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論文

 1997年に京都で開催されたCOP3(第3回気候変動枠組条約締約国会議)で採択された「京都議定書」で、日本は1990年の排出量を基準にして二酸化炭素を中心とする温室効果ガスを6%削減するという約束をしましたが、今年から2012年までの5年間で、その目標を達成しなければなりません。
 しかし、実際には経済がやや上向きになったことも影響し、現在は1990年よりも6・4%も二酸化炭素の排出が増えているため、6%+6・4%の合計12・4%を削減するという大変な課題になっています。
 また、今年7月には北海道の洞爺湖でサミットが開かれ、その中心の議題が地球温暖化対策ですから、それまでに目標達成の目処をつけないと議長国として示しがつかないことにもなります。
 現状では、排出量取引によって、他国が目標以下に削減した余剰を金銭で購入して辻褄を合わせることが必要で、現在のところ8%程度は、そのような外国から購入した排出量で削減することになりそうです。

 しかし、それだけでは芸がないということで、日本が誇る技術を駆使して減らそうということも検討されています。
 今月5日に洞爺湖で「地球温暖化問題に関する懇談会」が、福田総理大臣、甘利経済産業大臣、鴨下環境大臣も出席して開催さ、私も出席しました。
 その後で「国民対話集会」も開かれ、その席で甘利大臣が2012年までに白熱灯を止めて電球型蛍光灯に変えることを推進する制度を用意するという発言がありました。
 電球型蛍光灯というのは白熱灯と同じような形をして、そのソケットにはめ込むことの出来る蛍光電球です。
 これは日本が最初に発案したものではなく、オーストラリアでは2010年までに白熱灯の販売を禁止する方針を発表していますし、アメリカのカリフォルニア州でも2012年までに電球型蛍光灯への転換を促進する法律を準備しています。

 これはなかなか良い方法で、経済的に得をしながら環境へも貢献できるのです。現在、15Wの電球型蛍光灯は60Wの白熱灯とほぼ同じ明るさを提供してくれます。
 ところが、電気屋さんに行くと白熱灯は100円くらいで売っていますが、電球型蛍光灯は1000円くらいするので、何となく損をするような気持ちで買いそびれてしまいます。
 しかし、電球の寿命が6倍以上あるので、1年間使うと、白熱灯の場合は1個につき電気代と電球の償却代の合計で2000円くらいになりますが、電球型蛍光灯は700円くらいで済むので、1年間で1300円の得になり、1年も経たないうちに電球代も回収できることになります。
 また、以前、御紹介したことがありますが、この10年ほどの家庭電化製品のエネルギー節約は目覚ましいものがあり、過去10年で大型テレビジョン受像機では5分の1、冷蔵庫では3分の1、洗濯機では2分の1ほどになっています。
 そこで、仮にすべて10年前の製品を大事に使っておられる家庭が、すべてを最新の製品に買い換えたとすると、電気使用量を60%も減らすことが出来るという計算結果になります。
 これは途中の計算を省略しますが、二酸化炭素の排出を3%程度は減らすことになります。
 しかも、普通の家庭で年間の電力料金が15万円程度とすると、9万円が節約できることになるので、何年かで製品を購入した費用も回収できるということになります。

 さらに大きな貢献をする方法が4月10日に総務省から発表されました。
 私が座長をする「地球温暖化問題への対応に向けたICT政策に関する研究会」が半年間でまとめた成果です。
 ちなみにICTは、以前はITと言われていた名前の新しい名称で、インフォメーション・アンド・コミュニケーション・テクノロジー、すなわち、情報通信技術のことです。
 この研究会では2012年まで徹底してICTを利用すると仮定して、1990年に比べて5・4%の二酸化炭素を削減できるという計算結果を発表しています。
 ただし、そのためにはコンピュータの普及を図り、また使用時間も増えるので、増加分が2・4%となり、差し引き3%の削減というのが結論です。
 その内訳を大きい順番で紹介すると、企業がサプライチェーンマネージメントを徹底して、物流を合理化することが全体の28%、製品や部品をリユースすることが18%、個人がオンラインショッピングでモノを買うことが10%、ITSを利用して渋滞で燃料を無駄に使わないようにすることが6%などになっています。
 照明を電球型蛍光灯にすべて換え、家庭電化製品を新しい製品に換え、そして情報通信で置き換えることのできる仕事や生活は徹底して情報通信で行えば、6%という当初の京都議定書の削減目標は達成できることになりますし、重要なことは不便を忍ぶとか苦労するという必要がなく、むしろ便利になって、そのうえ削減が可能になるという点です。

 このようにして排出量の購入と先端の技術を利用することによって2012年は乗り切ることができそうですが、次に待ち構えているのが、昨年のハイリゲンダムサミットで安倍前総理大臣が提言し、福田総理大臣も引き継いでいる「美しい星50(クールアース50)」です。
 これは2050年までに現状の半分まで温室効果ガスを減らすという遠大な目標です。
 しかも現在のままの生活様式や産業構造を続けると、2050年には現在の2・4倍に温室効果ガスの排出が増えている可能性があるので、2050年に予想される量の5分の1程度にするという気の遠くなるような目標です。
 しかし、その程度の努力をしなければ、地球温暖化は回避できないということで、本当に真剣に取り組まなければいけない人類の大挑戦だということです。





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