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論文

 今年1年を振り返ってみると、依然として景気は回復しないし、社会全体が停滞したままの印象でしたが、それを一層暗くしたのが、様々な疑惑事件でした。
 テレビジョンの画面で経営者や政治家が深々と頭を下げる映像は見慣れた光景になってしまいましたが、自由民主党の旧橋本派への一億円のヤミ献金もはっきりしない決着でしたし、厳しい倫理観を持たなければならないマスメディアについても、NHKの様々な不祥事を筆頭に、ほとんどの民法各社も有価証券報告書に虚偽記載をしていたという事実が判明したにもかかわらず、他社の疑惑は報道しても、自社の問題は無視という、ひどい状況でした。

 このような状況が国民の活力を殺いでいるのではないかと思いますが、これに間然と立ち向かう団体が登場しました。「トランスペアレンシー・ジャパン」というNGOです。これは1993年に設立された「トランスペアレンシー・インターナショナル」の日本支部として2003年12月9日に設立された組織です。ちなみに12月9日は「国際腐敗防止デー」に指定されている日です。
 トランスペアレンシーという言葉は透明性という意味ですが、社会の不透明な部分を無くしていこうという意思を表明したものです。
 このトランスペアレンシー・ジャパンが12月6日に、今年の日本の一〇大汚職・腐敗・疑惑事件を発表していますので、不愉快な気分ですが、それを読み上げてみたいと思います。
1. 厚生労働省・社会保険庁の汚職
2. 旧自由民主党橋本派へのヤミ献金疑惑
3. 警察裏金疑惑
4. ハンナングループ偽装牛肉事件
5. 新潟談合疑惑
6. NHK不祥事
7. 三菱ふそう大型車リコール隠し事件
8. 西武鉄道株虚偽記載事件
9. 日本歯科医師連合関連腐敗
10.文部科学省所管財団法人預かり金流用疑惑
という具合に読むだけでも気分が悪くなりますが、これはほんの一部だと思います。

 トランスペアレンシー・インターナショナルが世界の30カ国を対象に調査した「汚職認知指数」によると、日本の順番は1998年が20位(10点満点で5・8点)、昨年が18位(7・0点)、今年が20位(6・9点)と大変に残念な結果となっています。
 上位はフィンランド(9・7点)、ニュージーランド(9・6点)、アイスランド(9・5点)、デンマーク(9・5点)、スウェーデン(9・2点)と北欧諸国に集中しています。

 別の調査ですが、スイスのシンクタンクが発表した「企業の倫理感覚」についての調査では、日本は51か国中27位、「経営者層の社会責任感覚」については19位と低い評価です。これについても上位は北欧諸国が占めています。

 どうすれば変革できるかについては、信賞必罰の風潮を社会に根付かせることだと思います。
 興味深いエピソードがあります。1991年12月にソビエト連邦が崩壊し、しかもアメリカの経済封鎖は解除されないままであったため、キューバは国民に一日1860キロカロリーしか摂取できないほどの食料不足に陥りました。これをカストロの指導力で回復させ、現在、首都ハバナでは、220万人の市民が野菜を完全自給できるまでになったのですが、その困難から脱出できたのは、政治家や公務員の潔癖な生活でした。
 閣僚もすべて自転車通勤ですし、国会の議長ですら食料の配給には市民と同じように行列に並んでいますし、カストロ兄弟に次ぐ、ナンバー3の地位の政治家が海外出張中に外国企業から自由に使用できるクレジットカードを提供されただけで除名処分を受けたというほどです。
 公務員は同じ犯罪でも一般国民の2倍の罰を受けることになっています。日本の政治家や公務員の実態と比べると雲泥の差ですが、この透明性や公平性こそが国民の意欲を高める良薬だと思います。

 第二には、国民が意思を表明することだと思います。今年3月11日にスペインのマドリードで列車爆破テロが発生し、200人近い人々が亡くなられましたが、その翌日には、マドリードだけでも200万人近く、スペイン全土では800万人の反戦デモが発生し、結局、直後の14日の総選挙で政権交代となり、新政権はイラクから軍隊を撤退させることを直ちに表明しました。

 これらと比較すると、日本は劇場民主主義といわれて高みの見物の人々ばかりですが、ぜひ新年からは、主演民主主義、自分が舞台に上がって意思を明確にするように国民が行動することを期待したいと思います。





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