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論文

 日本漢字能力検定協会が主催して国民からの投票で選ぶ今年の漢字は「変」が選ばれましたが、オバマ次期大統領の合い言葉「チェンジ」、すなわち変革の「変」というよりは、日本の場合「どこか変だよ」の「変」といったほうがふさわしいと思います。
 それでは「どこが変か」というと、今年もといったほうが良いかも知れませんが、企業の経営陣が記者会見をして深々と頭を下げる光景を何度も見てきましたし、官庁の責任者が釈明の会見をする光景も見飽きるほどでしたが、ここに象徴されていると思います。

 このような状況を世界規模で評価しているトランスペアレンシー・インターナショナルというNGOがあり、その日本支部トランスペアレンシー・ジャパンが毎年12月に日本の「10大汚職腐敗」を発表しています。
 これは2003年12月9日に「腐敗の防止に関する国際連合条約」が署名されて成立したことを背景にした活動です。
 新聞や雑誌が今年の10大ニュースを発表している時期ですが、今日は、やや暗い話で申し訳ありませんが、この10大汚職腐敗からいくつかを取り上げて、どこか変な日本を振り返ってみたいと思います。

 1位には「厚生年金改竄問題」が選ばれています。昨年は国民年金の記録が杜撰で約5000万人分の記録が消滅していたという衝撃的な事件があり、昨年の汚職腐敗の2位に選ばれていましたが、今年もかという事態です。
 今回の問題は標準報酬月額が本人の知らない間に引き下げられていたということです。
 保険料は本人と企業が折半で支払うのですが、景気の悪化で保険料の滞納が増えてきました。そこで徴収率増大を至上命題とする社会保険庁が帳簿上の金額を減らして、徴収件数が増えたように見せかける姑息な手段です。
 これは保険料が支払われる時期になって、本人が見込んでいた金額が振り込まれないという事態になり、退職後の人生設計が狂ってしまうほどの問題です。
 国家権力は一定の周期で国民の蓄積を搾取する仕組だといううがった見解があります。
 日本では1868年の明治維新によって商人などの蓄財が消滅し、それから終戦によって国債が紙屑になりましたが、それから60年近く経過した現在、このような方法によってまたもや搾取するのかと疑いたくなる事態です。

 この官や公といわれる組織の劣化は顕著で、3位に挙げられた官製談合、4位に挙げられた大分県教員採用・昇任汚職、6位の地方自治体の裏金作り、7位の居酒屋タクシーと運転業務談合、9位の文部科学省汚職と、1位を含めて6件が官の腐敗ですし、2位の三笠フーズの汚染米不正転売なども農林水産省の検査が杜撰だったという側面も問題だったということですから、7件にもなります。
 これは政治課題となっている天下り問題とも密接な関係があり、談合や汚職には退職した役人が天下っている企業に配慮するということが見え隠れしています。
 この背景には、公務員という職業を錯覚している公務員が増えているということではないかと思います。
 英語ではパブリック・サーバントと呼ばれ、国民や地域住民に奉仕する下僕なのですが、明治以来、役人は御上という意識が国民に受け入れられたために、偉いのだと錯覚するようになってしまったのだと思います。
 いつの時代から言われているかは分かりませんが、天下りという言葉自体が官庁や役人のほうが一般国民や民間企業上だという意識を象徴していると思います。

 そのひとつの証拠になると思いますが、トランスペアレンシー・インターナショナルが世界の180カ国を対象に、それぞれの国の汚職腐敗の程度を10点満点で採点して発表しています。
 日本は7・3点でベルギーやアメリカと並んで良い方から18番目です。
 180カ国中18番というのは、辛うじて上位10%だから成績でいえば優良可の優ということかも知れませんが、下位には発展途上国などで賄賂が日常的に行われている国が多数ありますから、それほど褒められた順位ではないと思います。
 上位はどのような国かというと、デンマークとニュージーランドとスウェーデンが9・3点で1位、4位がシンガポールで9・2点、5位は9点でフィンランドとスイスになっています。
 これら上位の国々に共通しているのは、情報公開が進んでいる、すなわちトランスペアレント、透明な国ということです。
 スイスのIMDという組織が世界の数千名を対象としたアンケートで、政府の政策に透明性があるかどうかを調査していますが、2008年の結果では、上位からデンマーク、シンガポール、スイス、ニュージーランド、スウェーデンで、見事というほど、腐敗や汚職の少ない国と一致しています。
 そして日本は残念ながら37位です。

 もうひとつ、金融制度が透明かという評価もありますが、これも上位からデンマーク、シンガポール、チリ、ノルウェイ、ルクセンブルグで、日本は36位です。
 日本の行政の心得は、孔子の「依らしむべし、知らしむべからず」という言葉を曲解して、国民には情報を教えないことだと揶揄されることがあります。
 しかし、情報公開は官庁などが自発的に行う訳ではなく、国民が要求して行く必要があります。
 ぜひ来年は社会を透明にして明るい地域や国家に変化していくようになればと思います。





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