学を勉強し、25歳で被選挙権を獲得したら下院議員に立候補すると表明しています。
 彼のツィッターには100万人のフォロワーが存在し、その後ろ盾もあって筋金入りで、昨年、いくつかの大学を不合格になったとき、保守系のテレビ局フォックスニュースのアナウンサーが「不合格になったので、めそめそと愚痴をこぼしている」とツイッターで発信したところ、彼は番組のスポンサー企業の名前を公開して広告を中止すべきだと反論したところ、何社かがスポンサーを降りたため、アナウンサーが謝罪するという騒ぎがあったほど力を発揮しています。

 もう一人、1996年生まれで23歳というZ世代のハリウッドの女優でテレビジョン番組の司会もしているリザ・コッシーを紹介します。
 テキサス州のヒューストンで生まれ、ヒューストン大学に入学しましたが、途中で退学してハリウッドに行き、喜劇映画などに出演するとともにユーチューブに番組を持ち、1600万人のフォロワーを持つほどの人気者になりました。
 しかし単なる喜劇俳優ではなく、前回(2016)の大統領選挙の時にはオバマ大統領を自分のユーチューブ番組に招いて、国民が投票の登録をするように訴えるという政治活動をしています。
 またロサンゼルスの宝飾会社と協力してホームレスであった人々を雇うという社会事業もしています。

 日本のZ世代はどうかと気になりますが、アメリカほどではないにしても頑張っている人はいます。
 関西学院大学を卒業した現在29歳の坂野晶(あきら)さんはモンゴルやフィリピンで仕事をして帰国してから、木の葉を売って有名になった「いろどり」という会社のある徳島県の山奥にある人口1500人の上勝町(かみかつちょう)に移住、ゴミを徹底して分別して減量する「ゼロ・ウエイストアカデミー」の理事長をしていますが、今年1月にスイスで開かれたダボス会議では、世界銀行総裁やマイクロソフトのCEOなどとともに、各国の政財界の首脳が集まる会議の運営進行役に任命されています。

 21歳でZ世代の川本亮(りょう)さんは東京大学医学部の学生ですが、夏休みにカンボジアに行った時に首都プノンペンの不衛生な状態を解決できないかと考え、「アメリカミズアブ」というアブの幼虫が生ゴミを餌にしてバクテリア以上の速度で分解することを利用して幼虫を育て、その幼虫をニワトリやブタの餌にする循環システムを考え、カンボジアで生ゴミの分解の実験をし、成長した幼虫は粉末にして沖縄の養鶏場で実際に餌として成功しています。
 将来は「国境なき医師団」の医師になるつもりですが、坂野さんと同様、学生時代から社会問題に挑戦する活動をしています。
 スマートフォン世代でユーチューブやインスタグラムが好みというと浮ついた感じがしますが、若い時代から社会の問題を解決しようという意識を持ったZ世代が次々と登場し、社会が大きく変化していることを実感します。





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