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論文

 先週に引き続き、今年の日本の社会を理解するためのキーワードの残りの5つをご紹介させていただきます。
 第六は「道州制」です。市町村の合併を促進するための市町村合併特例法は昭和40年に制定されたのですが、平成7年に大改正され、アメといわれる様々な優遇措置を用意して合併を促進してきました。その結果、3100ほどあった市町村は今年の3月末に2400程度になりそうです。3月末までに急速に合併が進むのは、この法律が来年3月末まで延期されるものの、おいしいアメは今年の3月末で消えてしまうからです。
 そこで次に登場してくるのが日本全体を8つほどの州に統合しようという道州制です。すでに国の自治制度を検討する地方制度調査会では議論がはじまっているし、北海道は道州制特区に指定されて、先行して実現する議論を本格的に始めていますし、さらに青森、秋田、岩手の北東北三県は具体的な統合議論も行っています。そういう意味で、今年の行政の話題は道州制になると思います。

 第七は「人口減社会」の到来です。この問題は以前から議論されていますし、この番組でも何度か取り上げていますが、昨年の人口の自然増がわずか8万3000人となり、このまま推移すると、今年か来年早々に日本の人口が頂点になり、2050年には15歳から64歳の生産年齢人口が40%も減るということで今年は大きな話題になります。その証拠に元旦の新聞も何紙かは一面の特集にしていました。
 一部には、その対策として外国人労働者の入国の緩和などを勧めるべきだという議論もありますが、治安の問題などから国民の反対も多く、当分は現行の規制のままだと思います。
 これまで少子化対策は色々と検討されてきましたが、実際に効果のあるものはないので、今年あたりから国民の数が減っても日本という国家を維持する方法が真剣に議論されるようになると思います。

 第八は「ユニバーサル・デザイン」です。人口が減るとともに高齢者が急速に増加するというのも日本の社会の今後の課題です。また労働者としてだけではなく、観光立国を国の目玉政策にしている関係で、外国人の来訪者も急速に増加します。
 そうすると、これまでのように均質な日本人が生活する社会から、老若男女、様々な国籍の人々が一緒に生活する複合した社会に移行していきます。
 例えば道路標識や案内板が日本語でしか書かれていないとか、その文字が高齢者には読みにくい小さな文字で書かれていると、生活に支障のある人々が多数登場することになります。
 そこで、だれもが同じような条件で生活できる社会を構築していこうということが重要になり、それをユニバーサル・デザインというわけです。
 国土交通省は来年度の予算要求の第一をユニバーサル・デザインにすると決めていますので、これも大きな話題になると思います。

 第九は「ユビキタス技術」です。ユニバーサル・デザインを実現するためには、鉄道駅にエレベータを設置するとか、空港などにも動く歩道を設けるとか、物理環境を整備していくという方法もありますが、もうひとつの方法がITを利用することです。
 昨年十月に神戸の三宮の地下街で、通路の床下にICタグを埋め込んで、目の不自由な人も音声案内で歩行できるという実験が行われましたが四月から本格的な実験に移行します。
 ユビキタスという言葉は昨年から少しずつ使われ始めていましたが、今年は実用段階になり、ブレイクすると予想されます。

 第十は「中国」だと思います。昨年12月にIBMのパーソナル・コンピュータ部門を、中国の聯想集団が買収したという事件が象徴するように、中国の経済力は一気に拡大しています。
 昨年の貿易総額が約116兆円となって日本を追い抜き、アメリカ、ドイツに次いで世界三位になり、さらに昨年は日本の対中国の貿易額も黒字になり、これまで安価な製品を買っていた国から、高価な製品を売る対象に変化しています。
 その一方で、日本と中国の間には、靖国問題、海底資源問題、潜水艦侵略問題、ODA削減問題など、政治的課題が山積み状態です。
 この政治的にも経済的にも複雑な関係にある中国に、どのように対処していくかも今年の日本の重要課題だと思います。





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