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論文

 先週は暗い予測ばかりでしたが、今日はぜひ明るい10年後を紹介します。
 やはり前向きといえば科学技術の話題だと思います。昨年、科学技術総合会議がまとめた「第三期科学技術基本計画」は今年から5年間に25兆円という巨額の予算を科学技術開発に投じるという内容です。平均しても年間5兆円ですから、建設予算に匹敵する規模です。
 主要なものを上げてみますと、まず次世代スーパーコンンピューターに1100億円です。以前に開発して海洋研究開発機構が運営している「地球シミュレーター」は2002年から2年間は世界でもっとも速いコンピューターでしたが、この分野の進歩は急速で、現在ではアメリカの「ブルージーンL」というスーパーコンピューターが7倍の速度で一位です。この36倍の計算速度のコンピューターを実現しようという計画です。

 それ以外に、昨年7月に完成した地球深部探査船「ちきゅう」を利用して、海底から2500メートルの深さまで掘り進めて、地球の構造を調べる研究に1200億円、茨城県東海村に建設される「大強度陽子加速器(J-PARK)」に1500億円、2002年から建設が始まり、2011年から運用される予定の「電波望遠鏡アルマ」の建設分担金に256億円など巨大科学が予定され、これらが実現すれば、科学立国日本の地位が向上すると思われます。

 それに比べれば消極的な明るい話しですが、平成19年度、すなわち再来年度の平成19年度からは、選り好みをしなければ、大学へ全員入学できる時代が到来します。少子化の恩恵です。
 ただし、これはすべてが良いことだけではなく、試験勉強をしなくなるので学力が低下するという心配もありますし、就職などでは学歴を問わない時代になり、本当の実力主義になる可能性があるので、現実は厳しいかもしれません。
 しかし、労働人口は10年間で132万人も減ると予測されていますから、大学と同様に、仕事を選り好みしなければ就職する職場はあるということかもしれません。

 第三に人口が減少して行くために、住宅事情は変化する可能性も予測されます。昨年からの構造計算偽装事件を見ると、持ち家よりも借家の方がいいという価値観がでてきました。
 現在、日本の住宅戸数は5390万戸ほどあり、世帯数の1・14倍もあります。実数では660万戸も余分にあるのです。そして今後も人口が増えないとなれば、かつてのように土地の値段が異常に高くなったり、住宅が値上がりしていくということもなくなります。
 そうなれば、人生の色々な段階に応じて、家族構成や仕事の場所などに合わせた住宅を借りて住むという方向に変わってくると予測されます。
 実際、戦前には住宅の8割から9割は借家と言われ、夏目漱石のような売れっ子作家も生涯借家生活でしたから、あり得ないことではないと思います。

 第四は観光産業が発展することです。日本の国内総生産500兆円のうち60%に相当する300兆円は個人消費です。したがって人口が減るということは経済全体に大きく影響します。そこで期待されるのが海外からの投資や観光などによる外貨収入です。
 ところがご存知のように日本は、この年末年始を見ても海外旅行をする人は多く、年間1600万人以上が出かけますが、海外から日本にくる人数は600万人程度で、大幅な差があります。
 その結果、観光による外貨収入も2003年に1兆2000億円程度で、アメリカの11兆円、スペインの5兆円、イタリアの3兆5000億円などと比較すると大変に少ない状態です。
 そこで政府は観光立国宣言をして、2010年までに外国からの来訪者を1000万人に増加させることを目指しています。そうなれば、人口が減っても経済を発展させることは可能になります。

 第五に自由時間が増加することも利用方法によっては明るい未来になると思います。
 日本人女性の平均寿命は85・6歳で世界一位、男性は78・6歳で首位とわずかな差で2位です。
 計算を簡単にするために人生80年としてみると、20歳以後の自由時間は12万時間ほどある計算になります。これは人生50年といわれた戦前の4万4000時間、戦後の人生50年といわれた時代の5万8000時間と比べると、倍以上の自由時間があることになります。これを如何に上手く利用して行くかということだと思います。

 最後に蛇足ですが、国立国会図書館が作成した「10年後の日本」は衆議院の憲法調査特別委員会の要請で作成した報告書ですが、10年後に日本憲法は改正されていないという結論だそうです。





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