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論文

 先週、世界各国と比較して日本はどのような地位にあるかをご紹介しました。順風満帆ではないどころか様々な問題を抱えているということが分かった訳ですが、6月30日に、昨年10月に行われた国勢調査の速報集計結果が発表されましたので、その数字を見ながら、今週も日本の問題点を調べてみたいと思います。
 今回、日本が世界一になった数字がいくつかあります。これが芳しい分野ならいいのですが、必ずしもそうではないのです。

 まず、65歳以上の人口の比率がついに世界一になりました。1980年までは先進諸国の中では、もっとも少なかったのですが、85年にカナダを抜き、90年にアメリカを抜き、2000年に、イギリス、フランス、ドイツをごぼう抜きにし、ついに2005年にはイタリアを抜いて世界一になってしまいました。
 その影響で、15歳以下の人口の比率は世界最小になりました。日本は全人口の13・6%ですが、以下はブルガリア13・8%、イタリアが14・0%、ドイツとスペインが14・3%です。
 参考までに、アフリカの国々はコンゴが47・3%、エチオピアが44・5%、ナイジェリアが44・3%などです。これらの数字は多産だけではなく、医療水準が低いために平均寿命が短いことも影響しています。
 そのように見れば日本は平均寿命が世界一ですから良いともいえますが、一方で、高齢者が増えることは年金や医療費などの制度が破綻する大問題を引き起こすことにもなります。

 その一例が、65歳以上の単独世帯、普通に言えば、一人暮らしの高齢者が増えていることです。1995年には220万人でしたが、2000年には303万人、今回の調査では405万人と、5年で100万人以上も増えてしまいました。
 その原因は様々ですが、ベネチアの衰退のときにもご紹介しましたが、若い人たちが結婚しなくなったことが重要な原因だと思います。
 15年前の1990年と比べてみると大変な変化で、男子の場合、結婚していない人間の比率は、20代前半では92%から94%でそれほどでもありませんが、20代後半になると64%から73%、30代前半では33%から48%と急増です。
 女子の場合も、20代前半は85%から89%という程度の未婚率ですが、20代後半になると40%から60%に一気に増え、30代前半も14%から33%と、3分の1の女性は結婚しないままです。
 ちなみに15歳以上で結婚していない都道府県のベスト5は,男子の場合、1位が東京(37%)、以下、沖縄(36%)、神奈川(35%)、埼玉(33%)、愛知(32%)、女子の場合は、東京(29%)、沖縄(27%)、京都(25%)、福岡(25%)、大阪(25%)です。

 どちらが卵で鶏かは分かりませんが、大きな変化は女性が働くようになったことです。都道府県の未婚比率が高いのは大都市のある場所で、女性の職場が多い所ですから、この説を裏付けていると思います。
 女性の働いている比率を同様に90年と2005年を比較してみると、20代後半では61%から73%、30代前半では51%から62%と大きく伸びています。
 これは結婚や出産をしないで、働く女性が増えたことを示しています。そして外国では、フランスやカナダは80%近い数字、ドイツやアメリカでは70%以上ですから、日本もさらに増える可能性があります。

 この働くということで、日本の大きな特徴は高齢者が働いている国だということです。65歳以上で働いている人の比率は、男子の場合33%、3分の1の人が働いていますが、フランスでは2%、ドイツでは3%、イタリアでは6%、アメリカでも19%です。
 女子の場合も、日本は14%ですが、フランス1%、ドイツ2%、イタリア2%、アメリカ11%です。
 日本人が働くことが好きだということもあると思いますが、やはり社会保障制度が十分でないということや、会社中心で人生を送ってきたため、会社から離れると仲間が居なくなってしまうので、会社にしがみついているということもあると思います。

 この番組に出ている嶌信彦さんがワシントン特派員の時代に経験した興味深い話をしてくれたことがあります。住んでいた住宅の隣の家の老夫婦が、定年で退職したので、これからフロリダに移住しますと挨拶に来られたそうです。ここに何十年も生活していて、だれも友人の居ないフロリダに行って寂しくないかと訊ねたところ、自分と同じ宗派のキリスト教徒が集まっている町があるので、そこに行けば友達はいくらでも居るというのが答えだったそうです。
 このような数字や嶌さんが紹介してくれたエピソードを考えると、若い時代から気を許すことのできる仲間を作っておくことが重要だと思います。





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