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論文

 京都議定書が2005年2月14日に発効してからほぼ2年が経過して、2008年から2012年までという二酸化炭素削減の目標の年が近付いてきました。しかし、日本が目標を達成するのは相当困難だと思われています。
 日本の目標値は1990年を基準として6%減らすということですが、1990年から2004年までの15年間で、二酸化炭素の排出量は12億6100万トンから13億5500万トンと7・5%も増えてしまっているので、6%と7・5%を加えた13・5%も減らす必要があるからです。
 そこで、どこが増えているかを調べてみると、産業部門は2・2%減少ですが、もっとも増えているのがプラスチックや廃油などの廃棄物の燃焼で114%の増加、オフィスなどでのエネルギー消費による二酸化炭素の排出が57%の増加、家庭からの排出が30%の増加、自動車や飛行機などの運輸部門が20%の増加というように、一般の生活に関係する分野での増加が急増しています。

 そこでチームマイナス6%という国民運動が結成されて努力していますが、なかなか関心が高まっていないのが現状です。
 関心を高めるためには、例えばゴミを出すと、どれだけ二酸化炭素を増やしているかとか、自動車に乗るとどれだけ二酸化炭素を増やしているかなど、一人一人が自分の行動によって環境にどのような影響を与えているかを知ることが第一歩です。
 そのためには環境家計簿を記録することが推奨されていますが、電卓を使って計算をする必要があったりして、意外に面倒です。
 そこで登場したのが、岩手県庁の資源循環推進課の吉田茂課長が考案された「環境尺」という一種の計算尺です。
 計算尺というのはアナログ計算機で、僕のような工学系の人間は学生時代に使っていましたが、最近ではデジタル計算機である電卓が普及して、ほとんど使われなくなりました。
 計算尺は知らないという方のために、簡単に説明しますと、目盛りをつけた3本の物差しの上下2本は固定してあり、真ん中の物差しを左右に動かして、必要な計算をするという道具です。

 ここに「環境尺」の見本を持ってきましたが、3本の物差しのうち、下の物差しは捨てるゴミの量とか、自動車で移動する距離とか、使う水道水の容積など、二酸化炭素を増やす原因となるモノの量を表す目盛りです。
 上の物差しは結果として排出される二酸化炭素の重量を示す目盛りが付けてあります。
 そして真ん中の物差しが動くようになっており、そこにはアルミのゴミ、プラスチックのゴミ、ガラスのゴミ、生ゴミなど、ゴミの種類や、プロパンガス、都市ガス、水道など日常生活で使う資源の種類、そして自動車で移動する距離など15種類の目盛りがつけてあります。
 そこで、生ゴミを2キログラム捨てるという場合、真ん中の物差しの生ゴミという目盛りを下の目盛りの中央に合わせ、上の目盛りの2キログラムのところを見ると、約500グラムという数字が読取れます。
 すなわち、生ゴミを2キログラム捨てると、それが焼却処理されるために二酸化炭素が500グラム出るということが分かるということです。

 これだけですと、生ゴミ1キログラムに付き二酸化炭素250グラムという数字を覚えておいて、その何倍かという計算をすれば済む訳ですが、自動車で1キロメートル移動したらどうなるかを同じ方法で計算すると、約400グラムという数字が読取れます。
 そこで、生ゴミ1・6キログラムを捨てることと自動車で1キロメートル移動することは地球温暖化に同じ程度の影響をもたらすということが分かり、自動車に乗るか乗らないかという行動の選択の参考になるというわけです。
 同じように、新聞紙とペットボトルとスチール缶とアルミ缶を、それぞれ1キログラム、リサイクルすると、新聞紙は二酸化炭素を2キログラム、ペットボトルは4キログラム、スチール缶は4キログラムの二酸化炭素を節約でき、アルミ缶は50キログラムも節約出来るということが、この環境尺で計算して分かります。

 このようなことが分かって役に立つのかということですが、自分の行動が環境に及ぼしている影響を二酸化炭素の排出という1種類の目盛りで比較することができ、日常生活の頭に体操にもなるということです。





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