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論文

 いよいよFIFAワールドカップ・ドイツ大会の開幕も明日になり、日本の最初の試合オーストラリア戦も来週の月曜日12日に迫ってきました。メディアもサッカー情報が満載ですが、今日は、メディアがあまり伝えないサッカーの話題をご紹介したいと思います。

 まずはサッカーという言葉ですが、イギリスに行ってサッカーと言っても通じません。フットボールと言わないといけないのです。ドイツ語でもフスバル、フランス語でもフットバール、スペイン語でもフットボルで、辛うじてアメリカだけがサッカーです。これはアメリカでフットボールというとアメリカン・フットボールになってしまうからです。
 中国では、フットボールを翻訳したような「足球(ズージウ)」、イタリアではトトカルチョでお馴染みのカルチョといわれますが、これは蹴るという意味からきた言葉です。
 サッカーというスポーツはイギリスが発祥の地だと言われているのに何故かということですが、それを説明するためにはサッカーの歴史を辿る必要があるのです。

 フットボールの起源は諸説あるのですが、8世紀のイングランドで戦争に勝った部族が相手の大将の頭蓋骨を蹴飛ばして勝利を祝ったとか、10世紀末から11世紀にかけてイングランドがノルマンに何度も侵略されるのですが、その憎しみからノルマン人の頭蓋骨を蹴飛ばしたという、おどろおどろしい出来事が始まりといわれています。
 それが次第に広がり12世紀には村と村とがボールを蹴り合って、相手の村にボールを蹴り込んだほうが勝ちというゲームに発展していくのですが、各地で行われていたためにルールがばらばらでした。
 そこでルールを統一しようということで、1863年にフットボール・アソシエーションが設立され、その組織でルールを決めたスポーツがアソシエーション・フットボールと言われるようになったのです。
 そのアソシエーションの「SOC」に「ER」をつけて、アソシエーションのゲームという意味のサッカーという言葉が誕生したというわけです。

 そのような起源を持っていますから、闘争本能を掻き立てるスポーツで、様々な争いが起こっています。
 有名な事件は「ヘイゼルの悲劇」といわれるもので、1985年5月29日にブリュッセルのヘイゼル・スタジアムでUEFAチャンピオンカップの決勝戦が、リバプールとユベントスの間で戦われました。
 応援団同士の小競り合いが次第に拡大し、リバプールの応援団がユベントスの観客席になだれ込んだときに、ユベントスの応援団が逃げようと塀に登ったところ、その塀が崩れて、結局、死者39人、負傷者400名以上の事故になりました。

 本物の戦争になったこともあります。
 1969年6月27日にメキシコシティでワールドカップ・メキシコ大会の予選準決勝がホンジュラスとエルサルバドルの間で戦われたのですが、3-2でエルサルバドルが勝ちました。
 そこで負けたホンジュラスが国内のエルサルバドル人の不法入国者を強制送還しはじめ、国交が断絶し、試合から2週間後の7月10日にエルサルバドル空軍がホンジュラスの空軍基地を襲撃し、空中戦でホンジュラスの戦闘機がエルサルバドルの戦闘機3機を撃墜し、陸軍も出陣し数千人の死者が出るまでになりました。7月29日には停戦したのですが、平和条約を締結したのは10年以上たった1980年のことでした。

 そのような事件が起こるのも、サッカーが世界でもっとも普及しているスポーツだからです。
 今年の1月25日にFIFAのプラッター会長がダボス会議に出席して演説し、世界のサッカー人口は2億5000万人と説明しました。
 野球人口は1500万人といわれていますから、桁違いです。そして国際野球連盟に加盟している国は112カ国ですが、FIFAの加盟国は207カ国です。ちなみに国際連合に加盟している国は191カ国ですから、それ以上ということです。
 それを反映して、テレビジョンで観戦する視聴者も大変な人数で、94年のアメリカ大会は321億人でしたが、2年後のアトランタ・オリンピック大会は196億人、98年のフランス大会は334億人に対し、2年後のシドニー・オリンピックは226億人といずれもサッカーのワールドカップの方が1・5倍以上です。

 それを反映して、放送権料もうなぎ上りで、フランス大会までは長期契約のおかげで、アメリカ大会が99億円、フランス大会が195億円でしたが、それが切れた2002年の日韓共同開催は1232億円と一気に跳ね上がりました。ちなみに日本のテレビ会社はジャパン・コンソシアムを結成し240億円を支払ったと推定されています。
 今回のドイツ大会は数字が明らかではありませんが、さらに上回っていると予想されます。
 サッカーはもちろんスポーツですが、このような文化的な背景も知りながらご覧いただくと、さらに楽しめるのではないかと思います。





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