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論文

 先週末は北海道の暑寒別天売焼尻国定公園にある暑寒別岳にスキーを履いて登ってきましたが、丁度、新緑になりはじめる段階で、美しい森林の中を滑り降り、楽しい経験をしてきました。
 北海道は面積全体の4分の3が森林ですが、日本も全体では面積の70%弱が森林で、パプアニューギニアの80%には適いませんが、世界でもフィンランドやスウェーデンに次いで森林面積比率の多い国です。
 それは自然が豊かで素晴らしいことですが、問題は人工林が多いことです。
 およそ日本の森林の40%が人工林ですし、その人工林の大半が針葉樹林ですから、森林蓄積量といわれる木材の量では70%近くが針葉樹です。
 これが花粉症の原因とも言われているわけですが、もう一つの問題が人工林は間伐などの手入れをしないと森が荒れるということです。
 針葉樹の人工林の場合、密植といって、多いところではヘクタール当たり1万本以上、すなわち1メートル間隔で苗木を植えます。
 これを次第に間伐して本数を減らして行かないと、細長い木ばかりになってしまい、大風や大雪で倒れてしまうことになります。

 そこで手入れをするのですが、問題は人手が足りないということです。1955年頃には、就業者全体の1・3%に相当する52万人ほどの人々が林業に従事していましたが、そこを頂点に急速に減って行き、2000年には6万7000人で、就業者の0・1%になってしまいました。
 そうなれば森林が荒れるということで、例えば、一昨年の台風が東北から北海道の日本海側の地域を襲った後は、惨憺たる状態になっています。

 何とかしなければということで、自治体が知恵を絞っており、和歌山県と三重県が提言し、2001年から「緑の雇用事業」という政策が推進されています。
 これは国の補助金も得て、都会から林業に従事したいという人にUターンやIターンしてもらうもので、和歌山県では県庁に緑の雇用推進局という部署まで設置して推進してきた結果、2002年に133名の人が県外から移住し、県内でも342名の人が林業に従事し、これまでの合計で1000人近い人が林業に従事するようになっています。
 失業対策、Uターン促進、そして環境整備が一気に出来る一石三鳥の素晴らしい政策です。

 高知県は森林面積の比率が84%と日本最高、人工林比率が65%で日本2位ですが、やはり林業に従事する人が居ないために、森林が維持できないということで、平成15年度から5年間、森林環境税を県民から集めることにしました。
 これは高知県独自の税制で、個人も企業も県民税に500円を追加して支払う制度です。年間1億6000万円程度の税収があり、平成15年度と16年度で合計414ヘクタールの森林を間伐しています。
 これは東京ドーム88個分の面積というと広いようですが、高知県の人工林の0・1%にしかならないので、微々たるものです。
 そこで打ち出された第二弾が、企業に森林の維持をする手助けをしてもらおうという「森の力」という政策です。
 これについても和歌山県が平成15年から「企業の森」という制度を作って始めていますが、企業が和歌山県の森林を借地したり購入したりすると同時に資金を提供し、その資金で森林組合が森林の手入れをするという仕組です。企業の人々は植林をしたり、レクリエーションに訪問したりという活動で、地域の人々と交流するということになります。
 すでに、ユニチカ、関西電力、大阪ガス、全日本空輸、住友金属工業、イオン、積水ハウス、ダイキン工業など20の団体が112ヘクタールほどの森林を「企業の森」にしています。

 高知県でも「人が森を助ける/森が人を助ける」というキャッチフレーズで「森の力」という制度を始めました。
 これは企業から提供された資金で、間伐や作業道路の整備をしていくもので、すでに三井物産やコクヨが参加しています。
 この番組をお聞きの企業の皆様も、ご関心があれば、和歌山県の場合は「緑の雇用推進局」(073-441-2930)、高地県の場合は文化環境部(088-823-9794)にお問い合わせいただければと思います。
 世界の歴史を調べてみると、森林を破壊して文明が崩壊し、さらに国家が衰退した例がいくつもあります。そのような意味からも森林を守るために、政府だけではなく、企業や国民が協力する必要があり、自治体から始まった、このような仕組に協力していただければと思います。





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