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論文

 今週はテレビジョン番組の撮影でアイルランドに来ています。そこで今日はアイルランドについてご紹介したいと思います。
 まず場所ですが、イギリスの西側にある北海道と同じくらいの面積のアイルランド島にあります。この島の北東部分の面積にして15%ほどはイギリスの一部の北アイルランドですが、残りの部分がアイルランド共和国で、人口413万人、これは北海道の7割強という規模です。またGDPは20兆円ほどで、これも北海道の域内総生産と同じ規模です。
 島の中心の緯度は北緯53度ですから、サハリンの北半分あたりになりますが、それ以外では面積も人口も経済も北海道に良く似た規模の国だというわけです。

 今日はアイルランドについて2点、ご紹介したいと思います。
 第一は日本との関係です。
 「庭の千草」という小学唱歌をご存知だと思いますが、あの歌は実はアイルランドの「夏の最後のバラ」という民謡です。また「蛍の光」はスコットランドの「オールド・ラング・サイン」という民謡ですが、アイルランドの伝統音楽と同じ系統です。
 日本に昔からある歌のように感じますが、それには理由があります。日本の伝統的音楽の音階は「四七抜き」、すなわち4番目のファの音と、7番目のシの音を使わないのですが、アイルランドの音楽もファとシ、もしくはシだけを使わない音楽が多く、日本人が親近感を感じるのだと思います。
 エンヤの音楽が日本で大変に人気のあるのも、この辺りに理由があると思いますし、エンヤも芭蕉の「野ざらし紀行」を読んで「菫草」という日本語の歌を作曲しているほどです。

 アイルランドの文化を「ケルト文化」と言いますが、アイルランドの人々の祖先がケルト人とかガリア人と言われた民族だからです。
 このケルト人は紀元前にはヨーロッパ全域に生活していたのですが、シーザーが「ガリア戦記」に書いているように、ローマの人々に追われてスコットランドやアイルランドのみで生活するようになりました。
 ケルト民族はアイヌ民族と同じように文字を持たなかったので、正確な歴史は分かりませんが、発掘された彫刻や装身具などから、自然崇拝の強い多神教的な宗教を信仰していたと推定されています。
 ただし、5世紀にキリスト教が伝えられ、現在ではカトリックを信仰していますが、それでも自然を崇拝する多神教的な思想が残っています。
 したがって、神道など多神教的な宗教や思想が社会に浸透している日本と似ているということで、日本はアイルランドと相性がいいのです。

 もう一点は、最近のアイルランドは「ケルティック・タイガー」といわれてハイテク分野で躍進していることをご紹介したいと思います。
 アイルランドの携帯電話の普及率は93%で世界の15番目ですが、日本は72%で世界の29番目ですから、日本より普及しています。
 同様にコンピュータの普及率も日本の58%に対して60%、社会全体のサイバーセキュリティについての評価も、日本の24番目に対して15番目と上回っています。
 フットボールのワールドカップでも、1990年のイタリア大会で初出場を果たしただけではなく、決勝トーナメントに進出し8位になり、1994年のアメリカ大会でも決勝トーナメントに進出しています。フランス大会は出場できませんでしたが、日本と韓国で開催された2002年には決勝トーナメントまで進んでおり、日本より強い国です。

 さて、ケルティック・タイガーといわれる経済発展ですが、アイルランド独自の言葉であるゲール語と並んで、英語も国語になっていることも利点となり、外国企業が次々と立地し、1993年には16%であった失業率が2001年には4%以下になるほど経済が復興しました。
 そして、80年代には財政赤字がGDPの15%を超え、政府の長期債務残高も130%という困難な状況になり、また、一人あたりのGDPも1973年にはEUの平均値の6割しかなく、「ヨーロッパの病人」と言われるほどでした。
 しかし、1990年にアイルランドでは初めての女性大統領メアリー・ロビンソンが就任し、1998年には北アイルランドと和平合意を締結し、経済も2000年にはEUの平均値を越えるまでに発展してきました。
 場所は日本の丁度反対側にありますが、日本とは精神的に相通じる国ですので、アイルランドに注目するべきだと思います。





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