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論文

 今日は名古屋からお話させていただいているのですが、理由がありまして、「地域から変えるーものづくり立国・日本」というシンポジウムが本日、名古屋市で開かれ、それに出席するために来ているというわけです。
 この名古屋市を中心とする愛知県は日本のものづくり、すなわち製造業の中心です。
 もちろんトヨタ自動車をはじめとする自動車産業が集中しているということもありますが、数字でご紹介しますと、製造品出荷額という製造業の売上が35兆円で、日本全体の12%に相当します。
 愛知県の人口は全国の5・6%、県内総生産は全国の6・6%ですから、いかに製造業に特化しているかが、お分かりいただけるかと思います。そこで産業首都という名前まで登場しています。
 しかし、この製造業も問題を抱えています。第一に、若者のものづくり離れが起きていることです。新規学卒者が製造業に就職する比率を調べてみると、1990年には29・5%とほぼ3割でしたが、95年には24・4%、2000年には17・3%と減っていき、2003年には14・7%となって、この13年間で半減しました。
 1年間で転職した人の比率である転職率も高く、1990年には4・3%でしたが、95年には5・0%、2000年には5・8%、2003年には6・1%と着実に増加しています。

 第二の問題は、海外に生産拠点が移動していることです。日本の製造業の海外での生産比率を売上高で見ると、1995年が8・3%でしたが、2000年に11・8%、2004年には16・1%と、10年間で2倍になりました。
 とりわけ、自動車を中心とする輸送機械では32・6%とほぼ3分の1、家庭電化製品などを中心とする電気機械は23・4%でほぼ4分の1が海外で生産しているという数字になっています。
 そのため、優秀な人材の引き抜きも頻発しており、それを防止するために従業員と秘密保持契約を結んでいる企業は、1980年代には23%でしたが、最近では65%にもなっています。

 このような問題を抱えているにせよ、日本の輸出に占める工業製品の割合は95%近くもあり、世界最高ですから、ものづくりを何とかしなければいけないということで、様々な推進策が実施されていますが、その一つとして来年11月に、静岡県で第39回技能五輪国際大会と国際アビリンピックが開催されます。
 この技能五輪国際大会は1950年にスペインで最初に開催されて以来、ほぼ毎年開催されてきましたが、最近は隔年の開催になっています。
 日本では第19回大会が1970年に東京で、第28回大会が1985年に大阪で開催されて以来22年ぶりの開催ですから、日本政府のものづくり復活への意気込みが伺えます。
 そして、今日、私が参加させていただくシンポジウムも、そのプレイベントと言うわけです。

 この技能五輪国際大会は正式にはワールド・スキルズ・コンペティション、翻訳すれば世界技能競技大会といわれ、1950年にスペインと隣国のポルトガルの間で12人の選手が技能を競ったということが発端でしたが、次第に規模が拡大し、来年の静岡で開始される大会には40カ国から約2500人が参加する予定です。
 どのような競技があるかというと、スポーツのオリンピック大会以上で、最近では50種目近くあり、機械製図、溶接、自動車板金、配管、レンガ積み、建具制作、電子機械組立てなど、製造業という言葉から想像されるものが中心ですが、それ以外に、フラワー装飾、へアドレッシング、洋菓子製造、西洋料理、レストランサービス、造園など広範な分野に展開しています。

 日本は1962年の第11回大会から参加していますが、金メダル獲得数では、1963年、64年、66年、69年、70年、71年と1位でしたが、それ以後は3位とか4位に低迷して不振で、昨年フィンランドで開催された第39回大会で久しぶりに1位になりました。
 その一方で、韓国が急速に進出し、77年から連続9回、さらに95年、97年、2001年、2003年と最多の金メダルを獲得しています。
 もちろん、スポーツのオリンピック大会と同様に参加することに意義があると言ってもいいのですが、技能は産業の基礎で、天然資源のない日本が発展するための基礎ですから、ぜひ明日からトリノで始まる冬季オリンピック大会と同様の関心を御持ちいただければと期待しています。





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