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論文

 ここ数年、ロハスという言葉が静かに流行していたのですが、『日経MJ』が選んだ今年上半期のヒット商品番付で大関になり、『週刊エコノミスト』の10月11日号で「ロハスに生きる」という特集が組まれ、最近発売された2006年版の『imidas』や『現代用語の基礎知識』にも採り上げられるようになり、次第に日本社会にも定着してきました。
 そこで今日は、このロハスについて紹介させていただきたいと思います。
 ロハスというのは「ライフスタイル・オブ・ヘルス・アンド・サステナビリティ」という英語の頭文字を集めた略語ですが、翻訳すれば「健康で持続可能な生活様式」ということになります。
 そもそもは大規模な社会調査をしていたアメリカの社会学者ポール・レイと心理学者シェリー・アンダーソンが、消費者の行動を分析すると、これまでのような伝統を維持する保守派と改革を推進する改革派という2種類の分類に属さない新しい生活文化を創造している人々が登場しているとして、そのような人々の生活様式をロハスと名付けたことが発端で、1998年のことでした。

 5つの特徴があり、
   サステイナブル・エコノミー(持続可能な経済)
   ヘルシー・ライフスタイル(健康的な生活様式)
   オルタナティブ・ヘルスケア(新しい健康管理)
   パーソナル・ディベロプメント(自己啓発)
   エコロジカル・ライフスタイル(環境に配慮した生活様式)
という項目が挙げられていますが、その頭文字を取って「SHAPE」とも名付けられています。
 具体的にどのような現状かというと、アメリカではロハスを信奉している人々の平均年齢は42歳、30%は大学卒、60%は女性で、その人口はアメリカの成人の人口の30%に相当する5000万人と推定されています。
 またロハスのビジネス規模は2003年で4400億ドル、約50兆円で、今後の成長率は6・3%にもなると推測されていますが、これはアメリカの経済規模の4・2%にもなります。
 こういう数字が騒がれることからも推測できますが、そもそもこれはアメリカ流のマーケティング戦略から創り出されたという側面もあり、ロハスという言葉を宣伝として使って従来の商品やサービスを売ろうという便乗商法もないわけではありません。
 したがってロハスの精神がまさに当てはまる企業であるアウトドアスポーツのウェアを販売している「パタゴニア」を創設したイヴォン・ショイナードなどは「パタゴニアはロハスとは関係ない。ロハスは単なるマーケティング用語だ」とロハスについて否定的です。

 ロハスがマーケティング戦略から生み出されたとしても、時代の流れを捕らえていることは間違いなく、それに関連する概念も色々と登場しています。
 スローフード、地産地消、シンプルライフなども類似の概念ですが、今日はそれほど知られていないオーガニックとフェアトレードをご紹介したいと思います。

 オーガニックは有機的という意味ですが、農産物では有機農産物とか有機野菜というように使われます。日本の場合、法律によって、原則として農薬や化学肥料を使用しない、過去2年以上、禁止されている農薬や化学肥料を使っていない農地で栽培されていること、その過程の記録を作成していることが条件となっています。
 こういうような農産物を支援することはロハスであり、例えば、パタゴニアは1996年から、すべての綿製品をオーガニックコットン100%に切り替えています。

 フェアトレードは翻訳すれば公平な貿易という意味ですが、原料などを買い叩いて安く仕入れるのではなく、相手の生産者が継続的に安定した生産が行えるような条件で仕入れ、生産者を支援する取引です。同時に伝統的な技術を活かした環境に影響の少ない生産方法で生産することも支援する仕組みです。
 例えば、世界48カ国の2000店以上の店舗で自然素材を使用する化粧品を販売している「ザ・ボディショップ」の創業者アニタ・ロディックは原料を買い付けるとき「もっと安くできるか」と聞くのではなく「あなたたちが生き延びるためにはどのような条件が必要か」と聞くと言っていますし、多国籍企業が使う劣悪な環境の工場で生産された製品は一切買わないとも言っていますが、まさにフェアトレードの精神を示す言葉です。

 ロハスはアメリカのマーケティング戦略の匂いがしないわけではありませんが、グローバル経済へ対抗する思想でもあり、そのような視点からは注目すべき動向だと思います。
 そしてロディックは「ビジネスを数字だけで語る経営者は何て退屈でしょう。そういう人たちはご臨終間近というしかありません」とも言っていますが、昨今のM&Aに熱中している経営者には、ぜひ考えていただきたい言葉だと思います。





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