TOPページへ論文ページへ
論文

 先々週、インターネットが従来のビジネスの法則を一気に変えるロングテール現象について紹介させていただきましたが、今週も、インターネットによって一気に変わりそうなビジネスを紹介させていただこうと思います。
 昨年9月に、毎日新聞社の編集局長をされた経験のある歌川令三さんが『新聞がなくなる日』という本を書かれていますし、先週の『ニューズウィーク日本版(3月15日)』が「ブログは新聞を殺すのか」という特集記事を組んだと思ったら、今週は「ネットはテレビを殺すのか」という殺害シリーズで、新聞やテレビジョンというマスメディアの将来を予見する情報が数多く発表されるようになりました。

 しかし、情報通信技術が既存のマスメディアの命運を左右するという議論は、かなり以前からあり、すでに1992年にアメリカの評論家ジョージ・ギルダーは「テレビの消える日」という本を書いていますし、「ジュラシックパーク」などの小説で有名な作家マイケル・クライトンは、1993年にワシントンDCの記者クラブで「メディアザウルス」という講演をして、マスメディアは図体が巨大になりすぎて絶滅した恐竜と同様に、絶滅すると予言しています。
 それらと比較しては申し訳ありませんが、私も1995年に「マルチメディア超企業破壊」という本を出版し、「家庭と事務所がすべてテレビ局であり新聞社となる」という内容を書かせていただいております。
 このように、インターネットが新聞やテレビなどのマスメディアに大きく影響するという議論は15年以上前から始まっているのですが、いよいよ本物になって来たのではないかということです。そこで今週は新聞から検討してみたいと思います。

 15年程前、インターネットによって新聞が危機になるという話しを講演会などでしますと、当時は必ず反論がありました。
 その根拠は2点で、第一は「新聞は広げると様々な情報が一覧できて全体を知ることができる、ブラウジングの機能がある」ということ
 第二は「朝起きて、配達されたばかりの新聞を広げると、紙とインクの匂いがたまらなくいい」という中毒患者のような反論でした。

 最近は、そのような意見は無くなり、実際、影響が現実のものになっています。
 「ニューズウィーク日本版」の3月15日号にアメリカの実情が紹介されていますので、その数字を参考にしますと、まず、新聞の種類が減っています。
 1975年には全米で日刊紙が1756紙発行されていましたが、2004年には1457紙になり、30年で約300紙が廃刊になっています。
 発行部数は1985年の1日6277万部が頂点だったのですが、2004年には5463万部と、800万部の減少です。

 日本について同じような数字を調べてみると、1975年の4051万部から、2000年の5371万部まで順調に伸びてきましたが、そこを頂点として、2003年には5288万部と83万部減りました。広告費も2000年の9012億円から2003年には7544億円と1500億円近くも減っており、いずれも頂点を過ぎたということを示しています。
 それは当然で、電子新聞のほうが優れている点が多いからです。最大の長所は、一日せいぜい2回しか発行されない新聞に比べ、電子新聞は絶えず最新の情報を提供してくれます。また、以前御紹介した「グーグルニュース」のように多数の新聞や雑誌の見出しと概要を集めてくれるサービスもあり、新聞を広げてブラウズする機能どころか、多数の新聞を一斉に広げるほどの効果があります。そして何より現在は無料です。

 しかし、より重要なことは、普通の電子新聞は既存の新聞社が専門の新聞記者による記事を掲載しているのですが、その秩序を破壊するような新聞が出て来たのです。
 具体例でご紹介するのが分かりやすいと思いますが、2000年2月から情報提供を開始した韓国の「オーマイニュース」という電子新聞があります。
 学生時代に反政府運動の闘士だったオ・ヨンホさんが始めたのですが、簡単に説明すると、一般の市民が身の回りのことなど自由に原稿を書いて送ると、一応の審査はありますが、それを通過するとウェブサイトに掲載され、1本につき100円の原稿料が支払われるという仕組です。
 最初は727人の市民記者で始めたのですが、目標を20万人としていました。そして現在、3万5000人程の記者が登録しています。
 この新聞は、実は、ノムヒョン大統領の当選に大変な貢献をし、この「オーマイニュース」がノムヒョン大統領に投票をするように呼びかけ、結果として、ノムヒョン大統領の得票率は20代でと30代で60%、40代で48%、50代で40%、60代以上が35%で、インターネットを利用している若い世代が当選させたという感じです。

 電子新聞は既存の新聞を脅かすだけではなく、政治も動かしはじめているのですが、韓国はインターネットの普及で世界6位(日本10位)、ブロードバンドの普及では世界1位(日本6位)という先進国です。これまで情報社会というとアメリカを注目してきましたが、韓国の動静も注目する必要がありそうです。





designed by BIT RANCH / DEGITAL HOLLYWOOD
produced by Y's STAFF
Copyright(c) Tsukio Yoshio All Rights Reserved.