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論文

 4月16日に全国38のラジオ放送局から放送された「小泉総理ラジオで語る」の中心の話題は「脱石油戦略」でした。それでは石油から脱する替わりに何を資源として利用するかが重要ですが、その重要な資源のひとつである水素の可能性について今日は話をさせていただこうと思います。

 石油が有限の資源で、現在、知られている埋蔵量を現在の使用量で割算すると、あと40年ほどで、石油が枯渇するということは以前から言われています。
 そこで日本も数十年前から石油に依存する比率を少なくするという対策をとって来ています。
 例えば1973年から74年にかけて石油危機が発生しましたが、それ以前の1970年には、日本の一次エネルギーの72%は石油でしたが、2002年には50%まで減らしています。
 これを今後、2010年までには45%、2030年までには40%に減らしていこうというのが「脱石油戦略」です。

 そのためには代わりの資源が必要です。そこで脱石油のために具体的に何をするかですが、第一は原子力や天然ガスの割合を増やすことです。計画では、2000年に13%であった原子力は2030年には18%、2000年に14%であった天然ガスは2030年には16%にすることを目標にしています。
 第二はエネルギーの節約です。最新の技術を駆使して、同じ効果をあげながらエネルギーを節約する製品を普及させようということです。例えば、最近の交通信号は豆電球のような発光ダイオードを多数埋め込んだものを使っていますが、これは白熱電球と比較すると20%の電力で同じ明るさを実現しています。家庭の電力消費の15%は照明に使われていますから、もし家の中の照明器具をすべて発光ダイオードに置き換えれば、15%が3%になるので、家庭の電力消費を12%も節約できることになります。
 第三が新エネルギーとまとめていわれるもので、太陽発電、風力発電など自然のエネルギーを使おうという技術です。現在、エネルギー全体の3%をまかなっていますが、これを2030年までに5%にするのが「脱石油戦略」の目標です。

 新エネルギーの特徴は二酸化炭素を発生しないということですが、水素も空中の酸素と反応して電気と熱を発生し、廃棄物は水だけですから、地球温暖化などには影響が少ないのです。
 その水素を空気中の酸素と反応させて電力を取り出す装置が燃料電池ですが、すでに自動車では製品が登場していますし、今年の2月からは家庭用の燃料電池も販売されはじめています。
 そして燃料電池は化学反応で物質を直接電気へ変換するので効率がきわめて高くなります。これも水素エネルギーの魅力です。火力発電などの効率は理論的にも60%が限界ですが、燃料電池では90%にもなりますから、優れたシステムです。
 しかし、問題がまったくないわけではなく、その水素をどのようにして確保するかが問題です。水素は地球でも9番目に多い元素ですし、宇宙では物質の55%が水素ですから、無尽蔵にあるのですが、自然の中に単体で存在しないため、水素を分離する必要があります。
 現在の主要な方法は天然ガスと水蒸気を反応させる方法です。これは製造費用が安いのですが、副産物として二酸化炭素を発生するし、天然ガスも無限の資源ではないので問題です。
 そこで環境に影響しない方法が水を電気分解する方法です。水を分解するのに電気を使い、その水素で電気と水を作るというのは回りくどいというか、損な方法のようですが、電気分解に必要な電気を自然エネルギーから作ればいいということになります。
 実際、アイスランドは1998年に世界で最初に「水素社会宣言」を発表し、今後30年から40年で、石油を一切使わないことを目標としていますが、そこでは風力や水力や地熱を使って水を電気分解して得られた水素を使っています。

 アイスランドは人口28万人の小国だから出来るという側面もありますが、アメリカも、すでに1992年ころから水素社会を構築する長期ビジョンを持っており、2003年2月にブッシュ大統領が「水素社会」の実現に向けた大規模プロジェクト開始の宣言をし、今後5年間に技術開発に2000億円を投入すると発表しています。
 その結果、2040年には、現在、アメリカが輸入している石油の量に匹敵する石油需要を削減すると言っています。
 それと比較すると日本は出遅れと言ってもいいと思います。経済産業省が発表した資料には「水素社会への世界一番乗り」と書かれています。
 確かに燃料電池の開発では世界の先頭に立っていますから、ぜひ社会も先頭に立ってほしいと思います。





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