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論文

 2ヶ月以上前になりますが、インターネットサービス会社の「楽天」が社員の社内で使う言葉を英語にすると発表し、ユニクロを展開する「ファーストリテイリング」も2012年3月からは英語を会社の公用語にする方針を発表しました。
 楽天では社内食堂のメニューはすでに英語になっていますし、グループ企業の楽天銀行では、お互いに呼びかけるときに愛称を使うことにし、アッピーとかミッチーという愛称が社内を飛び交っているそうです。
 2年後には英語の試験であるTOEICの点数が990点満点のうち650点以上取らないと管理職に登用されないということなので、楽天の本社のある品川周辺の英会話学校は自腹で勉強に来る社員で溢れているようです。
 楽天の現在の売上のうち海外比率は1桁ですが、将来は70%にするという目標を掲げていますから、英語を会社の公用語にするのは妥当な方針だと思いますし、ユニクロも世界各地に店舗を展開していますから、これも当然だと思います。

 そこで今日は日本人と英語について考えてみたいと思います。
 最初に英語の影響力ですが、世界で英語を母国語として話している人口は5億1000万人で、中国語の13億人に次いで2位です。
 参考までに日本語を母国語とする人口は1億3000万人で世界の11番目です。
 英語が意外に少ないと思われるかも知れませんが、第二言語として使うことのできる人口は約4億人と推定されており、合計すれば9億人以上で、中国語には敵わないものの、世界第二の言語です。

 ところがインターネットの登場が英語を圧倒的に重要な言語に変えました。
 2010年の調査で、インターネットを英語で使用している人々は5億4000万人で、全体の27%にもなり、中国語の23%、スペイン語の8%を上回っています。
 これも参考までに、日本語でインターネットを使用している人数は9900万人で、世界では4番目です。
 またウィキペディアは現在ではなくてはならない情報源になっていますが、今年の7月の時点で、英語で書かれた項目は約340万あり、ドイツ語の112万、フランス語の98万を大きく上回っています。

 日本語は残念ながら70万項目で、世界の6番目です。
 しかし、さらに衝撃的な事実があります。風力発電のことを調べようとして、グーグルに日本語で「風力エネルギー」をキーワードとして検索すると29万項目がヒットしますが、英語のウィンドエネルギーで検索すると1740万、ウィンドパワーで検索すると5360万がヒットします。
 内容はともかく、英語であれば250倍の情報が得られるということです。
 したがって、海外を相手に仕事をする人や、インターネットで情報を入手する必要がある人にとって、英語は必須の手段ということになります。

 そこで、日本人の英語能力はどうかということを調べてみます。
 国際的な英語力の試験にTOEFLがありますが、この成績の各国比較があります。
 2008年の成績ですが、日本人の成績は66点で何と136位です。しかもアジア域内だけを比較しても、30カ国中27位で、日本より下にあるのはラオス(59点)、カンボジア(65点)、マカオ(66点)という状態です。
 もちろん、この順位をそのまま受け取るのは正確ではなく、1位のシンガポール(100点)、2位のフィリピン(88点)は英語を公用語としていますし、同じく2位のマレーシア(88点)も英語が日常的使われている国ですから、成績が良いのは当然です。
 また、北朝鮮は72点で日本より高得点ですが、TOEFLの受験には100数10ドルが必要なので、優秀な人間しか受験しませんが、日本は大学受験や入社試験でTOEFLの受験を義務にしているところが増えているので、毎年、10万人以上が受験しますから、必ずしも全体の成績が上がらないという事情があります。

 しかし、日本人が国際社会で活躍するためには、英語だけではない問題があります。
 それは、そもそも日本人が国際交流に意欲的ではないということです。
 世界各国の大学で、学生のうち留学生が何%を占めているかというユネスコの調査(2007)がありますが、日本は1%で世界の25位です。
 1位のオーストラリアは10%、2位のニュージーランドは8%ですから、日本の大学に居ると、英語を使う機会が少ないということになります。
 逆に海外に留学する学生の比率も1%で世界の41位で、シンガポールの4%(5位)や韓国の2・2%(10位)と比べると少ない状態です。
 さらに、2007年に産業能率大学が新入社員に海外赴任を命じられたらどうするかと質問したところ、31%が拒否、36%が仕方なく従うと答えたという結果になりました。
 何と3分の2が海外には行きたくないというわけです。

 日本が生活しやすい国だということかも知れませんが、英語が苦手という背景も影響していると思います。
 もちろん、生涯に海外旅行を1回するかしないかという人が英語を無理に学ぶ必要もありませんし、「論語読みの論語知らず」で、流暢な英語を話しても中身がなければ意味がありませんが、若い世代は英語を身につけて国際社会で活躍してほしいと思います。





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