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論文

 今年も木曜日としては最後の番組になりましたので、環境問題に関係する今年1年の話題を振り返ってみたいと思います。
 今年の前半で大きな話題はやはり、2月16日に京都議定書が発効したことでした。京都議定書は1997年12月に京都で開催された第3回気候変動枠組条約締約国会議(COP3)で徹夜の会議の結果、採択されたものですが、なぜ発効するまでに8年もかかったかと不思議に思われる方も多いと思います。
 それは発効するためには2つの制約条件を乗り越える必要があったからです。
 第一は55カ国以上が締結することで、これは早い時期に150カ国以上が締結していましたので問題ありませんでした。
 ところが第二の条件が問題だったのです。それは締結した先進工業国の1990年の二酸化炭素排出量が全先進工業国の55%以上にならなければいけないという条件です。ところが先進工業国の排出量の36・1%を占めるアメリカが締結せず、17・4%のロシアも保留していたので、44%にしかならず、条件が満たされませんでした。
 しかし昨年11月にロシアが締結したので、61・6%になり条件を満たし、その90日後の2月16日に発効したのです。
 ところで、発効してみると、本当にその条約を実行できるかが問題になります。日本は2008年から12年までの間に、1990年の排出量より6%減らさなければいけないのですが、最近、経済が上向いてきたため、排出量が増えており、実際には14%以上も減らさなければいけないということで、かなり厳しい状況です。
 しかも、1990年と2002年を比較してみると、産業分野は98%に減っているのですが、輸送分野で120%、業務分野で137%、家庭分野で129%も増えているので、かなりの努力が必要です。

 そこで家庭や業務でのエネルギー消費を減らそうと登場してきたのが、今年の流行語大賞にも選ばれた「クールビズ」です。1979年の第二次石油危機の後に、大平内閣で「省エネルック」が提案され、大平首相も着て宣伝しましたが、まったく流行らず、新宿の伊勢丹では一夏に5着売れただけだったそうです。
 それは当然と言えば当然で、これまでの背広の袖を短くしただけだったからです。しかし、今回は名前とデザインのせいか大流行となり、経済効果は1000億円(第一生命経済研究所)という数字も発表されています。
 そして、電力消費も東京電力管内では6月から8月の3ヶ月間で7000万キロワット時の減少になったと試算されています。これは一般家庭24万軒の1ヶ月の電力消費に相当するので、それなりの効果があったということになります。

 このような努力にもかかわらず、地球温暖化は静かに進行しているようで、今年は8月末にアメリカ南東部を超大型のハリケーン・カトリーナが襲い、ニューオーリンズは壊滅状態になり、死者1000名以上、被害総額2兆8000億円と推定される大被害が発生しました。中心の最低気圧はアメリカでの観測史上6番目になる902ヘクトパスカル、最大風速が毎秒78メートルですから、桁外れです。
 しかも、9月下旬にはハリケーン・リタという中心の最低気圧897ヘクトパスカル、最大風速78メートルで史上4番目の暴風、10月中頃には、ハリケーン・ウィルマという、中心の最低気圧882ヘクトパスカル、最大風速78メートルという史上最強の暴風も登場しています。
 これら2つはフロリダ半島の南端を通過したので、被害は少なかったのですが、アメリカの史上1位、4位、6位のハリケーンが1年に集中し、やはり異常な事態が発生しつつあるのではないかという予感がします。

 日本でも9月6日に長崎県諫早市に上陸して日本海に抜け、再び北海道の渡島半島に上陸した台風14号など大型台風が増加しています。台風14号は最低気圧が925ヘクトパスカル、最大風速が毎秒50メートルで、被害は死者26名、農林水産物の被害が700億円、保険の支払額が830億円にもなっています。
 このような気象関連災害の金額を調べてみると、1980年には世界全体で1兆5000億円程度でしたが、2004年には12兆円と10倍以上、損害保険の支払いも2500億円から4兆6000億円と18倍になっています。
 そして、1980年以後、気象災害による死者の合計は62万人、損失の総額は140兆円になっており、着実に異常気象の影響が表れていると思われます。
 このような数字を見ても、京都議定書の目標達成にはあらゆる努力をする必要があると思います。





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