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論文

 今日2月17日は、全国知事会の会長選挙が行われる日で、新聞などでも話題になっています。これまで知事会会長は名誉職で、大きな都道府県の多選の知事が推薦されて引き受けておられ、1947年から現在まで59年間で9人の知事が勤められていますが、安井誠一郎、東龍太郎、鈴木俊一という3人の東京都知事が合計すると38年間、すなわち、ほぼ3分の2を勤められています。まさに首都の知事の指定席という状態でした。
 そして、全国知事会の仕事は1年に1回は首相官邸で総理大臣と食事をし、もう1回は地域に出かけていって歓談するという懇親会でしたから、名誉職でもよかったのですが、一昨年から激変しました。

 一昨年から会長を選挙で選ぶことになったことと、国と対決しながら地方分権を獲得しているという激務になったのです。まず選挙については、初回は立候補者が岐阜県の梶原知事のみであったので選挙は行われず、今回、60年の全国知事会の歴史のなかで初めての選挙になります。福岡県の麻生知事と岩手県の増田知事の一騎打ちですが、二人とも「戦う知事会」という精神を継承すると明言しておられ、結果は日本の国と地方の方向を決める上で重要になると思います。
 もう一つは激務になったことで、梶原知事は三位一体改革で国とやり取りしている時期には、毎日。新幹線で通勤しておられたほどでした。名誉職とはほど遠い役職に変貌したのです。

 この会長を中心に地方六団体も協力して国と戦って地方分権を獲得していくわけですが、国の役人などは「地方の役所は人材不足だし、地方議会も議員の質が問題だ」などとうそぶいてます。
 それについては、新しい社長などの就任挨拶を見ると大丈夫かと心配になるような場合がありますが、数ヶ月もすると堂々とした風格になっておられることが多く、地位が人を作るという側面があると思ってきました。
 ところが、そうではないかも知れないという心配なことが発生しています。

 現在、平成の大合併が進んでおり、1999年4月から2005年1月までに、306の新しい市町村が誕生しています。
 ここでは原則として、すべての議員が失職し、新しい自治体の規模に応じた定数で選挙をして、新しい議員を選ぶことになるのですが、合併の場合には「在任特例制度」を適用することも可能で、そのまま現職の地方議会議員が最長2年間、議員を続けることができます。
 そして現在、合併して誕生した306の市町村のうち、60%の183の地方議会が在任特例制度を採用して、居座っています。しかも、多くの議会では議員報酬を高い方の議会に合わせているのです。
 これが、どのくらい不合理かという一例をご紹介しますと、この3月22日に秋田県で大曲市を中心に8市町村が合併して大仙市という人口9万8000人の新しい市が誕生しますが、ここは在任特例制度を採用した結果、市議会議員が146人になります。
 地方議会議員の定数は自治体が条例で決めるのですが、地方自治法91条に最大数については規定があり、人口9万8000人の市では最大30名ですから、何と116人も余分ということになります。
 ちなみに人口1222万人の東京との都議会議員が127人ですから、一人の議員あたりの住民の人数を計算してみると、東京都が96200人であるのに対し、大仙市では670人ですから、格差は144倍ということになります。
 朝日新聞が独自に調査した結果によると、もし在任特例をどこも採用しなければ、年間の議員報酬が220億円は節約できるということです。
 議員からは新しい市の状態を監視する義務があるという意見もあるそうですが、そもそも平成の大合併の重要な目的は、自治体の財政難を緩和することですから、まさに火事場泥棒のような行為で。いい加減にしてほしいということです。

 これ以外にも、地方議会が指摘されている問題は、土木建設業を兼務している議員が多いということで、以前に読売新聞が照査した結果では、30%以上がそうであり、親戚などが土木建設業に関係している議員まで含めると60%を超えるとも言われており、そのような分野の予算の削減がしにくい状況にあります。
 このような状態ですと、国の役人が心配するように、地方分権を進めていって大丈夫かという心配も、あながち杞憂ではないかもしれません。
 自治体のために尽くすべき立場にある議員が自治体のことを考えずに、自分のことを優先しているようでは、地方も先行きが案じられるのです。





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