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論文

 今年1月、神田うのさんが新婚旅行でドバイに行ったなど、ドバイという地名が話題になることが多いということで、今日はドバイについてご紹介したいと思います。
 我々の年代でドバイというと、1973年7月20日に発生した日本赤軍による日本航空機のハイジャック事件を想い出します。
 これはパリ発、アムステルダム、アンカレジ経由で羽田空港を目指していたJAL404便をパレスチナ解放戦線と日本赤軍の混成部隊がハイジャックし、ドバイ国際空港へ強制着陸させた事件でした。
 ところが当時の日本人はドバイという地名にはまったく馴染みがなく、外務省にもほとんど情報がなく、第一報は現地の日本の商社の駐在員からという状態でした。
 ところが最近では、中部国際空港と関西国際空港から毎日、ドバイへ直行便が飛んでおり、若い女性の行きたい旅行地の上位に挙がるなど、注目されています。

 そこでまずドバイの位置からご紹介しますと、アラビア半島の北側のペルシャ湾を挟んでイランと面した場所に7つの首長国から構成されるアラブ首長国連邦(ユナイテッド・アラブ・エミレーツ)という国がありますが、その一つがドバイです。
 アラブ首長国連邦の首都は人口190万人のアブダビで、2番目が人口140万人のドバイです。面積は3900平方キロメートルで埼玉県とほぼ同じです。
 アラビア半島といえば、当然、産油国を想像されると思いますが、現在、日産10万バレルですから、サウジアラビアの日産1000万バレルに比べると1%程度で主要な産油国ではありませんし、埋蔵量もそれほどではありません。
 現在、ドバイが注目されているのは、世界の建設用クレーンの3分の1が集まっているといわれる建設ラッシュです。
 何が建っているかというとホテルで、2006年1月には100強のホテルがドバイにあったのですが、今年中には180以上になるという勢いです。
 そして来年6月に完成予定の世界一の高い建物「ブルジュ・ドバイ」が建設中の場所も、その名前の通りドバイというわけです。

 なぜこれほど発展しているかというと、1990年に亡くなられた元首シェイク・ラーシドと、その跡を継いだ三男で現在の首長シェイク・ムハンマドのリーダーシップだと思います。
 現在の元首であるシェイク・ムハンマドは石油の限界を見極め、その資金を活用して世界の交流拠点を目指して次々と戦略を実行してきました。
 第一に海と空の交流拠点とするために、漁港しかなかったドバイにジュベルアリ港という大型港湾を整備して、そこを自由貿易地区に指定しました。
 そこに立地した企業には50年間、法人税を免税、利益を本国に送金することも自由とした結果、現在、5500社の企業が立地するようになりました。
 空については国際空港を建設すると同時に、1985年にエミレーツ航空を設立しました。当初は航空機2機だけでしたが、現在は100機も保有し、発注している航空機は107機にもなります。それらを駆使して、60カ国、95都市に航空便を就航させています。
 ちなみに日本航空が保有する飛行機は276機で、33カ国、213都市に就航していますから、規模が想像できると思います。
 そして空港の利用客数は2006年で2870万人ですが、これは新東京国際空港の3400万人に接近した数字です。
 さらに現在、20年先を想定して、新東京国際空港の面積の10倍に相当する1万ヘクタールの敷地に4500メートルの滑走路を6本ももつ空港を建設中ですから、世界有数の飛行場を持つことになります。
 この交通の便利さを生かして観光も推進しており、2006年の外国人観光客数は644万人で、日本の673万人に匹敵する規模になっています。

 埼玉県程度の面積の砂漠の国に、それほど多数の観光客が集まる理由は世界一をたくさん用意したからだと思います。
 まずゴルフですが、都市の中に4カ所のゴルフコースがあり、とりわけ中東で初めてできた芝生のある「エミレーツ・ゴルフコース」は世界のベスト20に入るゴルフコースで、毎年「ドバイ・デザート・クラシック」が開催されることで有名です。
 また、アラブと言えば名馬の産地ですから競馬も盛んで、3月に開催される「ドバイ・ワールドカップ」は世界最高の優勝賞金でも有名です。
 また、かつて船橋市に「ザウス」という屋内スキー場がありましたが、それを大規模にした世界一の人工スキー場「スキー・ドバイ」も用意されています。

 何と言っても世界の人々を集めているのは立派なホテルです。世界で有名なホテルチェーンで立地していないホテルはないと言われるほどですが、あっと驚くようなホテルが揃っています。
 もっとも有名なホテルは海岸から280メートル沖合の海上に建設された「バージュ・アル・アラブ」、通称「アラビアンタワー」といわれるもので、ホテルとしては世界最高の321メートルの高さで、途中の212メートルの位置にはヘリポートもあります。
 部屋も最高の部屋は780平方メートルですから、日本の住宅7、8軒分という豪勢さです。
 その海岸側には運河を張り巡らした中にいくつかのホテルがある「マディナ・ジュメイラ」というホテル群もあります。
 もう一つ、世界の話題になっているのが、ペルシャ湾内に埋め立てて作られている別荘地です。上空から見ると多数の島からできた、縦6キロメートル、横9キロメートルの世界地図の形をした埋め立て地が作られ、別荘地として販売されていますが、大人気だそうです。

 もちろん問題がないわけではなく、この急成長を支えているのはインドやパキスタンからの出稼ぎの人たちですが、低賃金のためにストライキも発生していますし、都市の急速な膨張のために電気、水道、道路などの都市基盤も十分ではなく、交通事故の発生は中東で最多ではないかとも言われています。
 しかし、一面の砂漠の中に、一気に人工の楽園を創り上げ、国家の将来を託している構想力には見習うべきものがあると思います。





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