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論文

 世界各国の国会議員が交流する団体でIPU(Inter-Parliamentary Union)という組織があります。日本語では列国議会同盟という時代がかった翻訳がなされていますが、それも理由がありまして、すでに1889(明治22)年に創設されて、117年の歴史を誇る由緒ある組織だからです。
 日本は第二次世界大戦のときに一時脱退しましたが、1908(明治41)年から、再度、参加しており、現在では140カ国が加盟しているという規模です。
 そこが毎年、国会議員に女性の占める割合を発表していますが、2月末に187カ国を調査した最新の数値を発表しました。
 それによりますと、1位がルワンダの48・8%です。これは意外に思われる方が多いかも知れませんが、憲法で女性の国会議員の比率を30%以上にすることを決めているからです。以下、スウェーデン(45・3%)、ノルウェイ(37・9%)、フィンランド(37・5%)、デンマーク(36・9%)と北欧諸国が続きます。
 日本は昨年の総選挙で史上最多の43人の女性の衆議院議員が当選しましたが、それでも9%にしかならず、世界で105位というのが現状です。

 すでに平成11年に「男女共同参画社会基本法」が制定され、第二条に「男女が均等に政治的、経済的、社会的、及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会を形成する」と書いてありますが、この数字を見る限り、遅れているというのが実情です。
 日本の総人口の女性比率は51・2%で半分強ですが、これを上回って女性が参画している分野を調べると小中学校教員の54・6%だけで、国の審議会などの委員が28・2%、医者が16・4%、参議院議員が12・4%、研究者が11・6%、民間企業の課長職で5%というのが現在の状況です。
 しかし、これでも随分改善されたほうで、20年前の1986年には、衆議院議員が1・4%で現在の6分の1、審議会委員が5・8%と現在の5分の1、医者が10・4%で現在の60%でしたから、次第に共同参画の方向には向かっていると思います。

 日本の女性参画比率が低い原因の基本は社会の慣習が影響しているのだと思いますが、日本の慣習の特徴を示すM字曲線という現象があります。
 それぞれの年代で女性が就業している比率を示す数字を調べてみますと、日本の場合、10代後半は20%程度ですが、20代前半になると73%程度まで上がります。ところが、20代後半で70%、30代前半で57%と減っていき、ふたたび30代後半から上がり、40代前半で70%台に戻ります。大まかに推測すれば寿退社が多いということです。
 これを横軸に年齢、縦軸に就業比率をとったグラフにすると、ローマ字のMの形になるので、M字曲線といわれるわけです。

 日本以外には韓国が似た数字ですが、それ以外は、どの国も山形になっています。
 例えば中国は10代後半から5年毎の数字を並べますと、10代後半で68%ですが、20代前半で90%になり、30代後半まで90%以上を維持し、それ以後、ゆるやかに減っていくという状態です。
 アメリカでも、10代後半の約50%から20代前半で75%になり、以後、50代前半まで70%台を維持しています。スウェーデンなどは、20代前半から40代前半までは次第に増えていくというほどです。

 日本もM字状態から脱却するのがいいのかということですが、これは社会の伝統や制度、男性、女性それぞれの価値観によりますから、一概に言えませんが、社会全体から見れば、人口減少時代になり、15歳から64歳までの生産年齢人口はすでに1995年から減り始めて、この10年間で8715万人から8508万人と200万人以上も減っていますから、女性が社会に進出して、様々な分野で活躍することは意味があると思います。
 しかし共同参画だからといって、何でも対等にというジェンダーフリー運動が妥当かは意見が分かれると思います。

 ひな祭りや端午の節句は男女差別であるから廃止する、桃太郎の「おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯に」は仕事を固定しているから変える、スカートは制服から除外する、ロッカーは男女別を廃止するなど、入学試験の合格者数を男女同数にするなどが提案されています。
 しかし、これはアメリカが自国の商習慣などに従えというグローバルスタンダードの発想に近く、やや強引だと思います。男女は筋肉の力も違いますし、最近の脳科学では脳の機能も男女では違うということが分かってきましたから、それぞれに適した役割を果たしながら共同していくというのが、現状では多数の方々が納得できる見解ではないかと思います。





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