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論文

 今週7月1日から1週間は郵便番号週間です。日本で郵便番号制度が導入されたのが1968年7月1日なので、それを記念したわけですが、すでに40年の歴史があるという制度になりました。
 30年経った1998年2月に現在の7桁になりましたが、当時は主要な地域が3桁で、地方になると下に2桁を追加して5桁という時代でした。
 この郵便番号は郵便物の量が増えて、その処理を迅速に行うという目的で導入されたものですが、最近、郵便物の量が減りはじめました。

 日本の官営の郵便制度は明治4(1871)年4月20日に始まりましたが、さすが官営で統計がすべて残っております。
 その最初の年は年間100万通でしたが、1900年には7億4000万通、1950年には34億7500万通、2000年には261億1400万通と増えてきました。130年間で2万6000倍も増えたということです。
 ところが2001年に262億1600万通で頂点になり、それ以後は減っており、2005年には226億6600万通となって、最大のときよりも35億5000万通、14%も減ってしまいました。
 これは1日に1000万通近い減少ですから、今年の10月1日から民営になる郵便事業にとっては重要な課題です。

 これは日本だけの問題ではなく、世界各国に共通するもので、各国の世帯当たりの配達数を調べてみると、最も郵便利用が多いスイスは1990年に年間約2000通で最大、アメリカは2000年にやはり2000通弱で最大、以下、スウェーデンは1995年、フランスは2000年、ドイツは2000年と軒並み世紀の転換期前後で頂点に到達しています。先進諸国で増えているのは唯一イギリスだけという状態です。

 その背景にあるのは当然ですがインターネットの普及です。インターネット内部の通信状態はなかなか把握できませんが、アメリカのIDCという調査会社によると、現在、1日に世界全体で970億通程度のメールのやりとりがあると推定されています。
 世界のインターネット利用者数は8億人程度といわれていますから、平均すると1人が1日に120通ほどのメールをやりとりしていることになります。
 そうなれば当然、郵便は減ることになり、僕の経験でも、若い人に限らず最近は礼状がインターネットで来ることが多くなっています。

 これは技術革新による社会の大きな変化で、止まることはないと思いますが、問題はスパムメールとかジャンクメールとか迷惑メールいわれる不要なメールが大量に送られて来ることです。
 先程ご紹介したIDCの調査では、1日970億通やりとりされているメールのう40%に相当する400億通はスパムメールと推定されていますし、アイアンポート・システムという調査会社の推計では2005年には1日300億通であったスパムメールが年後には550億通に増えたということですから、1日に400億から500億通の不要なメールが飛び交っていることは確実だと思われます。
 また、ウィルスリストという調査組織はメール全体のうち、スパムメールが75%、エラーメッセージが11%、ウィルスなどマルウェアといわれる内容が4%で、本来のメールは10%程度だと推定しています。
 これは不要な情報を受け取って不愉快だということ以上に、経済損失が馬鹿にならない規模になってきたという問題があります。

 最近は不要なメールを選別するソフトウェアも進んできましたが、それでもスパムメールを消去するのには一通につき5秒程度の時間を浪費します。
 そうすると500億通の不要なメールを消去するために、世界中の人が浪費している時間は、年間250億時間にもなり、1人の人間が年間2000時間働くとすると、毎日1270万人の人が本来の仕事をしないでメールの消去だけをしているという計算になります。
 この人たちが年間1000万円の生産をするとすれば、127兆円の損失ということになり、これは世界の経済生産の4%に相当しますから、最早無視できないということです。

 そこで各国が法律を制定して取締を開始しています。
 アメリカでも2003年10月に上院でスパムメール禁止法を全会一致で可決し、最高100万ドル(約1億2000万円)の罰金を課すことが決まっています。
 韓国もスパムメールを送信する業者に懲役刑か罰金刑を科す法律が成立しており、すでに2002年に6社に40万円から50万円の罰金を課しています。
 香港では来年1月から法律が施行され、違反者は最長5年の懲役刑か最高1600万円の罰金刑が科せられることになります。
 しかし、世界の話題になったのはオーストラリアです。オーストラリアでは2005年にスパム規制法が制定され、昨年10月には年間2億通のスパムメールを発信した企業と責任者に約5億円の罰金を課しました。

 そこで、日本ですが対応するのは平成14年に改正された「特定商取引に関する法律」で、本人から請求がないのに送付する広告メールには発信者のメールアドレスを明記し、表題に「未承諾広告」と掲げることが義務付けられています。そして悪質な違反の場合は100万円以下の罰金、業務停止命令にもかかわらず違反すると300万円以下の罰金か2年以下の懲役になります。
 どのような技術にも陰の部分はあります。郵便でも、すべてが不要というわけではありませんが、国内のダイレクトメールが年間32億通あり、郵便物全体の14%になっています。しかし、これはすべて発信者の負担ですから捨てる手間だけで済みます。
 しかし、スパムメールは受信者の負担もあり、そのうえ経済損失も無視できない巨大な金額になりつつありますから、より厳しい罰則により防いで行く必要があると思います。





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