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論文

 日本は世界でも食糧自給率の低い国で、カロリー換算では40%しか自給できていません。アメリカやフランスのように100%以上で輸出している国は別格としても、ドイツの91%、イギリスの74%と比較して非常に低い数字です。何しろ日本より自給率の低い国は、ジャマイカの0%、パプアニューギニアの3%、イスラエルの4%、リビアの11%、アルジェリアの18%しかないということで、世界では下から6番目です。
 個別の食糧でも、果物は44%、小麦は14%、大豆は4%ですし、肉類の牛や豚を養うためのエサから計算すると、牛肉が10%、豚肉が5%、鶏卵が9%という状態で、心配になります。
 昨年11月の世界貿易機構(WTO)の香港で開催された閣僚会議では農産物の輸入の関税の上限を定めることや、輸入枠の拡大を義務づけることは見送られましたが、次第に貿易の障壁は取り除かれる方向に向かいますから、自給率はまだまだ下がるかも知れません。
 ところが、その一方で、日本の農産物や海産物の輸出が増加しているのです。そこで今日は、海外で評価されている日本の食品についてお話しさせていただこうと思います。

 海のパイナップルといわれるホヤは独特の臭いがあって、好き嫌いがはっきりしていますが、日本の東北地方を代表する海産物です。僕も三陸海岸にカヤックに行くとよく食べますが、病み付きになる味です。
 ところが、この三陸地方のホヤが数年前から韓国に輸出されて人気になっています。日本からの輸出は2002年には190トンだったのですが、2004年には7434トンと、わずか2年で40倍近くも増えています。日本のホヤの生産量は1万トン程度ですから、70%以上が韓国に輸出されているわけです。実際、韓国の市場に出回っているホヤはほぼ100%が日本産だそうです。
 同様に北海道のサケも2000年頃から輸出が始まり、最初は4600トン程度でしたが、2004年には約6万トンと13倍にも増えています。その8割にあたる5万トンは中国に輸出されるのですが、これは中国で消費されるよりも加工されてアメリカやヨーロッパに輸出されているようです。
 北海道で養殖されるホタテ貝もアメリカでは「Hokkaido Scallop」という名前で人気がありますし、サンマも韓国、中国、フィルピンなどへ大量に輸出されています。

 水産物だけではなく、農産物も輸出が増加しています。例えば、コメは台湾や中国へ輸出されています。量的にはアメリカの数百分の1でまったく太刀打ちできませんが、日本のコメは高級品で、台湾産のコメの6倍の値段ですが、大変な人気です。
 台湾で人気があるのは北海道の十勝産のナガイモで1500トンが輸出されていますし、アメリカへも輸出されています。
 それ以外に、果物も輸出が増えており、リンゴ、モモ、ナシ、ミカン、ブドウなどが中国、台湾、韓国などに輸出されています。しかも、大半が高級品で贈答品として使われている果物も多いそうです。

 値段が高いのに日本の食品に人気がある理由は「安全安心」だと思います。
 例えば、中国の金持ちは日本の漢方薬を買っているそうですが、どうも日本の製品のほうが安心だということのようですし、ヨーロッパが日本のサケを輸入するのは、ヨーロッパのサケは養殖がほとんどで抗生物質を使っているのですが、日本のサケは天然物なので人気があるということです。
 そのヨーロッパのサケは日本が大量に輸入しているからおかしな現象です。興味ある例をご紹介したいと思いますが、アメリカでは大変な日本食や寿司ブームで、アメリカにある寿司レストランは2000店を超えています。
 この理由は何かということですが、アメリカの上院国民栄養問題特別委員会が、アメリカ人の肥満が増えて医療費が増大していくので、その対策を2年間の歳月と200億円の巨額の費用をかけて検討しました。
 その結果、1977年に発表されたのが5000ページにもなる「マクガバン・レポート」です。
 その結論は、アメリカの6大成人病は肉を中心とする食事が原因の「食原病」であり、コメと魚を中心とする日本食がもっとも素晴らしい食事であるということになり、それが日本食ブームの引き金となったのです。
 そして反対に日本では、小麦の消費量が増え、肉の消費量が増えるという逆の方向に進んでいます。
 灯台下暗しではありませんが、もう一度、日本の食品や食事の素晴らしさを見直すべきだと思います。





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