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論文

 高騰していた原油価格が1ヶ月ぶりに50ドル以下になり、ほっと一息というところですが、石油はよく言われるようにあと40年くらいしか採掘できないといわれています。採掘技術が進歩するから、もう少し大丈夫とか、中国で自動車が普及すれば、さらに短期間で無くなるとか、色々な意見がありますが、所詮は地球が何千万年かをかけて蓄積してきた貯金を食い潰している訳ですから、いずれは枯渇することになります。
 そこで、様々な対策が考えられていますが、基本は石油だけに依存しないようにしようということです。日本は石油依存が高かったために第一次オイルショックで痛い目に会っていますので、着実に石油からの転換が進められてきました。例えば、オイルショックの発生した1973年には、エネルギーの76%を石油に頼っていましたが、現在では50%になり、2010年には45%まで減らす計画になっています。

 その減らす分は天然ガスや原子力で補おうということですが、もうひとつ有力な候補が一般に新エネルギーといわれる資源です。
 これは太陽電池で発電したり、風車で発電したり、太陽熱を使ってお湯を沸かしたりというもので、現在はエネルギー供給全体の1・2%程度ですが、2010年には3%程度まで増強しようと考えられています。付帯的には、太陽電池による発電は10年で15倍、風力発電は23倍にする構想です。

 その新エネルギーのひとつがRDF発電という技術です。なぜ、今日、これを取り上げたかというと、これは新エネルギーのなかでも重要なもので、2000年には新エネルギーの16%を分担し、2010年には29%を分担すると期待され、全国各地の60箇所にRDFを作る工場が建設され、5箇所に発電施設が建設されていました。
 ところが、昨年8月に三重県のRDF発電所で爆発による人身事故が発生したために、各地で計画の見直しが始まり、将来が危惧されていたのですが、今年の9月21日から発電を再開したので、この技術について今日は紹介させていただこうということです。

 RDFは「Refuse Derived Fuel」の頭文字をとったもので、そのまま訳せば「ゴミから作った燃料」ということになります。各地のゴミ処理場に集められるゴミのうち可燃物だけを粉砕して乾燥させ、水分調整のために生石灰を混ぜて圧縮し、ペレットといわれる直径1・5センチメートル、長さ5センチメートル程度の棒にしたものをRDFといいます。
 これを発電所に輸送してボイラーで燃やして発電の燃料にするというわけです。したがって、これまではただ焼却炉で燃やしていただけであったゴミが発電の燃料になるし、高温で燃やすのでダイオキシンの発生も抑えられるし、ペレットは貯蔵できるので、安定して燃料が確保できるという一石三鳥以上の効果があるということで「夢のシステム」とも言われていました。

 ところが、昨年、そのペレットを貯蔵しておくサイロが爆発して消防士の方が2名も亡くなられるという事故が発生し、悪夢になってしまったのです。
 そこで原因の調査がおこなわれたのですが、RDFは生ゴミなどを加工しているので、発酵してメタンガスなどが発生し、それに引火して爆発したのではないかと推定されています。
 三重県では、色々な対策を講じて操業を再開したのですが、この事故をきっかけに問題も見えてきました。
 まず、不燃物である金属や石などを取り除く必要があるので施設の建設価格が高いこと、また、生ゴミを乾燥させるために1トンの生ゴミについて65リットルの灯油が必要なこと、生石灰を混ぜるために焼却後の灰の量が増えることなどが挙げられています。

 風力発電も自然景観を台無しにするとか、低周波の風切り音が人間に悪い影響をもたらすという意見もあり、すべてがいいという技術はなかなか存在しないのですが、RDF発電は新エネルギーのなかで最大の比率を占めるものですから期待したいと思います。

 しかし、すべてがいい面だけの新エネルギーがあるのです。節約です。
 例えば、これから暖房の季節ですが、日本中の家庭が暖房の温度を21度から20度へと1度低くすると、12万3000キロリットルの灯油を節約することになると計算されています。これは現在、日本中の太陽電池と風力発電で発電しているエネルギーに匹敵する量です。
 しかもガス暖房ですと、一冬で2000円以上の節約、エアコンの場合で1620円の節約にもなりますから、環境問題に貢献して家計も助かるという一石二鳥です。節約こそ、もっとも確実なエネルギー資源だと考えることが重要だと思います。





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