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論文

 先週は技能オリンピック大会の話しをさせていただきましたが、今週は現在、トリノで開催中の冬のスポーツのオリンピック大会の話しをさせていただきたいと思います。
 トリノで開催されている冬季オリンピック大会も5日目に入りましたが、日本はまったく不振で、スノーボードのハーフパイプ男子は4選手とも予選を通過できませんでしたし、女子は3人が決勝に進出したものの、アメリカなどの上位選手と比べると、大人と子供というほどの差があり、問題になりませんでした。
 モーグルの女子フリースタイルも上村の5位がやっとでメダルは獲得できませんでした。
 また、金メダル確実とされていたスピードスケートの男子500メートルも及川がメダルにあと一歩、加藤は6位ということになってしまいましたし、女子500メートルは岡崎が0・05秒差、65センチメートルでメダルを逃してしまいました。
 その不振を象徴するのが12日に開催されたジャンプ競技のノーマルヒル決勝でした。
 これは今年の冬の日本選手のコンディションから厳しい戦いは予想されていましたが、4選手が出場して18位、20位、23位、そして一人は失格という惨敗になってしまいました。
 1972年の札幌オリンピックでは70メートル級で金・銀・銅を独占し、80年のレークプラシッド大会では70メートル級で銀、94年のリレハンメル大会ではジャンプの団体で銀、98年の長野オリンピックでもラージヒルで金と銅、ノーマルヒルで銀、団体で金など、かつては日本が大活躍していた競技ですから、一体、どうなったのかというほどです。

 原因の一つは精神的な弱さと言われていますし、選手村の建物が未完成で、シンナーの臭いがしたり、室内がほこりだらけだったという情報もありますが、もうひとつ忘れてならないのは規則が頻繁に変更になっているということです。
 札幌オリンピック大会の70メートル級で日本がメダルを独占した後には、ジャンプ台の飛び出し角度を緩めて、日本選手が不利になりましたが、ここ10年程は規則変更が頻繁に行われて、選手がとまどっています。
 その典型は原田雅彦の失格です。以前は体重についての制限は無かったのですが、飛距離を延ばすために体重を軽くする選手が増え、拒食症になる場合まで登場しました。そこで昨シーズンから、体重によってスキー板の長さが決められ、身長174センチメートルで登録していた原田が253センチメートルの板を使うと、ジャンプスーツなども含めた重量が61キログラム以上でなければいけないのですが、60・8キログラムしかなく、200グラム足りなかったということになってしまったわけです。

 しかし、このような規則変更で、日本選手がもっとも影響を受けたのが、スキー板の長さの制限です。
 98年の長野オリンピックまではジャンプのスキー板の長さは身長プラス80センチメートルでした。ところが、この規則だと身長の高い北欧の選手に比べて、小柄な日本選手は有利になります。
 例えば、身長165センチメートルの岡部孝信は245センチメートルの板を使うことができ、48%増しになりますが、フィンランドのヤンネ・アホネンは身長182センチメートルなので262センチメートルの板となり44%増しにしかなりません。
 そこで、99年に規則が変更になり、身長の46%増しにするということになりました。そうすると岡部は241センチメートルで4センチメートル短くなるのに、アホネンは266センチメートルで4センチメートルも長くなり、25センチメートルの差がつきます。
 板の面積が広いほど空気抵抗が大きくなるので有利になるのですが、実際に規則が変更されるまでの91年から98年の7シーズンには、日本選手は34勝していたのですが、変更後の98年から99年の7年間には14勝しかしていないし、特に99年以後は4勝ですから、やはり規則改正の影響はありそうです。

 原因を明確にはできませんが、本家の北欧諸国の戦略も影響しています。
 例えば、92年のアルベールビル大会、94年のリレハンメル大会で、日本がノルディック複合競技の団体で連続優勝し、また、荻原健司がワールドカップで93、94、95年と三回連続優勝したために、ジャンプと距離の点数の配分が変えられて、その後の長野オリンピックでは団体で5位にしかなれませんでしたから、そういう可能性はありますが、2001年のシーズンにワールドカップで大活躍したポーランドのアダム・マリシュ選手は身長169センチメートルと日本人と変わらない身長なので、規則変更で勝てなくなったというのは言い訳だという意見もあります。





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