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論文

 BRICs、すなわち、ブラジル、ロシア、インド、中国がこれから急速に発展して行くということは以前、お話しさせていただきましたが、その中のインドが特に注目されているので、インドの最近の事情を紹介させていただきたいと思います。
 インドが注目されている証拠のひとつとして、日本の閣僚が頻繁に訪問していることが挙げられます。森総理大臣は2度も訪問していますし、昨年は小泉総理大臣、麻生総務大臣、谷垣総務大臣、中川経済産業大臣、竹中金融担当大臣、谷川外務副大臣、今年は麻生外務大臣、塩崎外務副大臣や明石政府代表が訪問しています。

 注目されている第一は大国だということだと思います。
 インドは人口が10億8000万人で日本の9倍、面積が329万平方キロメートルで日本の9倍というだけではなく、鉄鉱石の生産は世界で4位(10・5%)、ボーキサイトが5位(6・8%)、クロムが2位(20・3%)という資源大国です。
 経済成長も昨年は8・1%で世界5位(日本は2・7%で36位)、個人消費の伸びも5・9%で12位(日本は1・7%で41位)、中所得階層だけでも3億人という規模ですから、各国が貿易などの相手として注目するということです。
 第二は国内の格差はありますが、全体として教育水準が高く、人材が豊富だということです。
 小学校で2桁の九九の暗記をするということでも有名ですが、なにしろ、すでに紀元前7世紀に、60科目以上の授業を1万人以上の学生が勉強していた大学があったほどの教育大国です。
 そして数学の分野では大変な貢献をしており、ゼロという概念、10進法、円周率、ピタゴラスの定理、二次方程式の解法もインドで発明や発見がなされており、5世紀には地球が太陽を一周するのは365・25875684日だということを計算していたという国です。
 アインシュタインは「現在の我々があるのは、数の数え方を教えてくれたインド人のおかげである。それが無かったら、その後の重要な科学的発見は成し得なかった」と言っているほどです。

 この量と質が一緒になるとどういうことになるかということですが、インドの小学生は1億1500万人(日本は720万人)と日本の人口に匹敵し、中学生が4500万人(日本は366万人)、高校生が3000万人(日本は372万人)、大学生が1000万人(日本は304万人)と、すべて桁違いです。
 その結果、科学技術関係の研究開発人材が30万人と世界で6番目の規模になり、これが世界から注目されています。
 とりわけ目覚ましい分野がコンピュータ関連のソフトウェア産業で、現在、インドの輸出全体の20%がソフトウェアで最大の輸出産業になっており、しかも年率20%以上で成長し、2010年には7兆円産業で輸出の30%になると予測されています。

 もうひとつインドの有利な点は英語です。公用語はヒンディ語で、それ以外に各地方ごとの公用語が17言語公認されていますが、イギリスの植民地であった影響もあり、英語が共通語として使われています。
 そのため、英語圏への進出も目覚ましく、アメリカには200万人以上が住み、技術者が取得する就労ビザのH1の36%はインド出身者が取得しており、シリコンバレーには30万人が働いて、そこにあるベンチャー企業の15%はインド出身者が興したものと言われています。
 そのため、アメリカのIT産業はICが支えていると言われます。ICはインテグレーテッド・サーキット、集積回路のことですが、ここではインドとチャイナ、すなわちインド人と中国人という意味です。
 それに対応して、アメリカもインドに力を入れており、例えば、昨年12月にはマイクロソフトのビル・ゲーツ会長がインドを4日間訪問し、インドのハイテク都市として名高いバンガロールに研究開発センターを新設し、今後4年間で2000億円ほどを投資するという発表をしています。

 しかし、問題もあります。現状では情報通信技術の普及が遅れていることだと思います。現在、コンピュータの普及率は1・6%で世界主要国では最下位(日本は58%)。インターネットの普及率は4・7%でこれも最下位(日本は68%)です。
 今日はIT分野を中心に紹介してきましたが、インド政府が研究開発に予算を投じているのは、軍事産業、宇宙産業、農業、原子力であり、多方面で科学技術大国です。
 このような大国にも関わらず、日本との関係は密接ではなく、日本への留学生は中国から6万3000人ほどですが、インドからは360人程度です。経済界も昨年11月から12月にかけて、日本経団連が奥田会長を団長とする訪問団を派遣し、首相と懇談などをしていますが、このアジアの大国にもっと注目すべきだと思います。





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