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論文

 日本の経済成長がなかなか復活しない一方で、中国の経済成長は目覚ましいものがあり、1978年に開放政策を実施して以後、78年から89年までの12年間のGDPの実質成長率が年9・5%、90年から2002年の13年間も年9・2%、そして昨年世界銀行が発表した予測では今年が7・8%、来年が7・0%となっており、あたかも日本の昭和30年代から40年代にかけての高度経済成長時代を彷佛とさせる状況です。

 1年前には、BRICs、すなわち、ブラジル、ロシア、インド、中国が21世紀前半には大国になるというゴールドマン・サックスの予測もご紹介させていただきましたし、今年1月に発表されたCIAレポート「地球の未来を描く」でも、中国は2010年までに経済規模でイタリア、フランス、ドイツを抜き、2020年までには日本を抜き、ついに2045年にはアメリカを抜いて世界一の経済大国になるという予測まで発表してい

 しかし、問題がないわけではありません。そこで今日は中国が長期的に抱えている問題をご紹介したいと思います。
 第一は水不足です。水資源量という統計があります。これは、ある国の降水量から蒸発する量を引いた値に、その国の面積を掛けた数字ですが、これでは中国は世界6位です。しかし、その数字を人口で割算した一人あたりの水資源量にすると、中国は13億人以上の国民がいるため、一気に111位にまで下がってしまいます。
 実際の数字を挙げると、1位のカナダが年間一人あたり94353立方メートル、以下、主要国ではロシアが30980立法メートル、アメリカが10837立方メートルであるのに、中国は2259立方メートルと、アメリカの5分の1、ロシアの14分の1程度しかありません。
 日本も安心できる数字ではなく一人あたりでは3337立方メートルで91位です。

 当然、水不足が発生し、有名な例は「断流」といわれる現象で、世界第4の大河である黄河の水が河口まで流れなくなるという異変が発生しています。1972年に最初に発生し、このときは1年に15日間でしたが、95年に122日、96年に136日、97には226日と増加しています。
 また、昨年は国内の79都市で水不足が発生し、北京では昨年、水の使用量を抑制するために水道料金を一気に2倍に挙げたりしていますが、簡単には解決できない状態です。

 そこで登場したのが「南水北調」といわれる巨大プロジェクトで、まだ余裕のある南の揚子江の水を不足している北の地域で利用するために、1150キロメートルの運河を作ろうという万里の長城のような構想です。総工費は200億元、日本円で3000億円以上の計画ですが、これが完成しても黄河上流の穀倉地帯である黄土高原などの水不足は解決しないので、全体としては重要な問題です。

 第二は食料不足です。水が不足すれば食料生産にも影響することになり、中国の食料生産を調べてみると、コメ、小麦、トウモロコシなど主要穀物の生産が97年から98年に最大になり、それ以後減少しはじめており、98年から2003年までで8000万トンも減産になっています。日本の穀物生産が1200万トン程度ですから大変な量です。
 その結果、中国は食料輸出国から輸入国に転換し、2020年には3500万トン程度を輸入すると予測されていますが、これは世界の穀物貿易の15%にもなり、市場に大きな影響をもたらします。
 ちなみに、中国の人口は世界の21%ですが、野菜は世界の47%、豚肉も47%、水産物も33%を消費していますから、穀物以外でも大きな問題をもたらします。

 第三が石油不足です。中国はしばらく前まで自転車の国のような印象でしたが、現在では世界第4位の自動車生産国、世界第3位の自動車販売国、世界第2位の高速道路整備国で、自動車保有台数も3000万台に接近し、日本の7200万台の4割になっています。
 当然、石油の消費が増大し、1974年には石油の輸出国になったのですが、93年には輸入国に転じ、最近では1日200万バレルの輸入をおり、2010年には300万バレルから400万バレルになると予測されています。現在、日本が1日400万バレル強の輸入をしていますが、それに匹敵する量になります。

 これらの問題は他人事ではなく、日本にも切実な影響が出てきます。現在、日本の排他的経済水域ギリギリの海上で、中国が石油の探査をしはじめて問題になっていますし、中国が大量に輸入をはじめたために大豆の値段が高騰していますし、石油の枯渇する年数も急速に減る可能性もあります。また環境問題も深刻になります。
 日本は食料自給率を高めるなど自衛するとともに、技術協力などをしていくことも重要になると思います。





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