TOPページへ論文ページへ
論文

 先週の選挙では自由民主党が圧勝したわけですが、選挙の目的は小泉総理によれば郵政民営化について国民の是非を問うということでした。そういう意味では国民は郵政民営化に賛成という結論を出したことになります。
 ただし、そのためにかかった費用は、立候補者個人の負担や政党の負担は別にして、税金が745億円使われました。これは主として投票の管理や開票をする公務員の人件費ですが、有権者一人あたり721円かかったことになります。さらに、今回の投票率は67・5%程度でしたから、1票について計算すれば1068円にもなります。
 国民は投票場で投票箱に1票を入れていますが,1000円札を投げ入れているように見えてしまいます。
 平成15年度の郵便事業の利益が263億円ですから、何と3年分の利益に相当する税金をかけて、その事業を公社にするか民間企業にするかを決めたということにもなります。何のために国民の代表として国会議員を選んでいるのかということになりかねません。

 数年前に村上龍が『あの金で何が買えたか:バブル・ファンタジー』(角川書店)という本を出版し、例えば、住友銀行に5010億円の公的資金が投入されましたが、その金があれば、4080億円の土星探査機を飛ばすことができ、アマゾンの森林復元プロジェクトの252億円も賄うことができ、さらにバイアグラの開発費用400億円にも充てても、まだ288億円のお釣りが来るということを示しました。

 今回の選挙にかかった745億円もあれば出来る事業はいくらでもあります。例えば、アメリカのメジャーリーグで松井秀樹選手のいるニューヨーク・ヤンキースを720億円で丸々買い取ることもできるという金額です。

 別の使い道では、主に日本にエビを輸出するために伐採されたフィリピンのマングローブ林を修復するのに450億円を使うとか、オーストラリアのグレートバリアリーフを保護するために480億円を使うという方法もあります。
 いずれにしても選挙は政治家にとってだけではなく、国民にとっても安くはないということです。

 伊藤惇夫(アツオ)さんという政治評論家が「政治の数字」(新潮新書)という本を今年5月に出版され、政治や行政にかかる費用を挙げておられますので、その数字を引用させていただいて、その金があれば、何が出来るかを考えてみたいと思います。
 まず国会議員の海外視察です。平成16年度の視察予算は衆議院が3億2800万円、参議院が1億8600万円の合計5億1400万円が計上されています。これで海外視察に出かけた国会議員は、夏休みの期間だけの数字ですが、衆議院議員で144人、参議院議員で90人の234人ですから、一人あたり平均220万円かかっている計算になります。国民一人あたりの負担は4円です。
 もちろん今後の政治活動に必要な視察という名目であり、エジプトのスフィンクスの修復費用が3億3750万円、チリのイースター島のモアイの修復費用が1億8000万円などと比較すると高いという気もしますが、アメリカのメジャーリーグの選手の年俸は
  ロドリゲス(遊撃)(レンジャーズ)  26億円
  デルガドー(一塁)(ブルージェイズ) 23億円
  ブラウン(投手)(ドジャース)    19億円
  ラミレス(外野)(レッドソックス)  19億円
  ボンズ(外野)(ジャイアンツ)    18億円
がベスト5ですから、それと比較すれば、それほど無駄ではないということかもしれません。

 これ以外にも各党の派遣で視察する国会議員もいますが、その金は政党交付金から出される場合が多いのです。この政党交付金は共産党を除くすべての党に交付される合計が317億円ですから、国民一人あたり250円になります。
 この政党交付金はもともと政党や政治家への寄付などを明瞭にするために成立した政治資金規正法により、寄付金が減るので、それを補う目的で成立した予算です。
 しかし、日本歯科医師連合の1億円小切手事件が証明しているように、政党や政治家への寄付は以前と同様に暗闇があり、政党交付金だけおまけになったような感じです。

 イタリアの有名ファッション店のヴァレンティノを丸ごと買い取って300億円、同じくイタリアの自動車メーカーのランボルギーニ社を買収しても180億円、ドイツからアメリカに経営権が移っている名門ピアノメーカーのスタインウェイ社が120億円です。政党交付金が高いか安いかは、色々と意見があると思いますが、御参考になればということです。





designed by BIT RANCH / DEGITAL HOLLYWOOD
produced by Y's STAFF
Copyright(c) Tsukio Yoshio All Rights Reserved.