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論文

 明日8月1日は「水の日」「麻雀の日」「花火の日」「洗濯機の日」など、色々な記念日に指定されていますが、「観光の日」にも指定されています。そして1日から7日の1週間は「観光週間」にもなっています。
 これは1965年に内閣府(当時の総理府)が定めた記念日ですが、やはり日本が諸外国に比べて観光の分野で出遅れているということから定められたものです。
 これまでは観光の重要さを国民に宣伝する行事が中心でしたが、2006年には「観光立国推進基本法」が制定され、政府が「観光立国推進基本計画」を策定することが義務づけられ、今年の10月1日から観光庁も設置されることになりました。
 日本の観光が出遅れているという話は以前させていただいたので、今日は日本の観光にとってなくてはならない「土産物」について、ご紹介したいと思います。

 2007年にgooが行ったアンケート調査で「全国の好きな土産物ランキング」があり、順位は
  1)白い恋人(北海道)
  2)八つ橋(京都)
  3)長崎カステラ(長崎)
  4)うなぎパイ(静岡)
  5)マルセイバターサンド(北海道)
となっており、お馴染みの土産物が上位に並んでいます。
 2006年に全日空商事が国内の37の空港にある商店「ANA FESTA」での売上をもとにランキングを発表していますが、
  1)白い恋人(北海道)
  2)マルセイバターサンド(北海道)
  3)ロイズのチョコレート(北海道)
  4)明太子(福岡)
  5)チーズオムレット(北海道)
となっており、北海道が上位を占有という状態です。
 ちなみに20位までを調べてみても、「ジャガポックル」「ストロベリーチョコ」など、北海道の土産物が9品目で他の地域を圧倒しています。

 そこで2つのアンケートで首位となっている「白い恋人」について、人気の秘密を調べてみたいと思います。
 昨年から今年にかけて、食品について賞味期限の改ざんや外国産を国内産と偽装するなどの問題が頻発していますが、この「白い恋人」も昨年夏の観光シーズンに賞味期限の改ざんが発覚し、商品を回収、社長が辞任、11月まで販売を自粛という事態になりました。
 ところが、保健所の了承により、11月になって1日40万枚の生産を再開したところ、札幌の百貨店や空港の売店で売り切れになり、50万枚の増産になるほどの売れ行きで、改めて人気を証明した結果になりました。
 この「白い恋人」の登場の背景には、1968年に現在は六花亭となっている帯広千秋庵が発売した「ホワイトチョコレート」が存在しています。
 これがアンノン族と呼ばれた女子大生やOLの北海道旅行ブームのときの土産物として全国に広まりました。
 その人気に目を付けた社長が、食べるときに手が汚れない商品という発想で、クッキーでホワイトチョコレートを挟んだ商品を思いつき、1976年に発売したのですが、北海道限定販売にし、さらに全日空の「でっかいどうほっかいどう」キャンペーンのときに機内で配られ、大人気になったというわけです。

 北海道だけでは不公平なので、gooのアンケートで4位と検討している浜松の「うなぎパイ」も人気の秘密を調べてみたいと思います。
 これは日本が高度経済成長で元気であった1961年に、浜松名物のうなぎを題材にして開発された菓子ですが、3年後に東海道新幹線が開通したことが大きく影響しています。
 浜松にはヤマハ、河合楽器、ローランド、ホンダなど大企業が集中しており、多数のビジネスマンが新幹線で訪れ、帰りの土産に買っていったのが「うなぎパイ」だったのですが、もう一つ、人気の出た理由があります。
 これを売り出すときのキャッチフレーズが「夜のお菓子」で、製造している春華堂の二代目社長が「家族が揃う夜の団らんのひととき、家族全員で食べてほしい」という願いで考えたといわれていますが、なかなか意味深長です。
 当初の包装は浜名湖を連想させる青色の箱だったのですが、なかなか売れ行きが伸びませんでした。そこで当時、人気のあった強壮剤マムシドリンクに似せて、赤色と黄色の包装にしたところ、一気に人気が出たということです。

 外国にも土産物を買う風習はないわけではありませんが、出張した社員が会社の同僚に土産物を買ってくるというのは日本独特の特徴で、これには長い歴史があります。
 「土産」という言葉の語源は諸説ありますが、その一つに「宮笥(みやけ)」説があります。これは伊勢神宮でもらうお札を貼る板のことだそうですが、江戸時代の「お伊勢参り」が盛んな頃、集落の代表として餞別をもらって伊勢神宮に参拝した村人が、参拝の証拠として買ってきたものだというわけです。
 現在では出張は意外に厳しい仕事ですが、まだ海外旅行はもちろん、国内旅行も多くなかった時代には、うらやましがられながら出張し、そのお詫びに買ってきたというような事情もあると思います。

 2007年の『観光白書』によると、日本の観光の産業規模は宿泊旅行で16兆円、日帰旅行で5兆円など合計して24兆4000億円です。
 一方、土産物店は全国に1万店以上あり、そこでの売上は3200億円程度ですが、それ以外の場所でも当然、土産物は買われているので、2兆円にはなるという推計もあり、観光産業の8%にもなっています。
 出張のたびに同僚に土産物を買い、家族旅行のたびに隣近所に土産物を買うというのも結構、面倒ですが、日本の伝統ある風習であり、地域の産業発展にも重要だと思いますので、この夏休みに帰省されたり、旅行されたりする方々も、ぜひ土産物を忘れないようにしていただければと思います。





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